【戦車】 †
Tank.
装甲が施された車体に機関銃・施条砲(または滑腔砲)などの武装を備え、不整地を走行する能力をもった戦闘車両。
時代によって設計思想は異なるが、常に「武装を備え、対応防御を意識して装甲化され、無限軌道で走る」という特徴を持つ。
「タンク(Tank)」という英名は、英国で作られた世界初の戦車であるマーク1の開発計画に由来する。
スパイに計画意図を察知されるのを防ぐため、戦車開発計画には真実と異なる秘匿名称が与えられた。
その秘匿名が「水槽供給(Tank Supply)」*1であり、これを縮めた「Tank」が戦車一般を意味する名詞として定着した。
なお、本来の開発名称は「陸上軍艦(Land Ship)」であったという。
現存する兵器の中で、「戦車」という軍事学上の概念に沿う車両は主力戦車のみである。
敵戦車との正面戦闘能力に不足がある場合は突撃砲、戦車駆逐車、自走榴弾砲などと呼んで戦車とは区別される。
また、戦車の車体を別用途に流用した場合も、性能要件を完全に満たさない場合は「戦車」に含まない。
ただし、報道では武装された軍用の車両は大抵「戦車(Tank)」と呼ばれる。
日本語の場合、戦闘艦は全て「戦艦」で、戦闘を主任務とする軍用機は全て「戦闘機」、戦闘車両は全て「戦車」である。
軍事専門家の発言・著述としては問題のある表現だが、日本語として間違っているわけではない。
近年では対戦車ミサイルの発達が著しく、一時は戦車無用論も囁かれた。
しかし歩兵に前線を突破させるためには不可欠で、地域を継続的に制圧し続ける能力は他の兵科では代え難い。
味方の士気に与える影響も絶大であり、今もって「陸戦の王者」として君臨している。
関連:騎馬戦車 施条砲 滑腔砲 成形炸薬弾 多目的対戦車榴弾 粘着榴弾 高速徹甲弾 装弾筒付徹甲弾 装弾筒付翼安定式徹甲弾 攻撃ヘリコプター ガンシップ 特車
略史 †
- 第一次世界大戦期
- 世界初の戦車・マーク1が登場。
このころの戦車は、敵陣地の鉄条網・機関銃・塹壕などを突破するために用意された車両であった。
無限軌道で塹壕を踏破し、装甲で敵の銃弾や砲弾に耐え、自ら応戦しつつ、歩兵部隊の前進を支援した。 - 1917年
- フランスで「ルノーFT17」が完成。
全周旋回する砲塔、戦闘室と操縦室を分離する構造などを史上初めて採用し、現代戦車の原型となった。 - 第二次世界大戦期
- 従来の戦車の定義と異なるさまざまな装甲戦闘車両が登場。
これに伴い、「戦車」は敵陣地突破・歩兵支援に加えて装甲車両を正面戦闘で撃破可能な車両を指すようになった。 - 冷戦期以降
- 戦車の分類が整理・統合され、戦車の役割がほぼ主力戦車に統合される。