【08式歩兵戦闘車】 †
中国・人民解放軍陸軍で運用されている装輪式の歩兵戦闘車。
ZBL-08と呼ばれるほか、「雪豹」の愛称がある。
2009年初めに制式化され、同年10月の中華人民共和国建国60周年記念パレードで初めて公開された。
公開当時、海外メディアでは「09式歩兵戦闘車(ZBL-09)」の名称で呼ばれていた。
「ZBL-08」の正式名称が判明したのは2017年7月30日の中国人民解放軍90周年記念軍事パレードを報じる雑誌であった。
車体は均質圧延鋼装甲で、車体前部は避弾経始を意識した楔形形状になっている。
車体配置は、最前部右側が機関室、左側が操縦手席と車長席となっており、車体中央には二人用砲塔を設置、車体後部は兵員室となっており、車体後部には横開き式ハッチが設置されている。
また、兵員室には両側面にそれぞれ1基、車体後部に1基のガンポートと外部視認窓が設けられている。
水上航行能力も有しており、車体後部にスクリューが装備されている。
乗員数は、車長、砲手、操縦手の3名と乗車歩兵7名の計10名となっている。
武装については2A72 30mm機関砲を装備した2人用砲塔を搭載している。
この砲塔は海軍陸戦隊で運用されている05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD-05/ZBD-2000)に搭載されたものと同様である。
また、砲塔の両側面には「紅箭73(HJ-73)」対戦車ミサイル発射機が装備されている。
このミサイルは、ソ連/ロシアの9M14M「マリュートカ(AT-3『サガー』)」対戦車ミサイルのコピーであるが、09式に搭載されているのは改良型のHJ-73Cで、誘導方式を有線式半自動指令照準線式に変更し、弾頭先端部に爆発反応装甲対策用のプローブが装着されている。
本車は、開発当初からファミリー化を前提とした設計が施されており、歩兵戦闘車型以外にも装甲兵員輸送車型、122mm自走榴弾砲型、指揮通信車型、装甲回収車型、戦車駆逐車型、輸出向けのVN-1や07P式歩兵戦闘車など、各種の派生型が開発されている。
スペックデータ †
乗員 | 3名+兵員7名 |
全長 | 8m |
全高 | 3m(砲塔含む) |
全幅 | 2.1m |
戦闘重量 | 21t |
懸架・駆動方式 | 8輪駆動 マクファーソン・ストラット式サスペンション(前方4輪) 油気圧懸架式(後方4輪) |
エンジン | Deutz BF6M1015FC 2ストロークV型6気筒液冷ターボチャージドディーゼル |
出力 | 455hp |
最高速度 (路上/浮航) | 100km/h / 8km/h |
行動距離 | 800km |
装甲 | 均質圧延鋼装甲+セラミック付加装甲 |
主兵装 | ロイヤル・オードナンスL7 105mmライフル砲(戦車駆逐車型) 155mmまたは122mm榴弾砲(自走榴弾砲型) 120mm迫撃砲(自走迫撃砲型) 12.7mm重機関銃×1挺(APC型) UW4 30mmRWSまたは99式30mm機関砲×1門(歩兵戦闘車型) KDG 35mmリボルバーカノン(自走対空砲型) |
副武装 | 86式7.62mm機関銃×1挺(同軸機銃) 「紅箭73(HJ-73)」対戦車ミサイル発射機×2基(ミサイル2発) 6連装発煙弾発射機×2基 |
派生型 †
- 08式歩兵戦闘車(ZBL-08):
歩兵戦闘車型。30mm機関砲を装備した二人用砲塔を搭載。
- 10式装甲兵員輸送車(ZSL-10):
兵員室の天井を嵩上げし、兵員輸送能力を13名に拡大している。
武装は防盾付き12.7mm重機関銃×1挺かRWSのいずれかを装備できる。
- 装甲偵察車型:
偵察用レーダーなどの偵察用機材を搭載した型。
レーダーと光学照準器は格納式マストに装備されている。
- 砲兵観測車型:
目標捕捉、各種観測機器を装備。武装は残されている。
- 電子光学偵察車型:
全周式の光学監視カメラ(昼光カメラ、赤外線サーマルカメラ、暗視カメラの機能を持つ)を装備。
非武装で砲塔無し。
- 09式装輪自走榴弾砲(PLL-09):
車体後部に96式122mm榴弾砲(PL-96)を搭載した密閉砲塔を持つ自走榴弾砲型。
- 11式105mm装輪突撃車(ZTL-11):
車体後部に105mmライフル砲を搭載する火力支援型(装輪戦車)。リアエンジン式。
- 12式対空砲・ミサイルシステム(PGL-12):
自走対空砲型。
35mm機関砲1基と砲塔右上に飛弩6(FN-6)地対空ミサイルの連装発射機を装備した無人砲塔を搭載する。
搭載機関砲は09式自走対空機関砲(PGZ-09)と同様だが、回転式装填装置の採用により発射速度が1,000発/分に変更されている。
- PGL-XX防空ガン・ミサイルシステム:
コードネーム「625」とも呼ばれる試作車両。
短距離防空用に6銃身25mmガトリング砲を搭載する。
HQ-17A自走短距離防空システムと組み合わされる予定。
- 09式装輪装甲指揮通信車(ZZH-09):
車体後部の区画を上部に拡大したコマンドポスト型。
衛星通信装置や戦闘管理システムを搭載。
指揮通信任務に使用される。
- 通信車型:
指揮車型ベース。歩兵大隊のために通信機器を追加搭載している。
- 装甲救急車型:
指揮車型ベース。医療機器を装備した乗務員室が特徴。
- 14式危険環境偵察車:
指揮車型ベースのNBC偵察車型。
- 電子戦車両型:
指揮車型ベース。
車体上部の衛星通信装置の代わりにESM用小型レーダーパネルを複数備えた長方形のレーダーを装備している。
- 装甲地雷除去車型:
砲塔を撤去し、車体前部にマインプラウを装備するなどの改修を施した型。
- 装甲架橋車型:
車体上部に折りたたみ式の橋体を搭載。
- 装甲回収車型:
車体上部にクレーンを装備。武装は12.7mm機関銃×1基。
- 装甲輸送車型:
装甲輸送車型。車体の防弾窓が多くなっている。
- 装甲工兵車型:
車体前方にドーザーブレード、ルーフ前端にショベルバケットを装備する。
- PLL-05:
120mm迫撃砲を装備した自走迫撃砲型。
- 装甲弾薬補給車型:
PLL-09とセットで運用される弾薬補給車型。
車体後部ハッチは観音開き式に変更され、車体後部には搬出作業用にクレーンが装備されている。
砲弾は車内の砲弾ラックに搭載されている。
- 装輪突撃砲型(フロントエンジン式):
車体後部に105mmライフル砲を搭載する火力支援型。
異なった形状の砲塔を搭載した二つのタイプが確認されている。
- 通信能力強化型:
車体中央部に大型ドームを搭載し、車体後部の天井が嵩上げされている。
- VS27:
装甲救急車型。
- VS36/VS32A:
偵察車型。
- CS/SA5:
6銃身ガトリング砲を備えた防空車両型。
- CS/AA5:
歩兵戦闘車型。
遠隔操作式の40mm機関砲を装備した砲塔を備える。
- VN-1:
NORINCOが販売を行っている輸出向け歩兵戦闘車型。GCTWM型1人用砲塔を搭載。
車体後部ハッチに09式には無いランプ・ドアがあるなど、細部が異なる。
- 07P式装輪歩兵戦闘車:
輸出向け歩兵戦闘車型。
2009年2月にUAEで開催されたIDEX2009国際兵器展示会で初公開された。
外観はVN-1歩兵戦闘車型と同じ。
- SWS-2:
輸出向け短距離防空(SHORAD)型。
35mm機関砲と地対空ミサイルを装備。
- ST-1:
11式装輪装甲突撃車の輸出型。
L7 105mmライフル砲を装備。
- SH-11:
輸出向け39口径155mm自走榴弾砲。
全自動装填装置と最新の光学装置を装備。
- AFT-10対戦車ミサイルキャリアー:
2018年の珠海航空ショーで発表された型。