Last-modified: 2023-11-03 (金) 21:42:26 (175d)

【戦艦】(せんかん)

Battle Ship*1

巨大な艦載砲と厚い装甲をもち、水上艦や沿岸への砲撃を主任務とする艦艇
定義は時代に応じて変遷しているが、おおむね各国が現実的に運用可能な最大級の戦闘艦である。

軍事以外の文脈では『軍用の武装した船舶』(「戦闘艦」)の意で使用される事も多いが、本稿では狭義の戦艦のみを取り扱う。

兵站への負荷が強烈であり、整備や補給にも長い時間を要するため、艦隊決戦を前提として運用する。
頑丈な構造ではあっても多数の艦からの集中砲火に耐えうるほどではなく、駆逐艦巡洋艦による護衛を必要とする。
最大の利点は艦載砲有効射程と破壊力であり、海戦における砲兵として運用される。

何をもって戦艦の起源とするかは諸説あるが、1859年にフランスが建造した装甲艦「グロワール?」を始祖とみる向きが大きい*2
これは木造帆船だが蒸気機関を搭載し、また舷側に装甲が取り付けられていた。
翌1860年には船体全体をで形成した装甲艦「ウォーリア?」が登場し、各国海軍の技術競争の発端となった。

以降、大規模海戦に必要な艦艇として艦隊の中核を占めていたが、機雷魚雷を搭載する水雷艇駆逐艦潜水艦といった安価な艦艇、さらには航空母艦が発達すると共に存在意義が破綻。
第二次世界大戦で場当たり的に対空護衛・対地砲撃に運用された後、海軍から消えていった。

なお、1980年代にアメリカ海軍が40年近くモスボールされていたアイオワ級戦艦の改修・現役復帰が試みられた。
しかし、戦艦はもはや当時の海軍において効率的な選択肢でない事が浮き彫りとなり、湾岸戦争を最後に現役を退いた。

関連:巡洋艦 駆逐艦 艦載砲 大艦巨砲主義 前ド級 超ド級 巡洋戦艦 航空戦艦 海防戦艦

戦艦の終焉

戦艦は時代の花形となった兵器だが、現代戦においてはもはや運用可能なものではない。
第二次世界大戦で新世代の兵器が登場すると共に、戦艦の時代は終焉を迎えた。

戦艦の限界は、戦艦というシステムが艦載砲に依存していた点にある。
戦艦が隆盛したのは、艦載砲がその当時最高の攻撃手段であったからである。
そして、戦艦の時代が終わったのは、艦載砲では対処できない脅威が出現したからである。

艦載砲は、航空母艦に対して有効な兵器ではない。
艦載機戦闘行動半径は、カノン砲が技術的に到達し得る最大の有効射程を上回るからだ。
航空母艦からのアウトレンジ攻撃に対して、戦艦には有効な反撃手段がない。
同様の理由から、艦対艦ミサイルを搭載した艦に対しても戦艦には有効な反撃手段がない。

また、艦載砲潜水艦に対しても有効性を持たない。
水深数百メートル下まで衝撃を伝播できる砲弾は存在しないからだ。
従って、潜水艦からの雷撃に対しても、戦艦には有効な反撃手段がない。

現代の海戦で遭遇する脅威は、艦載機対艦ミサイル巡航ミサイル潜水艦魚雷である。
そのいずれに対しても、戦艦の艦載砲はまるで意味を持たない。


*1 アメリカ海軍での略号は"BB"。艦種記号が一文字で終わる場合は2文字重ねる慣例となっている。
*2 以後、フランスでは戦艦に相当する艦を正式には「艦隊装甲艦」と呼んでいた。

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