Last-modified: 2023-11-13 (月) 11:07:26 (166d)

【火炎放射器】(かえんほうしゃき)

水の代わりに発火した液体燃料を噴射する巨大な水鉄砲。
軍用としては装甲塹壕・建物に隠れる人間を焼き殺したり、森林や家屋を焼き払う用途に用いる。
焼き畑農業・除雪などの作業用や、化学兵器細菌兵器に汚染された物の焼却処分にも使われる。

除雪作業においてはひどく燃費が悪く、ごく局所的に積雪を融かす用途(しかも延焼の危険性がない場所)でしか役に立たない。
陸上自衛隊は1963年の『昭和38年1月豪雪』における除雪作業に火炎放射器を導入したが、あまりに非効率であったため使用を中止している。

液体燃料は燃えたままあちこちに飛び散る上、揮発性のため隙間を通して浸透する事もある。
つまり、手榴弾並かそれ以上の広範囲に渡って危害を加える事ができる。
揮発した燃料装甲の隙間からも浸透するため、主力戦車でさえ焼却破壊できる。

一方、有効射程は20m前後と短く、散弾銃小銃に対して非常に不利である。
燃料タンクは非常に重く、しかも消費効率が悪く、遠くまで届く事もない。
液体を撒き散らすという性質のため、銃のように伏せて身を隠しながら撃ったら自分も炎に焼かれてしまう。

さらに、発光して音を鳴らしながら燃える炎は戦場でも非常に目立ち、敵からの反撃を非常に的確なものとする。
被弾して燃料タンクに穴の一つでも開いてしまえば、周囲に炎を撒き散らして味方ごと火達磨となる凄惨きわまりない末路が待っている。

基本的には戦場に炎を生じさせるための工作用具であって、これを直接人に向けるのは効率が悪い。

また、火炎放射器は残虐な上に目立つ兵器であるため、憎悪の対象になりやすい。
捕虜となった場合に報復として問答無用で殺害される事もあったという。

略史

中世
7世紀頃、東ローマ帝国が「ギリシャの火」「ビザンティンの火」などと称される火炎放射器を配備していた。
同時期のイスラム教圏でも製法の異なる同種の兵器が確認されており、先に開発したのがどちらかは判然としない。
海戦において木造軍船を焼き払う用途に使われた他、攻城戦においても防衛側が好んで使ったとされる。
当時の秘密兵器であったため燃料の製法や詳細な構造は不明で、東ローマ帝国の滅亡と共に資料も散逸した。
残された史料から、位置エネルギーで液体を噴射するサイフォンであった事が判明している。
サイフォンで噴射していた燃料は石油類だと考えられているが、詳しい組成・調合法は不明。
20世紀初頭
1901年、ドイツ人技師リヒャルト・フィードラーが火炎放射器を開発。第一次世界大戦における塹壕戦に投入された。
これは噴射の圧力として圧縮ガスを用いるもので、当時はまだ燃料噴射の中断が不可能。2分ほど連続で炎を噴射し続けた後に破損する単発の兵器であった。
また、燃料が飛び散りすぎて誤射・事故が頻発したため、以降の火炎放射器は燃料に増粘剤を添加するようになった。
第二次世界大戦
噴射を中断・再開できるよう、また燃料が粘性を持つよう改良された。
歩兵が背負うタイプの火炎放射器が塹壕や洞窟に対する攻撃で戦果を挙げ、多くの兵士が煙や酸素不足によって窒息死した。
また、戦車の武装として火炎放射器を搭載する「火炎放射戦車」も開発されたが、これは失敗作として消えていった。
ベトナム戦争
ジャングルに潜むゲリラを焙り出すために火炎放射器が活用された。
これは火炎放射器が大規模に運用された最後の戦争であり、これ以降、火炎放射器は兵器としての地位を失っていく。
現代
焼夷ロケット弾燃料気化爆弾などの後継兵器が出現し、軍隊の正式装備からは外された。
とはいえ、現在でも立木・雑草・廃棄処分品などを焼却するための作業用機械として多少の需要がある。

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