Last-modified: 2013-11-21 (木) 23:43:46 (1432d)

【鹵獲】(ろかく)

戦場において、商取引なしに物資や兵器などを入手する事。
捕虜から没収する場合と、死体から漁る場合と、撤退時に放棄された物資を回収する場合がある。

鹵獲される物資の大半は食料・弾薬・歩兵の個人装備などといった雑多な消耗品である。
戦車などの兵器は戦闘によって破壊されるため、兵器が稼動状態のまま鹵獲されるのは比較的珍しい。

鹵獲兵器として最も代表的なのは海戦で拿捕された艦艇である*1
しかし、軍艦は沈没が確定するまで降伏しないのが通例であり*2、実際に拿捕される艦は多くない。
陸戦では占領した基地の在庫が最も多く、捕虜の武装解除時に没収する装備がその次に多い。

墜落した航空機はほぼ確実に大破するため、空戦によって何かを鹵獲する事はまずない。
歩兵航空基地の占領を目論んだ場合にも、自力で飛んで撤退が可能なため、軍用機の鹵獲は極めて困難である*3

鹵獲された兵器は、既知のものであれば自軍の兵器として流用される*4
何らかの疑問点があれば後送してリバースエンジニアリングにかけられる。
そうした利用価値すらないものである場合、前線で発覚したなら破壊・放棄され、後送後であれば倉庫に死蔵される。
今日、我々が博物館などで目にする旧時代の兵器の多くも、軍から譲渡された鹵獲品である。

戦争犯罪としての鹵獲

戦時国際法では鹵獲しても良い物資を敵国の国有財産のみに限定している。
また、これを鹵獲する権利も国家の軍隊に対してのみ認めている。
従って、一般市民に対する掠奪行為や鹵獲品の横領は戦争犯罪である。

とはいえ、戦時国際法の例に漏れず、この原則は実際の戦場においてしばしば黙殺される。
特に消耗品は戦場での監査に不備が生じやすく、後から入手経路を追跡調査するのも困難である。
もしもその事実が発覚すれば軍法会議の対象となるが、憲兵が鹵獲品の明細を完全に把握するのは不可能である。

例えば、ある兵士が支給品以外の食べ物や服、銃などを所持していたとする。
この場合、その物資の入手経路としては以下のようなものが考えられる。
以下のいずれであるかは必ずしも問われないし、入手した事実そのものも報告されない事が多い。

  • 本当は支給品なのだが、何らかの事務的ミス*5が原因で記録が失われているもの
  • 兵士個人が自宅から持ってきた私物
  • 兵士個人の家族・友人が送ってきた差し入れ品
  • 匿名の国民・市民団体から軍に寄贈され、分配を受けた慰問品
  • 戦場の片隅に放置されていた物品*6
  • 戦死者の遺品*7
  • 作戦上の都合などで他の部隊から融通された物資
  • 基地内の酒保で購入したもの
  • 現地住民から軍票や現地通貨で購入したもの
  • 戦時の混乱に乗じた窃盗
  • 部隊単位で現地の村落や避難所を襲撃し、老若男女問わず皆殺しにした上での「戦利品」*8

*1 今でも、イギリス海軍の規約には拿捕した船の分け前の計算方法が定められている。
*2 艦体が無事であっても軍事機密保持のために自沈させる決断を下す事は多い。
*3 航空機は軍艦と並ぶ軍事機密の塊であるため、退避が間に合わないとなればその場で爆破されるか、航空燃料で焼却処分されるのが通例である。
*4 主に現場の判断で、補修や改造が施される場合もある。
*5 管理担当者のKIAMIA・異動・退職に際しては後任者への引き継ぎでミスが発生しやすい。
*6 近年ではそうした物品を路肩爆弾地雷を偽装する囮に使う場合があり、「個人的な鹵獲」は死の危険を伴うようになってきている。
*7 儀礼的な遺品分配の手続きを取る場合もあるが、身元不明の遺体から無断で剥ぎ取る場合も多い。
*8 近代軍隊がここまでの蛮行を行うのは、戦線が安定している場合にはまずあり得ない。
  逆説的に、こういう事案が「あり得る」ほどに錯綜した戦況における真相究明は非常に困難である。
  その上、軍や政府による組織的な証拠隠滅、スパイによる攪乱工作、反戦団体によるプロパガンダ、賠償目当ての訴訟詐欺などの可能性も否定できない。


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