Last-modified: 2017-08-24 (木) 18:20:54 (2437d)

【C96】(しーきゅうじゅうろく)

Mauser C96.

マウザー社が開発した、世界初の軍用半自動式拳銃
マウザー社創設者であるマウザー兄弟と、ボルヒャルト・ピストーレの設計者ヒューゴ・ボルヒャルトによる共同開発。
日本では「モーゼル・ミリタリー」の通称で呼ばれることが多い。

分類上は半自動式拳銃だが、実際には「銃床のないカービン」と表現した方が実態に近い大型の銃。
後に主流となる銃把内蔵式の弾倉を採用せず、上から弾倉クリップを差し込んで装填する方式が最大の特徴。
装填位置の関係で銃身が前に偏っており、発射時の反動で銃身がぶれにくい。

銃床を取り付けてカービンとして用いる事が望ましく、現代の基準から見ればかなり「無駄に大きい」銃である。
しかし、同時代のボルヒャルト・ピストーレなどと比べれば携帯性に優れており、ドイツ軍の一部へ自衛火器として配備された。
数カ国へ輸出されたほか、中国やスペインなどではデッドコピーもおこなわれた。
中国の馬賊が、まさしく騎兵銃として使用していたことでも知られている。
デッドコピー先でフルオートに改造されることもあり、本家であるマウザーマシンピストル型のM712を製造した。

また専用の7.62mmボトルネック弾?小銃弾のように長射程で貫通力が高く、広い平原での戦闘に有利であった。
これは後年、ソ連軍のトカレフTT33にコピーされた。

スペックデータ

全長308mm/630mm(ストック装着時)
銃身長140mm
重量1,100g/1,750g(ストック装着時)
使用弾薬7.63mm×25モーゼル弾
装弾数10発、20発
作動方式シングルアクション・ショートリコイル
銃口初速430m/s


バリエーション

  • モーゼル・ミリタリー9mm(M1916):
    ドイツ軍の正式拳銃弾である9mmパラベラム弾用に改造されたモデル。
    グリップに赤字で「9」と刻印されたことから「レッド9」と呼ばれる。

  • ボロ・モーゼル:
    ロシア向け輸出モデル。グリップがやや太く、バレルは4インチに短縮されている。
    「ボロ」は「ボリシェヴィキ*1」の略で、ロシア革命前後にボリシェヴィキとその敵対勢力双方に好んで用いられた。

  • ボロ・モーゼル 6ショット:
    弾倉を6連発にしたモデル。

  • モーゼル・フラットサイドモデル:
    側面の凹凸をなくし、磨き上げたモデル。
    中国ではその鏡のような磨き上げた側面から「大鏡面」の別称がある。

  • モーゼル・ライエンフォイヤー(M713):
    フルオートモデル。社内名称はM1931。
    ライエンフォイヤー(Reihenfeuer)とはドイツ語で「連射」の意。
    マガジンが脱着式となり、10発と20発弾倉が用意された。
    しかし、フルオート時の振動でセレクターが勝手に切り替わるなど欠陥が多く、短期間で生産中止になった。

  • モーゼル・シュネルフォイヤー(M172):
    ライエンフォイヤーの欠陥を改めたマシンピストルモデル。
    シュネルフォイヤー(Schnellfeuer)はドイツ語で「速射」の意。
    M713と同様、10発ないし20発の着脱式マガジンが用意されたが、従来通りのクリップによる装填も可能である。
    使用弾薬は7.63mm×25モーゼル弾だが、9mmルガー弾を使用するタイプもある。
    ドイツ軍では、主に空軍の砲兵部隊のオートバイ伝令兵や降下猟兵武装親衛隊に供与された。

  • モーゼル・M174:
    アメリカなどへの輸出や護身用として販売されたモデル。

  • 山西17式:
    C96に.45ACP弾に対応させる改良を施したモデル。
    左側面に「壹柒式」の刻印、右側面に「民国拾捌年晋造」の刻印がある点でC96と区別できる他、トリガーガード下で広がる大型の10発装填マガジンが外見上の特徴となっている。

  • 漢陽製C96:
    漢陽兵工廠製のC96のコピー。

  • モ式大型自動拳銃:
    中国戦線で鹵獲したC96が日本で準制式化された際の名称。
    弾丸も「モ号大型拳銃実包」として国産化された。


*1 большевики:ロシア社会民主労働党が分裂して形成された、ウラジーミル・レーニンが率いる左派の一派。名称は「多数派」の意。

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