Last-modified: 2023-10-07 (土) 09:45:23 (59d)
【CH-47】 †
Boeing Vertol CH-47 "
アメリカ合衆国・ボーイング社*1のタンデムローター式大型輸送ヘリコプター。
元々の設計はバートル社*2だが、開発中の吸収合併により「ボーイング・バートル」名義で供給されている。
1956年に開発がスタートし、1961年に初飛行、1962年からアメリカ陸軍への配備が開始された。
バートル社が得意としていたタンデムローターをターボシャフトとして用いているのが特徴。
2023年現在、生産されている唯一のタンデムローター機である。
軽量なエンジンながらペイロードは大きく、初期型でも同時期のCH-46に比して2倍近い出力を持ち、近代化改修によってさらに高い出力を得ている。
何度も改良や改修を繰り返されている傑作兵器の一つであり、2030年代までは現役であるものと推定される。
ただし、非常に目立つ構造的欠陥も一つある。
前部ローターシャフトが前方に傾いており、下げ舵を取ると地上130cmという極端に低い位置をローターが通過する点である。
これはローターの回転で人の首を刎ねる、障害物との激突でローターが折れて吹き飛ぶ、などの重大事故を招く恐れがある。
車輌・火砲の輸送時には機体の外に吊り下げるだけでなく、後部のランプドアから貨物室へ積み込む事ができる*3。
艦上機としての運用は想定されていない陸上機だが、揚陸艦の大型化に伴い、海兵隊でも採用されている。
水密胴体であるため海上運用も可能だが、ローターに折り畳み機構がないため航空母艦には格納できない。
スペックデータ †
乗員 | 3名 |
積載能力 | 兵員32名/55名(センターシート取り付け時)または担架24+衛生兵2名 |
主回転翼直径 | 18.3m |
全長 | 30.1m |
胴体長 | 15.54m |
全高 | 5.7m |
胴体幅 | 3.87m |
空虚重量 | 10.185t |
最大全備重量 | 12.1t |
最大離陸重量 | 22.68t |
最大吊り下げ重量 | 10,000kg+ |
エンジン | ライカミング T55ターボシャフト×2基 |
CH-47A:T55-L-5(2,200軸馬力)/T55-L-7(2,650軸馬力) CH-47B:T55-L-7C(2,850軸馬力) CH-47C:T55-L-11(3,750軸馬力) CH-47D:T55-L-712(3,750軸馬力)/T55-L-714(4,085軸馬力)*4 CH-47F:T55-GA-714A(4,868軸馬力)*5 | |
速度 (超過禁止/巡航) | 295km/h / 260〜270km/h |
航続距離 | 2,060km |
実用上昇限度 | 2,590m |
ホバリング高度限界 | 1,524m(OGE) |
上昇率 | 605m/min |
アビオニクス | |
無線機 | ARC-186またはARC-201 VHF/AM/FM無線機 ARC-199またはARC-220 HF無線機 ARC-164 UHF無線機 |
航法装置 | ASN-149(V) GPS受信機 ASN-128ドップラー/PGSセット ARN-89B ADF(自動方位探知)セット APN-209電波高度計 ARN-123 VOR/ILS受信機 ASN-43ジャイロ磁気コンパス |
IFF | APX-100 IFFトランスポンダー |
レーダー探知 | APR-39A(V) レーダー信号探知システム |
ミサイル警報 | ALQ-59 パルス・ドップラーミサイル警報装置 M130 フレアディスペンサー×4基 ALE-47スマートディスペンサー(MH-47E/G) |
主なバリエーション †
- 基本型
- YCH-47A(YHC-1B):
試作型。エンジンはライカミング T55-L-5(2,220馬力)×2基を搭載。
- CH-47A:
初期量産型。
エンジンはT55-L-7(2,650馬力)×2基を搭載。
- CH-47B:
ローター径を伸ばしエンジンをT55-L-7C(2,850馬力)×2基へ強化、胴体を改良したモデル。
- CH-47C:
エンジンをT55-L-11(3,750馬力)×2基へ強化したモデル。
後期型からカーゴフックが3点式になった。
- CH-47D:
A型/D型の改修型。
複合材ローターの採用やアビオニクスの改善、トランスミッション強化などにより能力が大幅に向上した。
エンジンはT55-L-712(3,750軸馬力)またはT55-L-714(4,085軸馬力)(MH-47Eも使用)×2基搭載。
- CH-47F:
D型の近代化改修型。
液晶グラスコックピットを採用し、ローターを改装した。
アメリカ陸軍のほか、オランダ空軍、カナダ空軍、イギリス空軍、インド空軍、オーストラリア陸軍等々が選定し、採用を決めている。
また、陸上自衛隊でも2016年度概算要求分からF型相当のものに切り替わっている。
- YCH-47A(YHC-1B):
- 派生型
- CH-47SD("Super D"):
D型の発展型。
エンジンはT55-GA-714Aを搭載し、燃料タンクが7,828リットルに拡大され、機首に気象レーダーが搭載されている。
台湾、シンガポール、ギリシャに輸出された。
- CH-47J:
川崎重工業によるD型のライセンス生産モデル。
1987年から陸上自衛隊・航空自衛隊向けに生産配備され、主に災害救助・物資輸送・火災消火に用いられる。
エンジンはT55-K-712(4,336軸馬力)×2基(川崎重工業のライセンス生産)。
- CH-147:
C型のカナダ空軍向け仕様。
- ACH-47A:
ベトナム戦争で試用されたガンシップ型。
非公認愛称は「ガンズ・ア・ゴーゴー」。
機首下部にM5グレネードランチャー、前脚横左右に増設されたスタブウイングにM24A1 20mm機関砲かXM159ロケットランチャーを装備する。
また、左右の窓にM60DやブローニングM2が取り付けられ*6、機体各所に装甲板が張られた。
4機が改造され、高い評価を得たが、輸送型の生産が優先されたことと専門の攻撃ヘリ・AH-1G「コブラ」の就役により量産されず。
- MH-47D:
A型を改修した特殊作戦型。
AAQ-16 FLIR、空中給油プローブ、救難ホイスト、デジタル・コックピットを装備。
自衛用武器として前部にM134ミニガンとローディング・ランプにM60Dを装備する。
- MH-47E:
CH-47Cを改造しD型相当の特殊作戦用となった機体。
燃料タンクを拡張し、機首の気象レーダーに加えてAPQ-147マッピング/地形追従レーダーを追加、航法装置改良、装甲追加、空中給油用プローブ追加など。
ASE*7には、AAR-47ミサイル警報装置、AVR-2レーザー警報装置、ALQ-162CW連続波ジャマーを装備。
- MH-47G:
MH-47Eに特殊作戦用の改造を施し、CH-47F相当の特殊作戦用となった機体。
エンジンはT55-GA-714Aに換装され、EGIと呼ばれる組込式GPS/INS装置、AHRF(航空機方位参照システム)が搭載された。
EAPS(エンジン・エア・セパレーター)が円錐形から円筒形に変更された。
- MH-47E:
- HH-47 CSAR-X:
古くなったHH-60G「ぺイブ・ホーク」の後継として選定された戦闘捜索救難型。MH-47G相当。
HH-60Wに敗れ採用されず。
- HH-47D:
韓国空軍が捜索救難用に改修した型。
- チヌークHC.1:
英国でC型をライセンス生産したもの。別名「CH47-352」。
英空軍に納入されている。
改良型のHC.1Bはグラスファイバー製のローター・ブレードと三点式のカーゴフックを装備する。
- モデル234「コマーシャル・チヌーク」(V234):
D型をベースにした民間向けモデル。
気象レーダーや大型化した燃料タンクを初めて採用している。
クレーン・ヘリコプターとして少数生産され、北海油田などへの物資輸送に使用された。
- モデル234LR:
旅客型。
- モデル234UT:
汎用型。生産されず。
- モデル234ER:
長距離型。
- モデル234MLR:
長距離汎用型。
- モデル234LR:
- モデル347:
CH-47Aをベースにした技術実証機。
胴体を延長し、ローターは4枚に増やされ、胴体中央に主翼を追加するなど大幅な改修が加えられている。
主翼は、ホバリング時に仰角を垂直に近い位置まで上げる仕組みになっていた。
- CH-47SD("Super D"):
*1 現在は「ボーイング・ロータークラフト・システムズ」社が生産している。
*2 旧名:パイアセッキヘリコプター。
*3 搭載量はかつてのDC-3/C-47に匹敵する。
*4 MH-47Eも使用。
*5 MH-47Gも使用。
*6 後端開口部のローディングランプにも搭載可能となっている。
*7 Aircraft Survivability Equipment.