【師団】(しだん)

Division.
主として陸軍における戦闘部隊の編制単位。
大半の国家が採用する編成であるため、陸軍兵力の概数を指し示す国際単位としても用いられる。
また、近現代の陸上戦において戦略的に扱われる部隊の基本単位でもある。

つまり、ある師団の司令部と連絡が取れなくなった場合、その師団は全滅したものと仮定される。
隷下の部隊が健在であっても、その部隊が上層部から継続的に指令を受ける事はない。
死守撤退が命じられるか、近隣の師団に組み込まれ、後は続報あるまで忘れ去られる。

指揮官(師団長)はいわゆる「将軍閣下」で、階級的には准将少将中将程度が妥当とされる。

ただし近年では国家総力戦思想の退潮に伴い、師団の概念を廃する国家も増えている。
そのような国家においては、一回り小さな編成である旅団を基本的な戦略単位として用いる。

「師団」に必要とされる兵力

師団は、その軍で想定される一般的な軍事作戦を一切の外部支援なく実行できる事を要求される。
即ち、陸上戦闘に不可欠な全種類の部隊を、作戦に必要な規模で指揮下に置かなければならない。

現代の場合、その条件を満たすために不可欠とされる兵科は概ね以下の通り。

司令部・参謀
機甲部隊
戦車及び偵察車両
歩兵
可能であれば機械化歩兵
砲兵
野戦砲および高射砲
航空機各種
典型的にはヘリコプター
工兵
兵站
通信兵、物資輸送、野戦病院、補給基地とその管理人員

以上が典型的な編制であるが、例外的に、特殊な命令しか受け持たないために極端に特化される師団も存在する。
歴史上、典型的な特化師団は以下の通り。

山岳師団
山岳地帯、特に冬期・雪中での山岳戦を想定。
性質的に機甲部隊の編成が困難で、軽歩兵・空挺降下を充実させる傾向にある。
空挺師団
空挺部隊の運用のみを想定。
緊急の展開が想定され、危地に対する増援・作戦初期段階での強襲を主任務とする。
機甲師団
敵の機甲部隊の拘束・撃滅のみに特化。
性質上、実働戦力の全てが戦車ないし機械化部隊である。
砲兵師団
戦略レベルでの制圧射撃のみを想定。
大規模な作戦で一個師団以上の砲兵を集中投入する場合に備えた編制。
飛行師団/航空師団
航空機の運用に特化。
基本的には空軍でのみ編制される。

一個師団を構成する人員の規模は、想定される戦場の広さによる。
大陸国家の場合、広大な前線を形成するため10,000人以上を必要とする。
一方、海軍重視の戦略を採る場合や国土が狭い場合、6,000〜9,000人程度の小規模師団も編成される。*1
上限は概ね15,000人。これを越えると戦略上の機動力を喪失するとされる。

航空師団/飛行師団

Air Division.

空軍における戦闘部隊の単位。 陸軍の師団と同様、6,000〜15,000人程度の集合とされ、戦略上の基本単位となる。

国・時代によってその位置づけには細かな差異がある。
以下にその一例を述べる。

アメリカ空軍
空軍創設の1948年から運用され、1992年の再編で廃止された。
序数航空軍と航空団を中継する単位で、師団長は概ね准将だが、一部に少将や大佐が充てられた。
制度廃止後は隷下の航空団が師団規模まで拡大・統合された。
現在のアメリカ空軍航空団はおおむね1個師団に相当する。
ロシア空軍
3個飛行連隊を束ねて航空師団を編成。師団長は大佐ないし少将が充てられた。
再編によって連隊・師団ともに廃止され、代わりに「航空基地」を編制単位としている。
未確定だが、再度の再編成で航空師団の制度が再度導入される動きあり。
イギリス空軍
「飛行集団(Group)」が1個航空師団に相当。司令官は代将ないし少将
1940年代のバトル・オブ・ブリテン以降、飛行隊?の直上に司令官を置く簡素な指揮系統が採用されている。
旧日本陸軍航空隊
複数の飛行団を束ねる上級司令部として編成されており、「飛行集団」をその前身とする。
師団長は中将職だが、実際には少将も「師団長心得」としてその職にあった。
太平洋戦争末期には本土防空戦のために指揮系統が簡素化され、飛行師団司令部が直接戦隊を指揮するようになった。
尚、実戦部隊を擁する師団のみが「飛行師団」、教導部隊などは「航空師団」として区別されていた。
航空自衛隊
航空総隊隷下の「航空方面隊」・航空混成団が飛行師団に相当する。

*1 嘗てのフランス陸軍(現在は全て旅団に改編されている)や陸上自衛隊などに例が見られる。

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