Last-modified: 2017-03-15 (水) 06:06:39 (45d)

【飛燕】(ひえん)

川崎三式戦闘機(キ61)"飛燕"
日本帝国陸軍の戦闘機連合軍におけるコードネームは「Tony(トニー)」。
略称として「三式戦」や「ロクイチ」のほか、「和製メッサー」とも呼ばれた。

昭和15年2月、日本陸軍は川崎飛行機に対し、ドイツのBf109に搭載されたダイムラー「DB601」エンジンを搭載する軽戦闘機"キ61"の開発を命じた。
これに対し、川崎の技術者はあらゆる局面に対応できる戦闘機を目指し、軽戦闘機という枠に囚われずに速度、旋回力、火力などのバランスの取れた機体を作り出した。
太平洋戦争開戦直後の昭和16年12月に初飛行し、ほとんどの要求性能を上回る結果を残したため、昭和18年に陸軍は制式採用を決定。採用年の昭和18年(皇紀2603年)から「三式戦闘機」と命名された。

本機は旋回性能が日本の軽戦闘機(軽戦)に及ばないものの、諸外国の重戦闘機(重戦)には優ることから、中戦と呼ばれた。
一方で速度も優れており、特に高高度性能と急降下性能が日本戦闘機としては優秀であった。

エンジンにはDB601をライセンス生産した「ハ40」を搭載したが*1、日本では不慣れな液冷エンジンだったため、エンジンの生産効率は悪かった。
本機は激化するニューギニア戦線に投入されたが、劣悪な整備環境では稼働率が非常に低かった。
さらに、前線では武装が弱いとの評価があり、ドイツから輸入したマウザー20mm機銃(MG151/20?)800丁を使って388機が改造された。
ただ、これは弾薬も専用の物を輸入したので、補給ができず、後に国産の20mm機銃(ホ5?)に変更されることになった。

一方で、整備インフラの整っていた本土で高い稼働率を見せた一部の機体は、末期の米戦闘機とも互角に戦える能力があり、優れた高高度性能を活かしてB-29迎撃では主力戦闘機として活躍した。
しかし当時の日本では全体的に液冷エンジンの体系が確立していないことも相まって、エンジンの生産が追いつかなかったため、機首なしの「飛燕」が工場に並ぶ結果となり、苦肉の策として空冷エンジンに換装した五式戦闘機?(キ100)が生産されることになった。

2009年には海軍の零式艦上戦闘機と共に、経済産業省から「近代化産業遺産群」に認定されている。
現在は二型の1機のみが現存しており、かかみがはら航空宇宙科学博物館で保存されている*2

関連:震天制空隊?

性能諸元

タイプ三式戦二型甲三式戦一型乙三式戦一型丁三式戦二型
機体略号キ61-I乙キ61-I丁キ61-II改キ61-II型甲
乗員パイロット1名
全長8.74m8.94m9.1565m9.16m
全高3.70m3.75m
全幅12.00m
翼面積20
翼面荷重156.5kg/173.5kg/191.25kg/
空虚重量2,380kg2,630kg2,855kg
正規全備重量3,130kg3,470kg3,825kg
プロペラハミルトン油圧式定速3翅
発動機川崎 ハ40
液冷倒立V型12気筒
(離昇1,175馬力)
川崎 ハ140
液冷式倒立V型12気筒
(離昇1,500馬力)
最高速度590km/h
(高度4,860m)
560km/h
(高度5,000m)
610km/h
(高度6,000m)
610km/h
(高度6,000m)
航続距離1,100km+戦闘20分 または3.65時間
2,850km(増槽付)または7.65時間
1,800km(過荷)1,600km(過荷)1,600km(正規)
固定兵装ホ103 12.7mm機関砲×4門
(胴体×2+ 翼内×2)
ホ5 20mm機関砲×2門(胴体)
ホ103 12.7mm機関砲×2門(翼内)
携行弾数各250発各120発(胴体)
各250発(翼内)
各250発
(胴体・翼内)
各120発(胴体)
各250発(翼内)
爆装100kg〜250kg爆弾×2発250kg爆弾×2発


バリエーション

  • キ61:
    原型機。

  • キ61-1型甲(三式戦一型甲):
    初期量産型。
    エンジンは"ハ40"(1,100馬力)を搭載。
    武装は12.7mm機銃×2挺、7.7mm機銃×2挺。

  • キ61-1型乙(三式戦一型乙):
    甲の7.7mm銃を12.7mm銃に換装した武装強化型。
    また、生産開始後には防弾鋼板の追加、胴体内タンク廃止、翼内タンクの防弾等が行われている。

  • キ61-1型丙(三式戦一型丙):
    乙の翼内機銃をマウザー製20mm砲(MG-151/20?)に換装し、20mm砲×2門、12.7mm銃×2挺とした型。主翼から砲身が飛び出しているのが外見の特徴。
    重量増加により、運動性は低下したものの、火力の向上により搭乗員の評判は良かった。
    初期装備型と現地換装型の2種類が存在する。

  • キ61-1型丁(三式戦一型丁):
    マウザー砲の在庫がなくなり、代わりに国産の20mm砲(ホ5?)を搭載した型。
    機首の延長や機首上面外板を信管?過敏による機関砲弾の暴発?対策で厚いものに変更を行ったほか、機体重心が前進したため後部にバラストを搭載している。
    しかし、改造による重量の増加により飛行性能全般が弱体化した。

  • キ61-2型:
    エンジンを"ハ140"(1,500馬力)に換装し、主翼および垂直尾翼を増積した"2型"の試作。
    発動機の不調と生産遅延により8機のみ生産。

  • キ61-2型改(三式戦二型):
    2型に一型丁の主翼を取り付け尾翼再設計した機体原型機。急降下性能向上。

  • キ61-2型甲(三式戦二型甲):
    二型初期生産型。武装は一型丙と同様マウザー砲×2門、12.7mm銃×2挺を装備。

  • キ61-II乙(三式戦二型乙):
    二型甲と同様の機体だが、武装は20mm機関砲×4門にした型。

  • キ61-III(三式戦三型):
    改良型提案。原型1機のみ製作。


*1 余談だが、海軍と陸軍はDB601をそれぞれ個別に輸入し、それぞれが独自にコピーするという愚の骨頂とも言える行為を行っている(いわゆる「NIH症候群」の一例)。彗星の項目参照。
*2 現在は野外テント内に保存されているが、2018年3月の再開館後、本館で正式展示される予定。

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