Last-modified: 2018-03-02 (金) 01:36:39 (259d)

【ハリアー】(はりあー)

Hawker Siddeley Harrier.
イギリスのホーカーシドレー?社が開発したSTOVL*1攻撃機
世界で唯一成功したSTOVL機ともいわれる*2

冷戦時代のにらみ合いにおいて、敵に滑走路を破壊されても運用可能なVTOL機は各国空軍の悲願であった。
世界各国がVTOL機を試作しては失敗する中、本機の原型機「P.1127『ケストレル』」が1960年に初飛行した。

本機における最大の成功要因は、機体中央部に配置されたロールス・ロイス?ペガサス?ターボファンエンジンにあった。
このエンジンは4つの推力偏向ノズルを持ち、前方2つはバイパス流を、後方2つはコア流を噴射する。
VTOL時は下方に、STOL時は斜め後ろに、巡航時は後方に噴射される他、空戦機動時にもノズルを傾けて旋回性能を向上させるVIFFモードを持つ。
また、VTOLモードにおけるダウンウォッシュの影響を避けるため、主翼下反角が大きく面積が小さいことも特徴である。

本機に代わるSTOVL機が長らく登場しなかったため、改良が繰り返され、シーハリアーやハリアーIIなどの発展型が運用され続けている。

アメリカではマクダネル・ダグラスライセンス生産する形で採用されたが、後に発展改良したAV-8B「ハリアーII」を開発した。
この改良型は、機体の素材にカーボン材を使用することで大幅な軽量化に成功し、それまでの大きな欠点であった航続距離ペイロードの大幅な改善に成功した。
このAV-8BにさらにFLIRを搭載し、夜間攻撃能力を付与されたAV-8B(NA)「ナイトアタック」型や、レーダーにF/A-18などと同じAN/APG-65を搭載して高度な目視外射程戦闘能力を持ったAV-8B「ハリアーIIplus」なども生産されている。

harrier.jpg

Harrier GR.7
Photo: RAF

スペックデータ

タイプハリアーGR.3ハリアーGR.7
乗員1名
全長14.27m14.12m
全高3.63m3.56m
翼幅7.7m9.25m
主翼面積18.6822.6
空虚重量6,140kg5,700kg
最大離陸重量11,430kg8,595kg(VTOL
14,061kg(STOL
エンジン推力偏向ターボファン×1基
ロールス・ロイス ペガサス103
推力95.6kN)
ロールス・ロイス ペガサス105
(推力96.7kN)
最高速度マッハ0.961,065km/h
戦闘行動半径230km(lo-lo-lo、ペイロード2,000kg)550km
フェリー航続距離3,425km3,256km
実用上昇限度15,600m15,170m
固定武装ADEN 30mm機関砲ポッド×2基(胴体下)ADEN 25mm機関砲ポッド×2基
(胴体下、実際には装備されず)
兵装
兵装搭載量2,268kgまでの兵装を搭載可能3,650kgまでの兵装を搭載可能
ハードポイント5か所
(主翼下4ヶ所、胴体下1ヶ所)
8か所
(主翼下ステーション1Aと7AはAAM用)
AAMAIM-9「サイドワインダー」×2発AIM-9「サイドワインダー」×6発
AGMAGM-65「マーベリック」×4発
爆弾類無誘導爆弾
BL775クラスター爆弾
レーザー誘導爆弾
無誘導爆弾
(3kgと14kg練習用爆弾を含む)
Mk.82/Mk.83
ペイブウェイシリーズレーザー誘導爆弾
ロケット弾マトラロケット弾ポッド×4基
(SNEB 68mmロケット弾×18発)
LAU-5003ロケット弾ポッド×4基
(CRV7 70mmロケット弾×19発)
マトラロケット弾ポッド×4基
(SNEB 68mmロケット弾×18発)
その他偵察ポッド×1基
増槽×2基
補助ドロップタンク×2基
または
偵察ポッド×2基
(DJRP*3スナイパーXR(GR.9)、
TIALD(GR.9))


AV-8B「ハリアーII Plus」
乗員1名
全長14.12m
全高3.55m
翼幅9.25m
主翼面積22.61
空虚重量6,742kg
運用時重量10,409kg
最大離陸重量14,061kg(STOL時)
9,414kg(VTOL時)
エンジンP&W F402-RR-401ターボファン×1基(推力99.62kN)
最高速度マッハ0.89
航続距離1,200nm/1,800nm(フェリー飛行時)
上昇率4,485m/min
翼面荷重460.4kg/
推力重量比0.95
固定武装ジェネラル・ダイナミクス GAU-12U「イコライザー」25mm機関砲ポッド×2門
(携行弾数300発)
兵装
兵装搭載量7箇所のハードポイントに最大5,986kgまでの兵装を搭載可能
AAMAIM-9「サイドワインダー」×4発
AIM-120「AMRAAM」×6発
AGMAGM-65「マーベリック」×6発
ASMAGM-84「ハープーン」×2発
ARMAGM-88「HARM」×2発
爆弾Mk.80シリーズ(3kgと14kg練習用爆弾を含む)
CBU-100クラスター爆弾
ペイブウェイシリーズ
GBU-32/GBU-38/GBU-54
Mk.77焼夷弾
B61核爆弾
ロケット弾
その他300/330/370 US Gal増槽×4基
「イントレピッド・タイガーII」電子戦ポッド
AN/AAQ-28V「ライトニング」照準ポッド
アビオニクスAN/APG-65 火器管制レーダー


派生型(カッコ内は生産機数)

空軍型

  • GR.1(78機*4):
    RAF向けの初期量産型。
    • GR.1A:
      GR.1の改修型。
      エンジンをペガサスMk.101からペガサスMk.102に換装。

  • T.2(12機):
    RAF向け機種転換用の複座練習機型。
    • T.2A:
      GR.1Aと同様にエンジンのアップグレードを行った複座練習機型。

  • GR.3(40機(新造)):
    GR.1の攻撃力を強化し、センサー機器の改善やエンジンをペガサスMk.103へのアップグレードを行った型。
    フォークランド紛争に投入されたのはこのタイプ。
    GR.1Aもこの仕様に改修された。

  • T.4(14機):
    T.2/2Aのエンジン換装型。
    一部はGR.3と同様の機首になっている。
    • T.4A:
      機首を通常型に戻した機体。
    • T.4N(3機):
      イギリス海軍向け。
      シーハリアー FRS.1のパイロット訓練用。
    • T.4(N)/4A(N):
      空軍からの貸与機の呼称。
    • T.60(4機):
      インド海軍向け。 シーハリアー FRS.51のパイロット訓練用。

  • GR.5(41機):
    AV-8Bの逆輸入型。
    アビオニクスが若干異なる。
    • GR.5A(21機):
      GR.7への繋ぎのため小改良されたモデル。

  • GR.7:
    AV-8B(NA)の逆輸入型。
    機関砲アビオニクスが異なり、レーザー誘導のAGM-65「マーベリック」ペイヴウェイを搭載できるよう改修されている。
    英海軍でのシーハリアー退役に伴って海軍・空軍の統合部隊で運用されるようになったが、2010年に退役した。
    • GR.7A:
      改良されたロールス・ロイス ペガサス Mk.107エンジンを装備した型。

  • T.8:
    T.4のアップグレード型。
    シーハリアー FA.2のパイロット訓練用。

  • GR.9:
    GR.7の電子機器の更新と兵装の強化を行ったモデル。
    GR.7と共に2010年にRAFから退役。
    • GR.9A:
      GR.7Aをアビオニクスと兵装を中心にアップグレードした型。

  • T.10:
    TAV-8Bを参考に設計された逆輸入型。
    GR.7と同等の戦闘能力を持つ。

  • T.12:
    練習型にGR.9と同様のアップデートを施した型。
    • T.12A: GR.7Aに相当する練習型。

  • T.52(1機):
    ホーカー・シドレー社のデモンストレーション用社有機。

海軍型

アメリカ海兵隊

  • AV-8A(102機):
    アメリカ海兵隊向けのGR.1A。
    マクダネル・ダグラスライセンス生産
    AIM-9「サイドワインダー」2発とADEN 30mm機関砲ポッド2基を装備し、ペガサスMk.102/Mk.103エンジンを搭載。

  • AV-8B「ハリアーII」:
    AV-8Aの大幅改良型。
    中止となったAV-16計画の技術を転用しており、ペイロードがほぼ2倍、その他の能力も大幅に強化され、後期型はFLIRを装備している。
    • AV-8B(NA):
      後期型。
      機首にFLIRを装備し夜間攻撃能力を得た。
      ナイトアタック型とも呼ばれる。

  • AV-8B「ハリアーIIplus」:
    アメリカ海兵隊向け。
    機首を改良し、AN/APG-65レーダーを搭載。
    AMRAAM運用能力を獲得している。

  • AV-8C:
    AV-8Aのレーダー警戒受信機チャフフレアなど、防御面を強化したタイプ。
    ハリアーIIが完成するまでの繋ぎとして製作された。

  • TAV-8A(8機):
    T.4のアメリカ海兵隊向け複座練習型。社内呼称ハリアーMk.54。

  • TAV-8B:
    AV-8Bのアメリカ海兵隊向け複座練習型。
    戦闘能力は持たない。

  • AV-8S「マタドール」(11機):
    スペイン海軍向けAV-8A。社内呼称ハリアーMk.55。
    その後タイ海軍に譲渡されたが、現在は交換部品の在庫不足などによりモスボール中。

  • TAV-8S「マタドール」(2機):
    スペイン海軍向けTAV-8A。社内呼称ハリアーMk.58。
    その後タイ海軍に譲渡されたが、現在は交換部品の在庫不足などによりモスボール中。

  • EAV-8B「マタドールIIVA.2/VA.3」:
    スペイン海軍向けのAV-8B(後にplus仕様に改修)及びAV-8B plus。


*1 ただし、フル装備では重量過多でVTOLでの離陸は出来ず、VTOLは燃費も悪いため滑走路が使える状況では殆ど滑走して離陸する。
*2 V-22F-35など、新しい実用VTOL機も登場してきているが、成功した実績を持つのは現状でハリアーが唯一。
*3 Digital Joint Reconnaissance Podの略。
*4 先行量産型除く。

添付ファイル: fileharrier.jpg 1952件 [詳細]

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