Last-modified: 2020-03-23 (月) 12:32:57 (254d)

【ハリアー】(はりあー)

Hawker Siddeley Harrier.

イギリスのホーカーシドレー?社(現:BAEシステムズ)が開発したVTOL攻撃機
1966年に初飛行した史上初の実用VTOL機で、長らく「世界で唯一成功したVTOL機」と称されてきた。

ただし、実際には離陸時に滑走を行うSTOVLで運用される。
初期型はペイロードに余裕がなく、完全装備かつ燃料満載の状態では垂直離陸できなかった。
改修でペイロードが向上しても垂直離陸が非効率である事は変わらず、燃料の浪費を避けるため離陸前の滑走が行われた。
この事実は「戦闘攻撃機が垂直離陸する必要はない」という見解を生じさせ、次世代のVTOL開発に大きな影響を及ぼしている。

設計上の特徴は、機体中央部に配置されたターボファンエンジン
エンジンが4つの推力偏向ノズルを持ち、前方2つはバイパス流を、後方2つはコア流を噴射する。
これをVTOL時は下方に、STOL時は斜め後ろに、巡航時は後方に噴射して推進する。
加えて、マニューバーに際して旋回方向に推力を傾けるVIFFモードを持つ。

また、VTOL中にダウンウォッシュで転倒するのを避けるため、主翼下反角が大きく面積が小さいことも特徴である。

イギリス軍の一時代を支えた他、アメリカ海兵隊を始め数カ国で運用された。
設計思想を継承するVTOL攻撃機が登場しなかったため、長きにわたって近代化改修が繰り返されている。
とはいえ、湾岸戦争頃には基礎設計が時代遅れになり、機材自体の老朽化もあって退役に移っていった。
2010年にはイギリス軍において運用終了。アメリカ海兵隊においてもF-35Bへの更新が始まっている。

なお、後継機種F-35Bは垂直離陸を想定していないSTOVL機である。
ハリアーなき後の時代に新たなVTOL攻撃機が開発される見込みはほとんどない。

harrier.jpg

Harrier GR.7
Photo: RAF

スペックデータ

タイプハリアーGR.3ハリアーGR.7
乗員1名
全長14.27m14.12m
全高3.63m3.56m
翼幅7.7m9.25m
主翼面積18.6822.6
空虚重量6,140kg5,700kg
最大離陸重量11,430kg8,595kg(VTOL
14,061kg(STOL
エンジン推力偏向ターボファン×1基
ロールス・ロイス ペガサス103
推力95.6kN)
ロールス・ロイス ペガサス105
(推力96.7kN)
最高速度マッハ0.961,065km/h
戦闘行動半径230km(lo-lo-lo、ペイロード2,000kg)550km
フェリー航続距離3,425km3,256km
実用上昇限度15,600m15,170m
固定武装ADEN 30mm機関砲ポッド×2基(胴体下)ADEN 25mm機関砲ポッド×2基
(胴体下、実際には装備されず)
兵装
兵装搭載量2,268kgまでの兵装を搭載可能3,650kgまでの兵装を搭載可能
ハードポイント5か所
(主翼下4ヶ所、胴体下1ヶ所)
8か所
(主翼下ステーション1Aと7AはAAM用)
AAMAIM-9「サイドワインダー」×2発AIM-9「サイドワインダー」×6発
AGM-AGM-65「マーベリック」×4発
爆弾類無誘導爆弾
BL775クラスター爆弾
ペイブウェイレーザー誘導爆弾
無誘導爆弾
(3kgと14kg練習用爆弾を含む)
Mk.82/Mk.83
ペイブウェイシリーズレーザー誘導爆弾
ロケット弾マトラロケット弾ポッド×4基
(SNEB 68mmロケット弾×18発)
LAU-5003ロケット弾ポッド×4基
(CRV7 70mmロケット弾×19発)
マトラロケット弾ポッド×4基
(SNEB 68mmロケット弾×18発)
その他偵察ポッド×1基
増槽×2基
補助ドロップタンク×2基
または
偵察ポッド×2基
(DJRP*1スナイパーXR(GR.9)、
TIALD(GR.9))


AV-8B「ハリアーPlus」
乗員1名
全長14.12m
全高3.55m
翼幅9.25m
主翼面積22.61
空虚重量6,742kg
運用時重量10,409kg
最大離陸重量14,061kg(STOL時)
9,414kg(VTOL時)
エンジンP&W F402-RR-401ターボファン×1基(推力99.62kN)
最高速度マッハ0.89
航続距離1,200nm/1,800nm(フェリー飛行時)
上昇率4,485m/min
翼面荷重460.4kg/
推力重量比0.95
固定武装ジェネラル・ダイナミクス GAU-12U「イコライザー」25mm機関砲ポッド×2門
(携行弾数300発)
兵装
兵装搭載量7箇所のハードポイントに最大5,986kgまでの兵装を搭載可能
AAMAIM-9「サイドワインダー」×4発
AIM-120「AMRAAM」×6発
AGMAGM-65「マーベリック」×6発
ASMAGM-84「ハープーン」×2発
ARMAGM-88「HARM」×2発
爆弾Mk.80シリーズ無誘導爆弾(3kgと14kg練習用爆弾を含む)
CBU-100クラスター爆弾
ペイブウェイシリーズレーザー誘導爆弾
JDAM(GBU-32/GBU-38/GBU-54)
Mk.77焼夷弾
B61核爆弾
ロケット弾LAU-5003ロケット弾ポッド×4基(CRV7またはAPKWS 70mmロケット弾×19発)
その他300/330/370 US Gal増槽×4基
「イントレピッド・タイガー供電子戦ポッド
AN/AAQ-28V「ライトニング」照準ポッド
アビオニクスAN/APG-65 火器管制レーダー


派生型(カッコ内は生産機数)

空軍型

  • GR.1(78機*2):
    RAF向けの初期量産型。
    • GR.1A:
      GR.1の改修型。
      エンジンをペガサスMk.101からペガサスMk.102に換装。

  • T.2(12機):
    RAF向け機種転換用の複座練習機型。
    • T.2A:
      GR.1Aと同様にエンジンのアップグレードを行った複座練習機型。

  • GR.3(40機(新造)):
    GR.1の攻撃力を強化し、センサー機器の改善やエンジンをペガサスMk.103へのアップグレードを行った型。
    フォークランド紛争に投入されたのはこのタイプ。
    GR.1Aもこの仕様に改修された。

  • T.4(14機):
    T.2/2Aのエンジン換装型。
    一部はGR.3と同様の機首になっている。
    • T.4A:
      機首を通常型に戻した機体。
    • T.4N(3機):
      イギリス海軍向け。
      シーハリアー FRS.1のパイロット訓練用。
    • T.4(N)/4A(N):
      空軍からの貸与機の呼称。
    • T.60(4機):
      インド海軍向け。 シーハリアー FRS.51のパイロット訓練用。

  • GR.5(41機):
    AV-8Bの逆輸入型。
    アビオニクスが若干異なる。
    • GR.5A(21機):
      GR.7への繋ぎのため小改良されたモデル。

  • GR.7:
    AV-8B(NA)の逆輸入型。
    機関砲アビオニクスが異なり、レーザー誘導のAGM-65「マーベリック」ペイヴウェイを搭載できるよう改修されている。
    英海軍でのシーハリアー退役に伴って海軍・空軍の統合部隊で運用されるようになったが、2010年に退役した。
    • GR.7A:
      改良されたロールス・ロイス ペガサス Mk.107エンジンを装備した型。

  • T.8:
    T.4のアップグレード型。
    シーハリアー FA.2のパイロット訓練用。

  • GR.9:
    GR.7の電子機器の更新と兵装の強化を行ったモデル。
    GR.7と共に2010年にRAFから退役。
    • GR.9A:
      GR.7Aをアビオニクスと兵装を中心にアップグレードした型。

  • T.10:
    TAV-8Bを参考に設計された逆輸入型。
    GR.7と同等の戦闘能力を持つ。

  • T.12:
    練習型にGR.9と同様のアップデートを施した型。
    • T.12A:
      GR.7Aに相当する練習型。

  • T.52(1機):
    ホーカー・シドレー社のデモンストレーション用社有機。

海軍型

アメリカ海兵隊

  • AV-8A(102機):
    アメリカ海兵隊向けのGR.1A。
    マクダネル・ダグラスライセンス生産
    AIM-9「サイドワインダー」2発とADEN 30mm機関砲ポッド2基を装備し、ペガサスMk.102/Mk.103エンジンを搭載。

  • AV-8B「ハリアー供廖
    AV-8Aの大幅改良型。
    中止となったAV-16計画の技術を転用している。
    構造材に炭素繊維強化樹脂を多用する事で機体重量を大幅に軽量化。
    本体重量の軽量化に伴って航続距離ペイロードが大幅に改善されている。

    • AV-8B(NA):
      ハリアー兇慮經型。
      機首にFLIRを装備し夜間攻撃能力を得た。
      ナイトアタック型とも呼ばれる。

  • AV-8B「ハリアーplus」:
    アメリカ海兵隊向け。
    機首を改良し、レーダーAN/APG-65に換装。
    AMRAAM運用能力を獲得している。

  • AV-8C:
    AV-8Aのレーダー警戒受信機チャフフレアなど、防御面を強化したタイプ。
    ハリアー兇完成するまでの繋ぎとして製作された。

  • TAV-8A(8機):
    T.4のアメリカ海兵隊向け複座練習型。社内呼称ハリアーMk.54。

  • TAV-8B:
    AV-8Bのアメリカ海兵隊向け複座練習型。
    戦闘能力は持たない。

  • AV-8S「マタドール」(11機):
    スペイン海軍向けAV-8A。社内呼称ハリアーMk.55。
    その後タイ海軍に譲渡されたが、現在は交換部品の在庫不足などによりモスボール中。

  • TAV-8S「マタドール」(2機):
    スペイン海軍向けTAV-8A。社内呼称ハリアーMk.58。
    その後タイ海軍に譲渡されたが、現在は交換部品の在庫不足などによりモスボール中。

  • EAV-8B「マタドールVA.2/VA.3」:
    スペイン海軍向けのAV-8B(後にplus仕様に改修)及びAV-8B plus。


*1 Digital Joint Reconnaissance Podの略。
*2 先行量産型除く。

添付ファイル: fileharrier.jpg 2214件 [詳細]

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