Last-modified: 2017-11-23 (木) 11:47:36 (19d)

【MiG-25】(みぐにじゅうご)

旧ソビエトのミコヤン・グレヴィチ設計局が開発した、高々度迎撃用の戦闘機
NATOコードFoxbat(フォックスバット).

本機は当時、アメリカで開発が進められていた超高速爆撃機・XB-70「バルキリー」に危機感を抱いたソビエトがそれに対抗するため急遽、開発に着手されたものである。
XB-70の開発計画自体は後に中止されたものの、アメリカ軍はA-5「ビジランティ」B-58「ハスラー」?といった超音速爆撃機を実戦配備しており、そのような機体から自国を防衛するという目的で開発を続行、1972年に初配備された。
当時としては斬新な双垂直尾翼と大型双発のターボジェットエンジンを搭載し、高度6万フィートをマッハ3.2という戦闘機としては常識外れな速度で飛行する本機は西側諸国に大きな衝撃を与え、F-15などの戦闘機を開発させる契機ともなった。
配備以来秘密のベールに包まれていたが、1976年のベレンコ中尉亡命事件という意外な形でその詳細を知ることとなる。

本機が装備するツマンスキー?R-15BD-300エンジンは高々度迎撃という任務のために上昇力・高々度性能のみを追求したため、ターボジェットというよりむしろラムジェットに近い低圧縮のエンジンで、高々度での燃焼効率に優れ、現在使用されている戦闘機用エンジンに引けはとらない。
しかし低空、低速域での燃焼効率は非常に劣悪で、航続距離も短く、エンジンの消耗も激しいため、頻繁にエンジンの交換が必要とされた。

機体材質にはマッハ3という高速時の摩擦熱のためアルミニウムは使えず、また当時高価で加工が難しく開発期間、生産数に支障の出るチタニウムも使えなかったためニッケル鋼を多用。そのため非常に機体が重くなっている。
それでも機体構造上マッハ3を出すのは困難であり、実用最大速度はマッハ2.83程度である。

高々度迎撃という目的からレーダーはRP-25「スメルシュ」(NATO名「フォックスファイヤー」)を装備。
80kmという最大探知距離を持ち、R-23/R-24(AA-7「エイペックス」)?R-40(AA-6「アクリッド」)などの中射程空対空ミサイルとセットで高い迎撃能力を誇った。
電子機器の構成部品に関しては、古典的な真空管を多用しているが、これには「半導体回路は、敵の爆撃機が核攻撃をおこなった場合に電磁パルスで焼損するおそれがあり、それを敬遠したため」という説がある。
また、真空管は故障の発見が極めて容易であり、前線における整備を期待しないソビエト式運用方法上の必要から採用されたという説もあった。

しかし実際のところ、開発に着手された1960年代当時、トランジスタの技術は世界的にまだ未熟で、大電流に耐えられるような製品は西側にもなく、レーダーに大出力を求めるにはこれしか選択肢がなかった、というのが実情である。
ところが、これによって本機の機載レーダーは600kwもの大出力を発揮でき、敵のジャミングを打ち破れる能力を得ることに成功し、電子戦においてきわめて有利になったという。

また、本機は純粋な迎撃用のミサイリアーとして設計されており、ドッグファイトについては全く考慮されていないため、機関砲すら装備せず、運動性も皆無といって差し支えないほどであった。
これはまた、本機の設計コンセプトが「音速で展開可能な空飛ぶSAMサイト」を目指していた結果でもあり、本機とその後継であるMiG-31は西側の概念でいうところの「戦闘機」ではない。

本機はその高速性能を活かした偵察仕様などのバリエーションも生産され、ウクライナをはじめとする東側諸国にも相当数が輸出されたが、その燃費の悪さと航続距離の短さ、アビオニクスの旧式化などを理由にその役目を後継機のMiG-31に譲り、現在では大部分が一線を退いている。
1991年の湾岸戦争では、唯一F/A-18撃墜し、2003年3月には、イラクでRQ-1「プレデター」無人偵察機と交戦し、これを撃墜する戦果を挙げた。

MiG-25.jpg

Photo:Russia air force

関連:MiG-31

各国での保有数(2003年 推測)

  • アフリカ地域
    • アルジェリア空軍:22機(MiG-25。2005年の時点での稼動状態は不明。)
    • リビア空軍:35機(MiG-25。2007年現在、稼動状態ではないと思われる。)
  • アジア地域
    • シリア空軍:30機(MiG-25)
    • イラク空軍:不明(MiG-25)
    • インド空軍:20機以下(MiG-25R系。2006年5月をもって退役。)
  • ユーラシア地域
    • ロシア空軍:300機以上(MiG-25)
      ※予備機が8割で実戦部隊では偵察型だけ使用。
    • カザフスタン空軍:10機(MiG-25)
    • トルクメニスタン空軍:24機(MiG-25)

スペックデータ

乗員1名
全長19.75m
全高6.10m
翼幅14.01m
翼面積61.40
空虚重量20,000kg
最大離陸重量41,000kg
エンジンソユーズ・ツマンスキー R-15BD-300ターボジェット×2基
推力73.5kN/7,500kg(通常)/110kN/11,200kg(A/B使用時)
最高速度マッハ3.2
航続距離940〜1,280km(増槽使用、超音速巡航時)
上昇率50m/秒
海面上昇率12,495m/min
実用上昇限度20,700m
固定武装なし
兵装R-40AAM×4発またはR-23/-24?AAM×2発、R-60AAM×2発を搭載可能
アビオニクスRP-25「スメルシュ-A1(NATOコード:フォックスファイヤ)」レーダー
N-005(RP-25M)「サプフィール-25(NATOコード:ハイラーグ)」レーダー
RV-UMまたはRV-4電波高度計

MiG-25の主な種類

  • 原型機
    • Ye-155:
      MiG-25の原型機。数々の速度、高度記録を樹立した。
      上昇力記録の殆どをF-15に更新されてしまったが、現在でも2万ft以上の上昇力記録を保持している。

    • Ye-155M:
      記録挑戦用の機体。

    • Ye-266:
      記録挑戦用のエンジン強化型。

    • Ye-266M:
      記録挑戦用の機体。名称以外はYe-155Mと同一。

  • "フォックスバットA"
    • MiG-25P:
      初期量産型。
      RP-25「スメルシュ(NATO名『フォックスファイア』)」パルスドップラーレーダーを搭載。

  • "フォックスバットB"
    • MiG-25R:
      機首にカメラを搭載した高々度偵察型。最高速度マッハ3.2を誇る。

    • MiG-25RB:
      慣性航法装置を追加し、無誘導爆弾の搭載能力を持った戦術偵察爆撃機仕様。
      FAB-500 500Kg爆弾を最大で胴体下/側面に6発、主翼下に左右2発ずつ装備する。

    • MiG-25RBV:
      SRS-4電波受信機を搭載し、偵察機材を強化した(SIGINTELINT/COMINT機タイプ。
      写真偵察能力も持つ。後にSRS-9側視レーダーを搭載。

    • MiG-25RBT:
      RPV型のSRS-9側視レーダーを「タンガーシ」受信機に換装した戦術電波偵察機型。

  • "フォックスバットC"
    • MiG-25PU/RU:
      R型・P型の練習機仕様。複座型でレーダーは搭載していない。
      PUは戦闘機用として使用され、RUは偵察機用として使用される。
      兵装発射・故障をシミュレーションする機能を持つ。最高速度はM2.65。

  • "フォックスバットD"
    • MiG-25RBK:
      「クープ3」電子偵察機材を装備した電子偵察機仕様。
      偵察用光学カメラは搭載していない。

    • MiG-25RBF:
      RB型をRBK型同等の改修を施した型。「シャー-25」SLARを装備。

    • MiG-25RBS:
      「サブーリャ-E」対地側視レーダーを搭載した電子偵察機型。

    • MiG-25RBSh:
      MiG-25RBSのアップグレード型。
      「ショームポル」SLARを搭載。

  • "フォックスバットE"
    • MiG-25PD:
      MiG-25Pのアップグレード版。
      レーダーをより高性能のRP-25「サプフィール25(NATO名『ハイラーク』)」に換装し、IFFデータリンク、TP-62ShIRSTを搭載。
      ルックダウンシュートダウンTWS能力やAA-7?AA-8の運用能力などを得た。

    • MiG-25PDS:
      MiG-25PのPD型への改修型。

    • MiG-25PDSL:
      PD型にECM機器を追加した型。

    • MiG-25PDF:
      PDの輸出型。
      MiG-25Pと同等の「スメルシュ」レーダーを搭載し、アビオニクス類はグレードダウンされている。

    • MiG-25PDZ:
      MiG-25PDのキャノピー右側前方に空中給油ドローグを装備した型。1機のみ。

  • "フォックスバットF"
    • MiG-25BM:
      SEAD仕様。
      「ヤグアール」対レーダー電波システムなど各種ECM機材とKh-58(AS-11「キルター」)対レーダーミサイル×4発(後にAS-17も装備)を装備。


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