Last-modified: 2017-01-29 (日) 11:01:24 (293d)

【スペースシャトル】(すぺーすしゃとる)

Space Shuttle.
アメリカ航空宇宙局(NASA)がかつて運用していた宇宙船
任務ごとの使い捨てではなく、機体総重量の約90%が再利用可能となっている点が特徴だった。
人工衛星の打ち上げや衛星軌道上での学術実験、宇宙ステーションの建設及び人員・資材の搬送に用いられていた。

実験機を含めて計6機が建造され(詳細は後述)、うち2機が事故で喪失、他は運用寿命により2011年に退役。
このため、稼働状態のスペースシャトルは現存しない。
後継機の開発が進められているが、開発費の高騰から見通しはまだ不透明である。

関連:オービター エンタープライズ NASA ブラン X-33?

略史

1960年代
NASAが「再利用が可能な宇宙船」についての構想を計画。
1972年
プロジェクトが始動。
1977年
エンタープライズ号による滑空試験を開始。
1981年4月12日
コロンビア号(STS-1)が打ち上げ成功。以降、本格的なミッションがスタートした。
1986年1月28日
チャレンジャー号(STS-51L)が打ち上げの上昇中の事故により爆散。乗員は全員死亡。
1992年
最終号機「エンデバー」号がロールアウト。
2003年2月1日
コロンビア号(STS-107)が大気圏?再突入時の事故により空中分解。乗員は全員死亡。
2011年3月
ディスカバリー号が運用寿命を満了し、退役。
2011年5月
エンデバー号が運用寿命を満了し、退役。
2011年7月
アトランティス号が運用寿命を満了し、退役。
最後の一機が退役に至ったため、これをもって全プロジェクトが終了。

構造・性能

オービター1機、固体燃料ロケットブースター2基、外部燃料タンク1基で構成される。
オービターは100回、ブースターは10〜20回程度の再利用を想定して設計されていた。
ただし、実際には毎回のミッションごとに大修理が必須だったため、経済上の効率性には疑問の余地もあった。
また、外部燃料タンクだけは使い捨てで、衛星軌道への上昇中に切り離される。

任務終了後はオービターが大気圏再突入を行い、グライダーのように滑空・着陸が可能だった。
ただし、外部燃料タンクを再接続しなければ離陸できないため、回収するために専用輸送機の手配を要していた。
実際の運用ではB747-100B747SRを改造した専用の輸送機(SCA)が用意されていた*1

また、大気圏再突入時の熱の壁の影響が設計時の想定を越えており、余熱で機体主構造を損傷する危険性があった。
このため、特殊な強制冷却装置を用意し、着陸後すぐに冷却しなければならなかった。

理論上は滑走路さえあれば着陸可能であったが、上記の措置に伴う輸送コストや管制手続き上の問題から、NASA管理施設以外の場所に着陸した事例はない。
発射地であるケネディ宇宙センター以外での着陸は強く忌避され、運用コストが高騰する後期ミッションほどその傾向が強かった。
天候不順などでケネディへの帰還が滞った場合も、可能な限り、ケネディ上空が順天になるまで滞在日程を延期する事が選ばれた。

構成

オービター
スペースシャトル・システムの核となる部分。大気圏への再突入が可能。
前部に乗員の生活・生命維持設備、中央に貨物室、後部にエンジン・飛行制御部品を配置。
外部燃料タンク(ET)
オービターのエンジン用推進剤、液体酸素・液体水素が入っている。
打上げ9分後(高度約150km)に切り離され、唯一再利用されない部分。
発射台上でオービターとロケットブースターを繋ぐ役割も果たす。
固体ロケットブースター(SRB)
推力偏向装置を搭載。
外部燃料タンクに2本取り付けられ、打上げ2分後(高度約45km)に切り離される。
落下後回収され、再利用される。
発射台上ではボルトで固定され、発射の瞬間までスペースシャトル全体を支えている。
全長全高全幅重量推力
オービター37.2m17.2m23.8m78〜79t170t(大気圏)/213t(真空)
ET47.0m-8.4m35t(自重)/720t(推進剤)-
SRB45.5m3.7m88t(自重)/502t(推進剤)1,200t

オービターの一覧

オービターは「エンタープライズ型」として、試作・試験機5機と実用機4機が建造された。
ただし書面上、NASAではプロジェクトの終了まで実用機全てを「実験機」として扱っていた。

実用機
機体番号機名初飛行最終飛行備考
OV-102コロンビア1981.4.12
〜1981.4.14
(STS-1)
2003.1.16
〜2003.2.1
(STS-107)
実用初号機。
地球へ帰還途中、空中分解事故により喪失(後述)。
OV-099チャレンジャー1983.4.4
〜1983.4.9
(STS-6)
1986.1.28
(STS-51L)
地上試験機「STA-099」を転用。
打ち上げ直後、外部燃料タンクの爆発による空中分解事故により喪失。
(後述)
OV-103ディスカバリー1984.8.30
〜1984.9.5
(STS-41D)
2011.2.24
〜2011.3.9
(STS-133)
現在、エンタープライズに替わって
国立航空宇宙博物館に展示されている。
OV-104アトランティス1985.10.3
〜1985.10.7
(STS-51J*2)
2011.7.8
〜2011.7.21
(STS-135)
スペースシャトル計画全体の最終飛行を行った機体。
OV-105エンデバー1992.5.7
〜1992.5.16
(STS-49)
2011.5.16
〜2011.6.1
(STS-134)
実用機としては最終号機。
「チャレンジャー」喪失後の代替機として予備部品から建造された。
試験機
機体番号機名初飛行最終飛行備考
OV-101エンタープライズ1977.2.151977.10.26大気圏内での進入と着陸試験に供用。宇宙飛行能力なし。
「チャレンジャー」喪失時の代替機候補だったが、宇宙飛行能力は実装されなかった。
OV-095-アビオニクスの試験・訓練用模擬装置。
-パスファインダー(機-地上施設内での移動と取扱訓練用の模擬機。
STA-098パスファインダー(供-日本の企業がイベント展示用に制作した実物大模型。
イベント終了後に合衆国宇宙ロケットセンターに寄贈された。
機体番号と機名は寄贈後に与えられた名誉称号。
MPTA-098-推進と燃料供給システムの試験機。
STA-099構造材の疲労試験と熱試験に供用された機体。
後に宇宙飛行能力を実装して「チャレンジャー」となる。

スペースシャトルの事故

チャレンジャー号(STS-51L)の事故

1986年1月28日、チャレンジャー号(STS-51L)が打ち上げの上昇中、外部燃料タンクが爆発。
この爆発でオービターは空中分解し、乗員全員が死亡した。

推定される原因は、ロケットブースターのつなぎ目を密封するOリングの低温硬化であった。
密閉性を損なってガスが漏出し、固定具が溶解。不安定になったブースターが燃料タンクに突き刺さり爆発に至った。

当日の打ち上げ延期を求める現場の声もあったが、それを無視したNASAの管理体制を問題視された。
また、この事故の教訓から、大気圏内での事故を想定した緊急脱出装置が装備されることとなった。

逆に言えば、それまで緊急脱出装置は装備されていなかったし、致命的な機械トラブル自体があまり想定されていなかった。

この事故はスペースシャトルに対する社会的信用を失墜させた。
また、十分な安全対策を取るようになった結果、打ち上げに際しての運用コストが爆発的に高騰。
人工衛星などの産業利用において、スペースシャトルは費用対効果で使い捨てロケットに対抗できなくなった。

最も楽観的な予測では、スペースシャトルは1回のフライトを1200万ドルで運行可能と目された。
しかし最終決算から概算するに、1回のフライトに必要な費用は少なくとも15億ドルを超えている。

コロンビア号(STS-107)の事故

2003年2月1日にコロンビア号(STS-107)が大気圏再突入時に空中分解を起こし、乗員全員が死亡した。

推定される原因は、発射時に外部燃料タンクから脱落した断熱材の破片が衝突したこと。
これにより、左主翼強化カーボン製パネルに亀裂が発生。
大気圏再突入時に亀裂から高温のプラズマが侵入し、左翼の構造材が溶解して空中分解に至った。


*1 それぞれ元アメリカン航空・日本航空の中古機を改造したもの。
*2 国防総省扱いのミッション。

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