【航空母艦】(こうくうぼかん)

Aircraft Carrier

航空機艦上機)の整備および着陸離陸を行う能力を持つ艦艇。空母。
原義を直訳すれば「航空機運搬艦」という程度の意味で、「母」と称するのは日本語特有の詩的表現。

固定翼機を扱う場合は甲板に滑走路飛行甲板)を備える。
しかし艦艇のサイズの都合上、離陸着陸に十分な全長を確保できない事も多い。
このため、離着陸を行う際は風を利用するために艦ごと向きを変える事が多い。
また、着陸時にはアレスティングギアを用いて強制的な急停止が行われるのが普通。
離陸のためにカタパルトスキージャンプなどの構造を備える艦も多い。

黎明期には艦隊護衛や、少数を多方面で運用しゲリラ的な攻撃を行う艦として運用された。
しかし真珠湾攻撃によって航空主兵主義が立証され、艦隊決戦の主力に躍り出た。

関連:CIWS ジェットブラストディフレクター イージス艦 テイルフッククラブ 強襲揚陸艦

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"CV-63 Kitty Hawk" 米海軍最後の通常動力型正規空母 満載排水量:82000t 搭載機72+6機 米第7艦隊所属(横須賀) 2009年1月31日退役。

航空母艦の大型化とそれに伴うデメリット

ここ半世紀、艦上機を含めてあらゆる軍用機は大型化する傾向にある。
このため、航空母艦は軒並み大型化するか、搭載機数を削減するかの選択を迫られている。

しかしどちらにせよ、航空母艦、特に正規空母は常軌を逸する規模まで巨大化の一途を辿っている
往時の戦艦と同様、空母は国威の象徴であり、その存在は時として国際問題になるほど威圧的である。

例えば、アメリカ海軍のニミッツ級正規空母排水量10万トンを超える世界最大の軍艦である。
この規模のスーパーキャリアーは一隻で攻勢対航空作戦を実施可能で、中堅国家の空軍全てを単独で撃滅し得る。

ゆえに、空母は極めて高額である。
搭載機も空母そのものに負けず劣らず高額で、勤務するエビエーターも精鋭が集められる。
最新軍事技術の塊は必然的に機密の塊でもあり、防諜にかかる経済的・政治的コストも甚大である。

結果、大型空母を失った場合に生じる損害は列強各国をもってしても耐え難いほど増大する事となった。
そのため、戦闘で失われる危険のある海域にはまず派遣されず、余程の事がない限り出動しない。
つまり、出動したと言う事はそれだけ深刻な事態と言える。

また、それほど高価な空母であるから、損耗を前提とした作戦には投入できない。
実際の運用に際しては常にイージス艦など護衛艦哨戒機で厳重な警戒網を敷く必要がある。
さらに、港で整備・補修に入る間の補充も当然必要となるので、空母は最低3隻を保有しなければ戦略的に運用できない。

ここまで甚大な負担に耐えられる国家は非常に限られており、実質的にはアメリカ合衆国の一極独占状態である。

分類

※()内はアメリカ海軍での略号。

空母保有国の一覧

過去に空母を保有していた国の一覧

  • カナダ
    • ウォリアー(HMS Warrior R31) (イギリスから貸与されたコロッサス級航空母艦。マグニフィセントと交換。)
    • ボナヴェンチャー(HMCS Bonaventure CVL-22) (元英国マジェスティック級航空母艦「パワフル(HMS Powerful R95)」)
    • マグニフィセント(HMCS Magnificent) (元英国マジェスティック級航空母艦)
  • アルゼンチン(2隻とも元英国コロッサス級航空母艦「ウォリアー」・「ヴェネラブル(HMS Venerable R63)。退役。)
    • インデペンデンシア(ARA Independencia)
    • ベインティシンコ・デ・マヨ(ARA Veinticinco de Mayo)*3
  • オランダ
    • カレル・ドールマン(Hr. Ms. Karel Doorman R 81) (元英国コロッサス級航空母艦「ヴェネラブル」。アルゼンチンへ売却。)
  • オーストラリア (2隻とも元英国マジェスティック級航空母艦「マジェスティック(HMS Majestic R77)」・「テリブル(HMS Terrible R93)」。退役。)
    • メルボルン(HMAS Melbourne R21)
    • シドニー(HMAS Sydney R17/A214)
  • ドイツ(未完成)
    • グラーフ・ツェッペリン(Graf Zeppelin)※第二次世界大戦終戦後ソ連に接収され洋上基地(PB-101)になる。
    • ヴィーザル(アドミラル・ヒッパー級?重巡洋艦4番艦「ザイドリッツ(Seydlitz)」を建造途中に改造したが、物資不足で建造中止・廃棄。)

*1 初代は元英国マジェスティック級「ハーキュリーズ」、1997年1月31日に退役
*2 元英セントー級「ハーミーズ」
*3 1982年のフォークランド紛争にも参戦。

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