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【SA-4】 †
旧ソ連がS-75(SA-2)の後継として開発した、初の自走式長距離地対空ミサイル。
NATOコードはSA-4「ガネフ」と名付けられたが、ロシアでは2K11「クルーグ(Krug*1)」と呼ばれている。
1957年から開発が開始され、1964年にモスクワの赤の広場?での行進で初めて一般に公開された。
1964年には部隊配備が開始されている。
SA-4は9M8ミサイルと、2P24起倒式自走発射機(TEL)、1S12捜索警戒レーダー車、PRV–9高度測定レーダー*2、1S32 サイル追尾レーダー/射撃統制車及び2T6予備弾運搬装填車から構成される。
2P24自走発射機は「オブイェクト123」共通装軌車輛シャーシ*3を使用し、発射台にはミサイルが2発搭載出来る。
ミサイル(3M8または9M8)はラムジェット統合推進方式で、発射されると初期誘導〜中間誘導は無線指令誘導?で目標を追尾し、最高速度マッハ2.5まで加速する。
その後、終端誘導ではセミアクティブレーダー誘導に誘導が切り替わり近接信管で目標を撃墜する。
なお、現在は旧式でありながら最大射程は72km(最高迎撃高度は24,000m)と、現在ロシア軍の自走式SAMではSA-12の次に射程が長い。
レーダー装置は、「ロング・トラック」目標監視レーダーと「パットハンド」目標追尾・誘導レーダーを使用しており自走可能。
索敵距離は不明だが、ミサイルの射程距離から見るとかなり長い事が予想される。
このように迎撃能力が高いSA-4だが、逆にあまりにもミサイルが大きいため次弾の装填にかなりの時間がかかるという。
輸出は、少数ではあるがブルガリア・旧チェコスロバキア・旧東ドイツ・ポーランド・エジプトで、今のところ実戦に投入された例は無い。
ロシア軍では、SA-10やSA-12を配備に伴い1990年代に退役しており、現在は訓練弾として用いられている。
関連:SA-10 SA-12
SA-4 photo:BC CCCP
配備国 †
運用中 †
- アルメニア
- アゼルバイジャン
- トルクメニスタン
- キルギス
- 北朝鮮
退役 †
- チェコスロバキア
- 東ドイツ
- ハンガリー
- ブルガリア
- ポーランド
- ソ連/ロシア
- ウクライナ
構成 †
※以下の構成で運用される。
レーダー及び指揮管制車 | |
1S12捜索レーダー警戒車 | AT-T装軌車を改造したもので、防空担当空域の監視と射撃目標の選定を行う。 P-40対空レーダー(NATOコード:ロングトラック)を搭載。 最大探知距離:約180km、高度:12,000m。 |
1RL132高度測定レーダー車 | P-40により発見された目標の高度を算定する。 PRV–9 高度測定レーダー(NATOコード:シンスキン)を搭載。 最大測定可能範囲は200〜300km。 2軸4輪のトレーラーに搭載され、主にKraZ 214 6輪トラックによって牽引された*4。 |
9S44「クラブK-1」指揮管制車 | システム全体の指揮・管制車両。 1981年には改良型の9S468M-1「ポラナD-1」に更新された。 |
射撃ユニット | |
1S32 ミサイル追尾レーダー/射撃統制車 | NATOコード:パットハンド 9M8ミサイルの追尾と誘導を担当。 レーダーの最大有効範囲は約130km。 |
2P24 起倒式自走発射機 (TEL) | 9M8ミサイル 2発とその連装発射装置を搭載。 |
2T6 予備弾運搬/装填車 | 9M8ミサイルの即用予備弾1発と2P24への装填装置を搭載。 |
支援車輛 | |
9T25 予備弾運搬車 | 9M8ミサイルの予備弾1発をZil-157KVトラクターと 2軸4輪セミトレーラーによって運搬。 ミサイルは長距離移動時は密封コンテナに収納されて搭載される。 |
9T31 クレーン車 | 9T25より2T6に、また保管状態のミサイルを9T25に移送するためのクレーン車。 |
スペックデータ †
2P24自走発射機 | |
乗員 | 3〜5名 |
全長 | 9.46m |
全高 | 4.47m |
全幅 | 3.20m |
戦闘重量 | 30.0t |
エンジン | V-59 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル(出力520hp) |
最大速度 | 45km/h(路上) |
航続距離 | 450km |
携行弾数 | ミサイル2発 |
装甲厚 | 15mm |
兵装 | 3M8地対空ミサイル連装発射機×1基 |
生産台数 | - |
3M8ミサイル | |
全長 | 8.80m/8.30m(3M8M2) |
直径 | 0.86m |
翼幅 | 2.73m |
発射重量 | 2,500kg |
飛翔速度 | マッハ2.5 |
有効射程 | 8,000〜55,000m/9,300〜72,000m(3M8M1)/11,000〜50,000m(3M8M2) |
有効射高 | 300〜27,000m/100〜24,000m(3M8M2) |
推進方式 | ラムジェット+固燃ロケットモーター(ブースター4本) |
誘導方式 | ラジオ指令?/セミアクティブレーダー |
弾頭 | HE 破片効果弾頭(135kg) |
派生型 †
- 2K11「クルーグ」(SA-4):
3M8ミサイルを搭載する初期型。
- 2K11M「クルーグ-M」(SA-4A):
射程延伸型の3M8M1ミサイルを使用する型。
- 2K11M2/M3「クルーグ-M1」(SA-4B):
改良型の3M8M2ミサイルを使用する型。
- 9M316M "Virazh":
実弾標的として改装された型。
*1 Круг:ロシア語で円を意味する。
*2 主にKraZ 214 6輪トラックによって運搬された。
*3 2S4「チュリパン」自走迫撃砲や2S5「ギアツィント」自走カノン砲にも使用されている。
*4 1960年代以降はレーダーを改良型のPBV-16(NATOコード:シンスキンB)とし、KraZ–255Bトラックに搭載する方式に変更している。