【主力戦車】(しゅりょくせんしゃ)

Main Battle Tank (MBT)
戦車の区分のひとつ。
一般的には機関砲を事実上無力化する装甲と、自身を撃破可能な火砲を備えた車両を指す。
性能要求として自らの主砲に対する対応防御も要求されるが、実際に対応防御を達成しているかどうかは必ずしも問われない。
戦場までの行軍および撤退を自力で行えるだけの機動力も要求され、この理由から、足回りには不整地に強い無限軌道(キャタピラ)が用いられる。

現代で「戦車(Tank)」と称する場合は原則として主力戦車のみを指し、主力戦車でない戦車は設計されなくなっている。
かつて戦車が最も活用された第二次世界大戦期には軽戦車・中戦車・重戦車に分類されるように様々な戦車が存在していたが、その多くは発展的解消を遂げている。
かつての軽戦車は、アメリカのM551「シェリダン」*1湾岸戦争に投入されたのを最後に命脈が途絶え、現代では軍用自動車(小型の四輪駆動車やバギーなど)に重機関銃迫撃砲対戦車ミサイルなどを取り付けただけの安価な兵器に置き換えられている。
また、中戦車は歩兵戦闘車攻撃ヘリコプターへと継承され、純粋な意味での戦車としては役割を終えている。

現代の戦車は基本的に重戦車の後継であり、エンジンと材料工学が許す限り最高の装甲を備える事が大前提となっている*2
とはいえ、エンジン技術の進歩によって重戦車の「重い」という弱点の一部は克服されており、主力戦車はかつての重戦車に匹敵する車体重量を持ちつつ、かつての中戦車に匹敵する機動力を備えているのが常となっている。


*1 空挺部隊での使用を前提に設計されていたため「空挺戦車」と呼ばれていた。
*2 このような変遷は、成形炸薬弾の飛躍的進歩と爆発的普及に負う所が大きい。
  歩兵RPG1発で手軽に破壊できるようでは戦車戦術が崩壊するが、中戦車以下の装甲重量でRPGを防ぐのは物理的に困難である。


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