【用法適応翼】(ようほうてきおうよく)

mission adaptive wing (MAW)
航空機動翼で操縦するのではなく、翼断面形そのものを変形させて制御する翼のこと。

主翼キャンバーを変化させてフラップの代わりとしたり、翼をひねって補助翼の役割を果たしたり*1することが出来る。
動翼を使う場合に比べ、翼の表面が滑らかであるため抗力を大幅に低減でき、速度航続距離などの性能が大幅に向上するという。
また、翼面荷重を高くせずとも乱気流に強い機体を造れるとも言われる。
一方で柔軟さ、強靭さ、軽さ、製造や整備に関するコスト・パフォーマンスなどといった要件を満たすことが難しく、これまでのところ実用化はされていない。

米空軍が1980年代に提唱したAFTI計画の一環として、F-111に用法適応翼を装着した実験機『AFTI F-111 MAW』を製造し*2NASAと共同で飛行実験をしていたことがある。
これは従来の動翼と似た機構を持つ骨組みに、ガラス繊維製の外装を被せたものであるが、それでも機構や制御ソフトの開発に手間取ったと言われる。

また2000年にはF/A-18にAAWと呼ばれる主翼を装着したX-53が、同じく米空軍NASAボーイングの共同で試作されている。
このAAWは主翼を直接アクチュエーターで変形させるのではなく、小さな動翼を動かして抗力を受け、その抗力によって主翼をたわませるものであり、いわばエルロンリバーサルを積極的に利用したものである。


*1 初期の飛行機で見られた「たわみ翼」に似た原理だが、大型化した現代の機体で実現するには困難が伴う。
*2 主契約社はボーイングであった。

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