【民間軍事会社】(みんかんぐんじかいしゃ)

特定の国家・軍隊・組織・武装勢力などと契約を結び、人員やサービスを提供することで軍事的活動に参加する企業。
Private Military Company(PMC)、またはPrivate Military Firms(PMF)とも呼ばれている。
古代からある「傭兵」を現代化した組織ともいえるが、傭兵は国際的には非合法化されているため、表向きには「警備会社」や「人材派遣会社」などの合法企業に偽装していることが多い。

20世紀末の米ソ冷戦終結前後、全世界規模での軍縮や低強度紛争の頻発に伴って出現した、とされている。


旧来の「傭兵」は、その活動を戦場での戦闘行為にほぼ特化していたが、民間軍事会社では、「直接的な戦闘行為への従事」や「重要施設の警備」といった従来の傭兵業務の他、軍隊自らが行ってきた兵站業務(補給・輸送・兵器整備業務など)の請負、部隊指揮官に対する参謀業務*1、兵員の訓練請負など、幅広い分野での活動が見られる。


関連:エグゼクティヴ・アウトカムズ社

メリット・デメリット

  • 主なメリット
    • (常備軍を創設・養成・維持することに比して)トータルコストが低く済み、それでいて即応性・戦闘能力も高い。
    • 人的損害が出ても「公式の」戦死傷者にカウントされないため、国内世論の批判をかわしやすい。*2
  • 主なデメリット
    • ハーグ陸戦条約ジュネーブ条約などの戦時国際法に拘束されない非合法戦闘員とみなされる。
      • このため、戦争犯罪的行為を助長しやすい*3
      • 現地で死傷したり敵対勢力の捕虜になったりした社員が戦闘員としての保護を受けられない危険がある。*4
    • 社内での待遇問題や保障問題などでストライキを起こされたり、会社の判断で一方的に契約を破棄されるリスクがある。
    • 特殊部隊隊員やパイロットなど、軍が国防のために国費で養成した優秀な人材が、30代半ばの脂の乗り切った時期にそうした企業に引き抜かれてしまうことにより、(結果的に)訓練予算の浪費を招く。*5*6

*1 佐官・将官クラスの退役軍人を社員として派遣して行う。
*2 そのため、政治的・技術的な面から正規軍を投入することが難しいミッションにも投入しやすい
*3 正規兵だと軍法会議で処罰されるが、民間軍事会社の社員は処罰が軽くなってしまう。
*4 例えば戦闘中に孤立した等の場合、先進国の有する正規軍であれば、付加価値の低い兵士数名であっても空爆からヘリまで動員し、巨額の費用をかけて救出を試みる。
  しかしPMC社員の場合、やむを得ないと判断されたら置き去りになる可能性すらある。

*5 アメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」隊員の年収は5万ドル程度といわれているが、この部隊にいたという肩書があればイラクでは1日1,000ドルは稼げたともいう。
*6 硬直化・官僚化し、部隊の運用に無理解な上層部に愛想を尽かした現役軍人が、同様の経験をした退役軍人の経営するこうした企業に「転職」するケースもあるという。

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