【慣性航法装置】(かんせいこうほうそうち)

Inertial Navigation System. (INS)
航法支援装置のひとつ。物理学における「慣性の法則」を利用して現在位置を割り出すもの。
高精度のジャイロと加速度計で機体の加速度を感知し、それを2回積分して位置情報を算出する*1

外部との通信を必要としないため、長距離を航行する航空機の多くが採用する。*2
原理上、相対的な位置情報しか算出できないため、出発前に現在位置の情報を設定しておく必要がある。
ある程度以上の規模を持つ飛行場スポットには、INSを設定するための経度・緯度情報が掲示されている。

時間経過に応じて誤差が拡大するため、長時間の航行では他の航法装置による誤差修正を必要とする。
1983年に起きた「大韓航空007便撃墜事件」では、この誤差が事件の原因の一つと指摘された。

誘導爆弾ミサイルなどに用いられる事も多く、この場合は「慣性誘導装置」と呼ばれる。
主に長射程の弾道ミサイル対艦ミサイル中間誘導に用いられることが多い。


*1 同様の原理は、カーナビなど大型のGPS受信機にも自律位置推定の手段として採用されている。
  ただし慣性航法装置よりも精度が大幅に低いため、数分程度の自律位置推定で大きな誤差が発生する。

*2 数か月以上の長期間、海中で行動する原子力潜水艦にも採用されている。

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