Last-modified: 2017-06-08 (木) 18:14:38 (138d)

【炭疽菌】(たんそきん)

Bacillus anthracis.

炭疽症の原因となる細菌。
1850年に発見され、1876年に病原体であると断定された、科学史上初めて発見された病原微生物である。

バイオセーフティーレベル(BSL)レベル3病原体に分類され、研究施設での使用・保管状況が厳重に監視されている。

好気性のグラム陽性桿菌*1で、長さは4〜8μ、幅は1〜1.5μ。病原菌のうちでは最大の桿菌。
栄養枯渇・温度変化・毒物などに触れると耐久性の高い芽胞を形成し、乾燥状態でも10年以上生存する。
また、生体内で増殖すると細胞壁の外側に厚い莢膜(きょうまく)が形成されるため、加熱・日光・消毒剤などに強い抵抗性を示す。
汚染が確認された場合、焼却・塩素剤・ヨード剤などを使って徹底的な消毒を行わねばならない。

炭疽症

anthrax.
上記の炭疽菌によって引き起こされる感染症。

羊やヤギに感染し、接触や摂食を通じてヒトにも感染する人獣共通感染症。ヒトからヒトへの感染はしない。
20世紀前半では獣毛や皮革を扱う加工業者や、肥料用の輸入骨粉を用いた農業従事者に多く感染がみられた。
現在では対策が確立されているが、それでも獣医・食肉加工業者・酪農家などにまれに見られる。

感染経路によって症状が異なるため、三種類に分類される。

肺炭疽
炭疽菌が空気とともに肺に吸入された場合。
インフルエンザのような症状を呈し、高熱や咳・膿・血痰を出し呼吸困難に陥る。
未治療での致死率は90%以上。
皮膚炭疽
皮膚の傷口から感染した場合。1〜12日間の潜伏期間の後、にきびの様な丘疹があらわれ、水疱となり、黒色の潰瘍壊死にいたる。
未治療での致死率は20%以上。
腸炭疽
炭疽菌を摂食した場合。1〜7日間の潜伏期間の後、吐血や下痢を伴う腹痛がおき、その後発熱や敗血症の症状が表れる。
未治療での致死率は25%〜60%。

生物兵器への転用

炭疽菌は短期間で致命的な症状を及ぼし、しかもヒトからヒトには感染しない。
これは生物兵器として理想的な特性とされ、軍事利用のための研究にも多く供された。

しかし、乾燥状態で10年生存し得るという特性が知られた事により、この研究は頓挫した。
散布後に半永久的な土壌汚染が発生するため、使用後に現地に移入する事がきわめて困難なのである。

しかし、1990年代以降、テロリズムとして散布される可能性が浮上した事で再び軍事研究対象となっている。

1993年には日本でオウム真理教が組織的に炭疽菌を培養して生物テロを行っている。
取り扱いを誤って菌を死滅させたために被害は異臭騒ぎのみに留まったが、これが災いして1995年の教団強制捜査までこの事件は発覚しなかった。

2001年にはアメリカの要人たちに対して炭疽菌入りの封筒が郵便で送りつけられる生物テロ事件が発生。死者・負傷者を出して大騒動になった。
事件発生が9.11事件の7日後であったため、アルカイーダの第二波攻撃だと決めつけられ、この先入観によってさらなる混乱が発生している。
なお、最終的にはアメリカ国内の炭疽菌研究者による単独犯であったと結論づけられたが、被疑者が自殺したため真相は必ずしも定かでない。


*1 球菌やらせん菌と対比して使われる細菌学用語で、棒状または円筒形の細菌をいう。

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