Last-modified: 2021-09-18 (土) 20:08:58 (951d)
【バイオハザード】 †
bio hazard.
有害な生物によって引き起こされる災害。「生物災害」「疫禍」とも。
典型的にはウィルスや細菌などの病原体が繁殖して疫病を引き起こす事を指す。
人類にとって最も恐るべき災害であり、また実際に人類史上最も多くの死者を出した災害である。
例えば、14世紀にはペストの大流行により推定8,500万人前後の死者が発生したとされる。
医療が飛躍的な発展を遂げた現代でも、バイオハザードを抑制する防疫体制はそれほど劇的には進歩していない。
科学的手法で感染経路の特定や病原体の除染が可能になった一方、人口増加と生還率の向上が大規模な感染拡大を招いてもいる。
また、産業革命以降は交通機関によって病原体・感染者も高速移動するようになり、疫禍の規模は急速に拡大するようになった。
病状の重篤さに差異こそあれ、20世紀以降もほぼ毎世代ごとに国家規模・世界的規模のバイオハザードが発生しているのが実情である。
リスクグループとバイオセーフティ †
世界保健機構(WHO)では、バイオハザードのリスクとその対策となる安全管理基準をそれぞれ以下の4段階に分類している。
リスクグループ †
リスク群1 | ヒトや動物に疾患を起こす可能性はなく、社会的リスクは皆無か微少。 大腸菌など。 |
リスク群2 | 疾患を起こす可能性があるが、通常の環境で重篤な災害に発展する可能性はない。 一般に病原体として知られる細菌・ウィルス・カビ・寄生虫のほとんどが該当する。 |
リスク群3 | 重篤な疾患を生じるが、対処法が確立されていて、通常の環境で爆発的な感染拡大は起こらない。 COVID-19、HIV、狂犬病、炭疽菌、結核など。 |
リスク群4 | 重篤な疾患を生じ、有効な予防・治療策がなく、容易に伝播・感染する。 エボラ出血熱、天然痘、マールブルグ熱、黄熱病など。 |
バイオセーフティ †
レベル1 | リスク群1を扱う。施設内での飲食禁止。未成年者は立入禁止。 |
レベル2 | リスク群2を扱う。バイオハザード警告マークを表示し、滅菌設備を設置。部外者立入禁止。 |
レベル3 | リスク群3を扱う。厳重に気密封鎖・隔離され、全ての排気はフィルターで濾過される。 室内は空調によって陰圧(人工的な低気圧)を保ち、気密が破られた時に気流が内側に向かうように調節される。 |
レベル4 | リスク群4を扱う。出入りする物資全てが滅菌され、作業員は完全気密の防護服を着用する。 高度な科学技術と相応の建造費・維持費を要し、極大の潜在的危険性も伴うため、設営には国家的な支援体制を必要とする。 リスク群4の病原体が感染拡大を起こした場合でも、臨床の現場でレベル4バイオセーフティを構築するのは非現実的。 |
高レベルのバイオセーフティは以前のレベルでの条件を完全に満たしている事が前提条件となる。
「完全気密の防護服を着ているからレベル4施設内でも飲食できる」などという事はあり得ない。