Last-modified: 2015-12-31 (木) 11:01:50 (572d)

【散兵戦】(さんぺいせん)

兵を、少人数を基本単位とする多くの分隊に分けて個別に行動させる戦術
ヒットアンドアウェイもしくは浸透を企図する場合に適する。

個々の分隊は少人数であるため各個撃破されやすいが、他の分隊が相互に囮として機能する。
これによって流れ弾で死傷する可能性が激減し、最終的に多くの人員を生存させる事ができる。

反面、自軍の戦力を分散させる事になるため、戦線が膠着状態に陥った場合は明白に不利となる。
奇襲後に撤退できる場合はまだしも、正面から戦う場合はより多くの火力を集結させた側が勝つのが道理である。
その場に関与できない兵士の火力は機能しないので、大規模な強襲を受ければ各個に撃破され戦線を崩壊させやすい*1

また、作戦責任者からの指揮統制が徹底できない関係上、戦況が不利な場合に士気を保つのが難しい。
そもそも「不利を悟って勝手に撤退敵前逃亡する分隊」の存在を許容しなければ生存性という有利は保てない。
このため、斥候・先遣隊・要塞など、部隊単位で勝手に行動する事を半ば前提とする部隊は散兵戦に特に適する。

人類史全体を通じて、戦争そのものを決着させるための主力部隊が散兵戦を展開した事例はほとんど見られない。
数人の暴漢が一人を囲んで棒で叩く事から、現代の飽和攻撃に至るまで、戦術の基本は十分な戦力を集結させる事である。
散兵戦は防御に際して敵の戦力を集中させないための戦術であり、防御の後には戦力を集中させて反攻に出なければならない。
よって普通、散兵戦は主力が強襲の好機を得るまでの前哨戦として、または強襲の途中で好機を作るための囮として実施される。

近年では、(機甲部隊などの)正面戦力で劣る勢力が、小規模な兵力によるアンブッシュ前提の散兵戦(ゲリラ戦)を常套戦術とする事が多い。
大国であっても遭遇戦などで増援部隊との集結が不可能な状況に置かれた時にはゲリラ戦を余儀なくされる。

「散兵戦」の範囲と解釈

上記の解説に際して「集結」「分散」という言葉を用いたが、この二つの単語の戦術的な定義は時代を経るごとに変化する。

古代の戦争で、司令官から数km離れた場所に配置されていたなら、その部隊は間違いなく「分散」していると解釈してよい。
しかし、現代の戦闘機ウィングマンと数kmの距離を置いている状態は「集結」と表現して差し支えない。
歩兵に関しても、無線で連絡を取り合いながら同一の軍事目標を目指して進軍する状態は「集結」と表現できる。

特に第二次世界大戦以降、戦力の「集結」「分散」の概念は曖昧模糊として捉えがたいものとなっている。
(車両や航空機の発達などにより)機動力C3Iが加速し、アウトレンジ攻撃が常態化したため、全ての兵科が状況に応じて散兵戦を展開し、あるいは集結する事を求められるためである。

戦力の集結・分散そのものは容易になった反面、短時間の状況把握は極めて困難になっている。
戦力が集結しているか分散しているかの判断は現代でも指揮官・参謀の主観に負う所が多く、その判断はしばしば誤ったものとなる。


*1 撤退が避けられない場合でも戦力を温存させやすいが、敗走によって兵站士気に再起不能な損害を受けないという保証はない。

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