Last-modified: 2023-07-07 (金) 19:29:34 (77d)
【DB 601】 †
Daimler-Benz DB 601.
ドイツのダイムラー・ベンツで開発、製造された航空機用液冷V型12気筒エンジン。
本項では、イタリアのR.A.1000 RC.41、日本のハ40、アツタについても解説する。
第二次世界大戦期のドイツ空軍主力戦闘機であるBf109に搭載されたことで有名。
また、ドイツの同盟国であったイタリアではR.A.1000 RC.41として、日本ではハ40、アツタとしてライセンス生産され、両国の航空機に搭載された。
ダイムラー・ベンツ DB600を原型に開発されたエンジンで、良質な燃料を得られないドイツの国情に配慮された設計ながらも、燃料直接噴射ポンプ、フルカン式継手を用いた過給器など、非常に高度かつ複雑な機構を数多く取り入れた構造は、Bf109が大戦序盤に連合軍機に対してアドバンテージを得られたことに大きく貢献した。
また、本エンジンの発展型として引き続きBf109に搭載されたDB605、Do217?やTa152に搭載されたDB603がある。
しかし、大戦序盤のドイツ空軍におけるDB601搭載機の活躍は、ドイツがこのエンジンを生産、運用するのに必要な技術力を持っていたためであった。
実際に、日本における本エンジンのライセンス生産及び運用は技術力の不足により大きな困難を伴っている。
主な搭載機 †
- DB601系統
- メッサーシュミット Bf109E/F/T
- メッサーシュミット Bf110C/D/E/F
- ドルニエ Do215
- ハインケル He100
- ヘンシェル Hs130
- メッサーシュミット Me210
- サヴォイア・マルケッティ SM.88
- CANSA FC.20
- 川崎 キ60
- 航研/川崎 キ78「研三」
- DB606系統
- ハインケル He119
- ハインケル He177
- ユンカース Ju288
- メッサーシュミット Me261
- R.A.1000 RC.41
- マッキ M.C.202「フォルゴーレ」
- レッジャーネ Re.2001「アリエテ」
- ハ40系統
- ハ201
- 川崎 キ64
- 川崎 キ64
- アツタ系統
性能諸元 †
DB601 | |
タイプ | 液冷倒立V型12気筒 |
ボア×ストローク | 150mm×160mm |
排気量 | 33,929㎤ |
全長 | 1,722mm |
全幅 | 705mm |
乾燥重量 | 610kg |
燃料供給方式 | 直接噴射式 |
過給器 | 遠心式スーパーチャージャー1段1速(DB601A) 遠心式スーパーチャージャー1段流体継手式無段階変速(DB601N) |
加圧冷却方式 | ウォータージャケット内で3.8気圧に加圧 (寒冷期は水とエチレングリコール液を50:50で混合したものを使用) |
離昇出力 | 1,050PS/2,450rpm(DB601A) 1,175PS/2,600rpm(DB601N) |
高度出力 | DB601A: 1,100PS/2,400rpm(高度3,700m) 960PS/2,400rpm(高度5,000m) DB601N: 1,050PS/2,400rpm(高度4,800m) |
川崎航空機 ハ40・ハ140・ハ201 | |
タイプ | 液冷倒立V型12気筒 液冷倒立V型12気筒、2基を串型連結延長軸駆動(ハ201) |
ボア×ストローク | 150mm×160mm |
排気量 | 33.9L 33.9L×2(ハ201) |
全長 | 1,948mm(ハ40) 2,008mm(ハ140) |
全幅 | 739mm |
乾燥重量 | 640kg(ハ40) 730kg(ハ140) |
燃料供給方式 | 直接噴射式 |
過給器 | 遠心式スーパーチャージャー1段流体継手式無段階変速 |
離昇出力 | 1,175馬力/2,500rpm/+305mm/Hg(ハ40) 1,500馬力/2,750rpm/+280mm/Hg(ハ140) 2,350馬力/2,500rpm(ハ201) |
公称出力 | 1,100馬力/2,400rpm(高度4,200m)(ハ40) 1,250馬力/2,650rpm(高度5,700m)(ハ140) 2,200馬力/2,400rpm(高度3,900m)(ハ201) |
愛知航空機 アツタ | |
タイプ | 液冷倒立V型12気筒 |
ボア×ストローク | 150mm×160mm |
排気量 | 33.93L |
全長 | 2,097mm |
全幅 | 712mm |
乾燥重量 | 655kg(アツタ21型(AE1A)) 722kg(アツタ32型(AE1P)) |
燃料供給方式 | 直接噴射式 |
過給器 | 遠心式軸駆動式1段流体継手無段階変速 |
離昇出力 | 1,200hp/2,500rpm(アツタ21型(AE1A)) 1,400hp/2,800rpm(アツタ32型(AE1P)) |
公称出力 | アツタ21型(AE1A) 一速全開:1,010馬力/2,400rpm(高度1,500m) 二速全開:970馬力/2,400rpm(高度4,500m) アツタ32型(AE1P) 一速全開:1,310馬力/2,600rpm(高度2,000m) 二速全開:1,300馬力/2,600rpm(高度5,000m) |
派生型 †
- ダイムラー・ベンツ
- DB601A-1:
離昇1,100PS/2,400rpm
- DB601Aa:
離昇1,175PS/2,500rpm
- DB601B-1/Ba:
601A-1/Aaと同等の性能ながら、ギア比を重戦闘機や爆撃機向けに変更したもの。
- DB601N:
離昇1,175PS/2,600rpm
- DB601P:
601Nと同等の性能ながら、ギア比を重戦闘機や爆撃機向けに変更したもの。
- DB601E:
離昇1,350PS/2,700rpm
- DB601F/G:
601Eと同等の性能ながら、ギア比を重戦闘機や爆撃機向けに変更したもの。
- DB606A/B:
2基の601Fもしくは601Gを組み合わせて1本のプロペラシャフトを回転させる串型エンジン。
離昇2,700PS/2,700rpm
- DB601A-1:
- アルファロメオ
- R.A.1000 R.C.41-I :
DB 601 Aaのライセンス生産型。
離昇1,175PS/2,500rpm
- R.A.1000 R.C.41-I :
- 川崎航空機製
ハ40系統のライセンス契約は川崎航空機が陸軍主導で行った。
かつて九五式戦闘機などが搭載したドイツ製液冷エンジンのライセンス生産を行っていた川崎だったが、日本の工作機械以上の優れた精度の求められるDB601のそれは非常に困難を極めた。- ハ40:
DB601Aaのライセンス生産型。
生産性や技術力、資源や燃料噴射装置の特許などの関係で一部箇所に改設計が実施されている。
離昇1,175PS/2,500rpm
- ハ140 :
独自発展型。
高圧縮比化・高回転化し、ノッキング対策に水メタノール噴射装置を装備した。
離昇1,500PS/2,750rpm
- ハ201 :
独自発展型。
川崎の試作重戦闘機キ64の搭載エンジンとして開発された、2基のハ40を組み合わせて1本のプロペラシャフトを回転させる串型エンジン。
延長軸駆動。
離昇2,350PS/2,500rpm
- DB601改 :
航研の高速研究機キ78「研三」搭載エンジンとして輸入されたDB601Aaを改造、最大出力1,550PSまで強化した型。
- ハ40:
- 愛知時計電機→愛知航空機製
アツタ系統のライセンス契約は愛知時計電機→愛知航空機が海軍主導で行った。
既に系列エンジンのDB600?をアツタ一一型として生産していた愛知のライセンス生産品やその改良型は、川崎のそれに比べて不具合発生の割合が少なかったとされる。- アツタ二一型(AE1A):
DB601Aaのライセンス生産型。ハ40同様、多少の改設計が行われている。
離昇1,200PS/2,500rpm
- アツタ三二型(AE1P):
独自発展型。高回転数化し馬力を向上させた。
離昇1,400PS/2,800rpm
- アツタ二一型(AE1A):