Last-modified: 2016-07-23 (土) 18:37:35 (423d)

【敗北主義】(はいぼくしゅぎ)

defeatism.

失敗や敗北が不可避であるという前提で行動し、勝利や成功のための努力を放棄する事。

一般に侮蔑表現であるとされるが、現実的には必ずしも悪いものではない。
敗北を避け得ない状況、敗北主義的な行動が最適解となる状況は間違いなく存在する。
失敗する目的を放棄して新しい目的を考案するまでの過渡期には、敗北主義は有益である。
そしてまた、敗北を避けるために競争を回避するのは人間社会における不可避の前提である。

犯罪を行えば警察に敗北するのは明白だから真面目に働こう、というわけだ。

ただし、紛争の当事者が敗北主義に基づいて行動する事は普通許されない。
平時においても、敗北主義的な傾向を見せた兵士は散々に罵倒され、「矯正」されるのが常である。
何故なら、戦場において敗北主義者が採るべき最善の行動方針は、即ち敵前逃亡であるからだ。

また、敗者が辿る事になる運命を考えれば自明の通り、軍事においては敗北する事自体が許されない。
軍隊はすべからく同胞に対する義務を果たすため、勝利を企図し、そのために最大限の努力を行わねばならない。
よって、敗北主義は義務の放棄であり、反逆である。

とはいえ、全国民に戦争を遂行するための義務を要求する場合には問題の性質が異なってくる。
政体がどうあれ、現実問題として個々の国民において選択の余地はわずかで、社会は個人の意に反する。
意に反する事態に際しては士気を鼓舞するにも限界があり、どのような国家でも戦時には敗北主義が蔓延する。

テロリズムと敗北主義

一方で、敗北主義が一般に侮蔑とみなされる理由はもう一つある。
反政府テロリストは、国家を敗北させる事を意図したデマとして敗北主義を唱える可能性があるからだ。

仮想敵国に敗北主義が蔓延し、国家を守る努力を怠るようになるのは有益な事だ。
反戦運動や政府批判が第五列浸透を受け、不条理な敗北主義へと堕落していった例は枚挙に暇がない。
敗北主義はしばしば「売国奴」「利敵行為」「裏切り者」などの同義語として扱われ、それには相応の根拠がある。

とはいえ、敗北主義とは逆の方向に傾くのもそれはそれで問題がある。
国粋主義や全体主義においては、平和運動や政治批判が十把一絡げに「敗北主義者」として弾圧される。
また根本的に、敗北主義の否定は「勝利を求める事のリスク」の否定であるので、勝つためなら全てが許される風潮に繋がる。
そうした思想が先鋭化していけば、行き着く果てにあるのは極度のテロリズム・恐怖政治・大虐殺に他ならない。


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