【P-39】(ぴーさんじゅうきゅう) †

Bell P-39 Airacobra(エアラコブラ)*1.

ベル・エアクラフトが開発し、第二次世界大戦中のアメリカ陸軍航空隊、ソ連空軍などで運用された単発レシプロ戦闘機。

1936年の高高度迎撃機計画に基づいて制作された「XP-39」試作機は1939年4月に初飛行した。
本機には、操縦席の横開きドア、重心を安定させる胴体中央に搭載されたエンジン、軸内装備の37mm機関砲、前輪など、奇抜かつ革新的な設計が多く取り入れられていていた。
エンジンはターボチャージャー付きのアリソンV-1710で、優れた高高度性能を発揮、飛行性能全般も良好であったため「P-39」として米陸軍航空隊に採用された。
しかし、量産段階に至る前段階のYP-39からターボチャージャーは一段一速スーパーチャージャーへ変更されることとなり、高高度性能は著しく低下した。
さらに、生産途中で防弾装備の増設、武装強化などで重量が増加したため、試作機時代の飛行性能は失われた。

P-39は太平洋戦争中、主に南太平洋で運用され、特にガダルカナル島のヘンダーソン飛行場「カクタス空軍*2」では主力戦闘機のひとつとして零式艦上戦闘機や一式陸上攻撃機と交戦した。
日本軍のパイロットからは、その形状より「カツオブシ」と呼ばれた。
軽量、運動性に優れる零戦に対してP-39は苦戦を強いられ、多くが撃墜されたが、充実した防弾装備から被撃墜後も一命を取り留めたパイロットも少なくなかった。

P-39やその派生型であるP-400の飛行性能は相対する敵機にほとんどの点で劣り、前線のパイロットにとっても期待はずれなものであった。
そして、P-400についてこのようなジョークが生まれた。
「なぜP-400っていう名前なんだい？」
「ケツにゼロが喰いついたP-40だからさ！」

一方、レンド・リース政策に基づいて1942年5月からソ連軍に送られ、同空軍で運用された機体は現地で高評価を受けた。

第二次世界大戦における東部戦線、通称「独ソ戦」開戦時にドイツ軍による奇襲を受けて大きな損害を出し、未だ戦力を十分に回復できないソ連空軍にとって数、質を伴って届いたP-39は重要な航空戦力であった。
また、本機の基本的な武装形態である37mm機関砲の軸内装備は敵機に肉薄、狙いを定めて一斉射するソ連空軍パイロットの基本戦法に合致していた。
さらに、低高度戦闘を主体とした独ソ戦における航空戦は、高高度性能の低いエンジンを搭載するP-39にとっては最高の戦闘条件であった。
結果、本機に搭乗したエースパイロットが多数誕生した。

その後、ソビエト空軍には多くの国産新型機が配備され、P-39は性能的に旧式化した。
それでも本機に搭乗し続けたパイロットは多く、東部戦線の終結まで運用は継続された。

P-39を気に入ったあるソ連空軍パイロットは、本機を「ベルリンまで乗り続ける」と宣言したという。

最終的に9,588機が生産され、うち4,733機はソ連で運用された。
また、本機の発展型として、P-63が存在する。

戦後の1951年、イタリアでの運用終了を以って本機は完全に退役した。

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スペックデータ †

型式XP-39P-39C
乗員1名
全長9.07m
全高3.61m
全幅10.36m
翼面積19.87��19.79��
空虚重量2,055kg2,309kg
全備重量2,646kg3,209kg
最大離陸重量-3,311kg
エンジンアリソン V-1710-17(E2)
液冷V型12気筒		アリソン V-1710-35(E4)
出力1,150hp/858kW（高度7,619m）1,150hp/858kW（高度3,657m）
緊急出力：1,490hp/1,111kW（高度1,311m）
最高速度628km/h（高度6,096m）610km/h（高度4,907m）
上昇性能-3,048mまで2分42秒
（18.8m/s）
翼面荷重133kg/��162kg/��
馬力荷重
(通常出力)		324W/kg267W/kg
実用上昇限度9,753m10,119m
航続距離628km1,111km（最大）
武装なし軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
翼内:ブローニングM1919 7.62mm機銃×2挺
装弾数CERNTER:なし軸内：15発
胴体：各200発
各500発
爆装なし114kg/227kg爆弾×1発


型式P-39DP-39N
乗員1名
全長9.19m
全高3.61m3.78m
全幅10.36m
翼面積19.79��
空虚重量2,477kg2,566kg
全備重量3,402kg3,347kg
最大離陸重量3,720kg3,765kg
エンジンアリソン V-1710-35(E4)アリソン V-1710-85(E4)
出力1,150hp/858kW（高度3,657m）
緊急出力1,490hp/1,111kW（高度1,311m）		1,200hp/895kW（海面高度）
緊急出力1,420hp/1,059kW（高度2,743m）
最高速度592km/h（高度3,658m）642km/h（高度2,956m）
上昇性能3,048mまで3分41秒
（13.8m/s）		4,571mまで3分49秒
（20m/s）
翼面荷重173kg/��169kg/��
馬力荷重
（通常出力）		252W/kg267W/kg
実用上昇限度9,784m11,665m
航続距離966km/1,770km（最大）483km/最大1,569km
武装軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
翼内:ブローニングM1919 7.62mm機銃×4挺		軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
翼内:ブローニングAN/M2 7.62mm機銃×4挺
装弾数軸内：15発
胴体：各200発
翼内：各500発		軸内：30発
胴体：各200発
翼内：各500発
爆装114kg/227kg爆弾×1発胴体:114kg/227kg爆弾×1発
翼下:114kg/227kg爆弾×2発


P-39Q
乗員1名
全長9.19m
全高3.78m
翼幅10.36m
翼面積19.8��
空虚重量2,956kg
全備重量3,434kg
最大離陸重量3,810kg
エンジンアリソン V-1710-85(E4) 液冷V型12気筒×1基
出力1,200hp/890kW（高度2,743m）（緊急出力）
プロペラ3枚翅定速プロペラ
最高速度626km/h
失速速度153km/h（パワーオフ、フラップ・ギア?ダウン）
超過禁止速度845km/h
航続距離845km（機体内燃料のみ）
上昇限度11,000m
上昇性能高度4,600mまで4分30秒（時速260km/h時）
（19.33m/s（高度2,300m、緊急出力））
翼面荷重169kg/��
パワー/マス0.26kW/kg
武装軸内:M4 37mm機関砲×1門
胴体:ブローニングM2 12.7mm機銃×2挺
翼内:ブローニングAN/M2 7.62mm機銃×4挺
装弾数軸内：30発、胴体内：各200発、翼内：各300発
爆装翼下と胴体下に最大500lb（230kg）の爆弾を搭載可能


*1 空飛ぶコブラの意。
*2 Cactus Air Force:「サボテン空軍」の意で、進撃する日本軍に痛撃を与えるため、陸海軍、海兵隊の航空戦力を結集したもの。

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