【L-1011】(えるてんいれぶん)

Lockheed L-1011 Tristar(トライスター).

アメリカのロッキード(現ロッキード・マーティン)社が1960年代〜1980年代に開発・生産した、ワイドボディの3発ジェット旅客機
ロッキード社が初めて開発・生産したジェット旅客機でもあった*1

関連:DC-10 全日本空輸

開発の経緯

本機の開発が始まった当時、ロッキードではアメリカ空軍からC-5「ギャラクシー」C-141「スターリフター」戦略輸送機の受注を獲得するなど、生産・販売の中心は軍用機に移っていた。
その一方で、プロペラ機時代はダグラスと競争を繰り広げた民間機分野については「ジェットは時期尚早」としてターボプロップ機・L-188「エレクトラ」を販売していたが、同機の売れ行きは芳しくなく*2、民間機分野ではボーイングダグラスに後れを取りつつあった。

そのような経緯から開発の始まった本機は当初、アメリカ国内線向けの200〜250席クラスの双発旅客機として構想された。
しかし、当時のエンジンの信頼性などから双発ではロッキー山脈越えや洋上飛行への対応ができない、として、3発機として設計・開発されることになった*3

こうして生まれた本機は、「回路表示が先進化され解りやすい」と好評を博したコックピットのスイッチ群やエレベーターを備えた中二階構造の客室、軍用機譲りの自動操縦装置など、プロペラ機時代に培われた技術をふんだんに盛り込んだ機体となった。
しかし、エンジンの設計遅れやメーカーの経営危機による量産遅延、販売網の貧弱さなどから、ライバルのDC-10に比べて受注が伸びず、1981年に250機で生産を終了。
これにより、ロッキードは民間機市場から撤退することになった。

日本では全日本空輸が1974年から導入し*4、21機を運用していたが、1995年までに全機退役している*5


*1 同時に2016年現在、ロッキード・マーティンの製品としては最後の民間向け航空機でもある。
*2 そのL-188を軍用機化したのが、旧西側諸国を代表する(対潜)哨戒機となったP-3「オライオン」である。
*3 これは同じ形態のDC-10よりも早く、同機の2ヶ月前に受注体制を整えている。
*4 この導入に際し、当時の日本政府首脳などに対する贈賄事件「ロッキード事件」が発生している。
*5 同社では初となる「(有償飛行における)事故・大破による機体の全損及び死傷者ゼロ」という記録を打ち立てた機体でもある。

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