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【03式地対空誘導弾】 †
陸上自衛隊で1960年代から使用されてきた、アメリカ製の中距離地対空ミサイル・MIM-23「ホーク」の後継として開発された国産の地対空ミサイル。
通称「中SAM」。
2009年現在、世界最新鋭の地対空ミサイルでもある。
自衛隊では、それまでホークに改良を加えて能力向上を図ってきたが、原設計が1950年代のミサイルであったことから、1990年代にはとうとうそれにも限界が見えてきた。
この状況は西側諸国でも同様であったことから、NATO参加諸国はパトリオットの後継として「MEADS?*1」という新型ミサイルの共同開発に着手することになり、日本にもプロジェクトへの参加が呼びかけられた。*2
しかし、開発当時の日本政府は「兵器の国際開発も武器輸出三原則等に抵触する*3」としてプロジェクトへの不参加を決定し、その結果、ホークの代替となる次世代対空ミサイルがなくなってしまったため、日本独自に開発することとなった。
1996年からミサイルの開発が始まり、発射器、管制装置、通信機器など6つのフェーズに渡って開発が進められ、2003年に制式化された。
開発に当たっては、以下のような点が考慮された。
システムは、発射器、レーダー装置、射撃管制装置、対空戦闘指揮装置に分けられ、それぞれが自走可能となっていることで、従来のホークに比べて展開・撤収に要する時間が短縮され、また対レーダーミサイルから守るためのデコイシステムもあると言われており、生残性が向上した。
レーダーはアクティブ・フェイズドアレイで、捜索・追尾・誘導をこれひとつでこなすことができ、他のレーダーやシステムと情報を相互に授受することによって、広範囲かつ対妨害性に優れた性能を有している。
また、ECCM能力や見通し外射撃能力、同時多目標対処能力などが向上し、空対地ミサイルや巡航ミサイルへの対処能力も有するとされている。
将来的には、現在開発中の対空戦闘指揮統制システムや、航空自衛隊が擁するE-767AWACS等とのデータリンクによる戦闘能力向上も考慮されている。
発射器は8輪大型車輌(重装輪回収車と車体部分が共通)に搭載した6連装のキャニスター式となっており、整備性、補給性共に向上した。
射撃時にはこれを垂直に立てるようになっており、車両を停めるスペースさえあれば市街地や森林などでも射撃することが可能となっている。
対空戦闘指揮装置は73式大型トラック、幹線無線伝送装置、幹線無線中継装置及び射撃管制装置は高機動車に搭載された状態で運用され、小回りが利くとされている。
2009年現在、開発実験団の装備実験隊(実用試験用)・高射教導隊(教育訓練用として保有)・第2高射特科群(3個中隊)・第8高射特科群に配備されている。
しかし、21世紀以降の急速な財政悪化による防衛予算の削減で遅々として配備が進まず、改良ホークからの更新が進んでいない。
そのため、2010年度(平成22年度)から2016年度(平成28年度)までに取得コストを抑制しながら、巡航ミサイル(低空目標)や空対地ミサイル(高速目標)への対処能力の向上させ、ネットワーク交戦能力の向上により防衛範囲を拡大させた「03式中距離地対空誘導弾(改)」を開発することが決定している。
スペックデータ †
全長:約4.9m
直径:約0.32m
重量:約570kg
弾頭重量:約73kg
射程:50km以上
誘導方式:アクティブレーダー誘導
価格:約470億円(1セット(1個群))
車輌構成:
・対空戦闘指揮装置(73式大型トラックに搭載)
・幹線無線伝送装置・幹線無線中継装置・射撃管制装置(高機動車に搭載)
・捜索・射撃用レーダー装置・発射機・運搬装填装置・レーダー信号処理兼電源車(専用車両に搭載)
*1 Medium Extended Air Defense System:中距離拡大防空システム
*2 アメリカ・ドイツ・フランス・イタリアが参加したが、フランスは後にプロジェクトから脱退。
*3 その後、2011年12月の閣議決定で「国際共同開発プロジェクトへの参加」が除外されることになった。