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【陸上総隊】 †
2013年に施行された防衛大綱において、陸上自衛隊に創設される予定の部隊。
嘗ての警察予備隊における「総隊総監部」やアメリカ陸軍における「陸軍総軍(Forces Command)」に相当し、列国の陸軍では「総軍」に相当するものとみなされる。
現在出ている案によれば、本隊は従来の方面隊の上部組織となり、全国の実施部隊を一元的に運用する高級司令部となる。
また、海上自衛隊の「自衛艦隊」、および航空自衛隊の「航空総隊」とのカウンターパートの役割も担うとされている。
司令部は現在の中央即応集団司令部を改編して数百人規模とするものとし、2017年度に朝霞駐屯地に置かれ、隷下の部隊*1は陸上総隊の直轄となる予定である。
総隊司令官の地位は、陸上幕僚長に次ぐものとされ、(大将相当官である)陸将(甲)を充てるものと思われる*2。
経緯 †
現在の陸上自衛隊の態勢では、最大の部隊単位が5つの方面隊であり、5人の方面総監が並列に存在し、全国の作戦部隊を統括指揮する組織がなかった。
このため、有事の際には統合幕僚監部が各方面隊に個別に命令を下すことになるが、現在の態勢では方面隊ごとに調整する必要があり、非効率との指摘が以前からあった。
なお、海上自衛隊では、(外洋作戦部隊である)自衛艦隊司令官と5人の地方総監が同格として存在し、陸自と同様、全国の作戦部隊を統括指揮する組織はない。
一方、航空自衛隊では航空総隊司令官が航空方面隊をはじめとする全国の作戦部隊を統括指揮する態勢が整えられている。
こうしたことから、21世紀に入って「陸自の全作戦部隊を統括指揮する組織」の設置が検討されるようになり、2009年には防衛大綱の組織改編案にて「陸上総隊」の創設が明記された。
この時の案では従来の東部方面隊と中央即応集団を廃し、東部方面隊隷下の第1師団を「首都防衛集団」に再編し、第12旅団を東北方面隊の隷下に移すなどの案が挙げられていたが、様々な問題が指摘されたため棚上げとなった。
当初は、すべての方面隊を廃止する案*3もあったが、現実問題として、中間司令部の廃止は指揮すべき単位の増加を招くため(八つ、多くても十個が限界)*4廃案になったものと思われる。
その後、2013年に定められた新たな防衛大綱に基づく「中期防衛力整備計画」において、改めて陸上総隊の創設が案として盛り込まれている。
但し、この案においても「方面隊など、隷下部隊のスクラップアンドビルドがなされておらず*5、第1空挺団のような今後優先度が低下する部隊も残るため、屋上屋を重ねる結果となる」という懸念が指摘されている。
「隷下部隊が現状維持のままでは兵站のさらなる弱体化を招く」という深刻な問題を抱えるといわれている。
また、音楽隊の多さ*8もそれに拍車をかけているとの声もある。
*1 第1空挺団・第1ヘリコプター団・中央即応連隊など。
*2 就任資格者を方面総監経験者に限り、また当初その地位は陸上幕僚長と同格としたいという意向があった、とされるため。
*3 なお一説によると、方面総監部を師団司令部へ改編する動きもあったというが、この案には、将官ポストの削減に繋がるのを嫌った現場サイドの抵抗が根強かったともいわれている。(これは組織防衛とも見て取れ、由々しき問題と言える)
*4 余談ながら、かつてアメリカ陸軍で採用され、現在の陸自の師団編成のモデルとなっているペントミック編制でも同様の問題が指摘され、アメリカ陸軍では最終的に廃止されている。
*5 方面隊を存続させるにしても、3個程度に整理して師団*6や旅団を整理統合するか、5個方面隊体制を維持するにしても、全師団を旅団に再編*7する必要が生じるという。
*6 その際には、せめて他国と同様「2個旅団以上を隷下に置き、実兵力1万人規模」に再編(部隊数が6個程度に減少するのはやむをえないが)する必要があるといわれている。
*7 そもそも現在の陸自の「師団」にしても、実兵力は他国での「混成旅団」規模である。
*8 海自・空自は大臣直轄部隊1個と各地方組織ごとに1部隊づつあり、それぞれ6個/5個隊なのに対し、陸自の音楽隊は大臣直轄・方面総監隷下部隊に加えて、各戦闘部隊(師団・旅団)や富士教導団隷下にも編成されており、合計22個隊もある。