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【用途廃棄】 †
職務上の用途に適さなくなった物資を処分する事。略して「用廃」。
損傷・故障したか、その恐れがあるほど老朽化した(運用寿命を越えた)場合に行われる。
また、物資自体には問題がなくとも運用環境の変化により、利用価値を失って用途廃棄される場合もある。
基本的にはゴミ・産業廃棄物として廃棄されるが、別用途で再利用される事もある。
関連:原子力艦再利用プログラム モスボール ボーンヤード
軍隊における再利用例 †
軍隊において、用途廃棄となった物資の再利用例として、いくつかの例を挙げる。
- 共食い整備
- 分解した上で、部品を取り出して補修用の資材に転用する。
補給の停滞、予算の不足、生産終了などの理由で正規の交換部品が手に入らない場合に必要となる。
摩耗・損壊した不良部品が混入して事故要因となるため、補給が潤沢であれば通常行われない。 - 兵士のレクリエーション用具
- 破損した消耗品は、兵士のレクリエーション用具に再利用される事がある。
例えば、廃棄処分となったモップの柄がイベント用の装飾バイクの材料に利用された例など*1。 - 他国軍隊への売却
- 運用寿命に達する前に用途廃棄として除籍された兵器は、他国の軍に売却される事がある。
兵器は予備役として保管しておくだけでもコストがかかるため、過剰な備蓄については処分が必要とされる。
これが最も起こりやすいのは終戦時で、戦時の損耗に備えた兵器増産はしばしば過剰な備蓄となって戦後に残る。
また、外交上・経済上の理由で軍縮が生じた場合や、後継機種が登場して兵器の世代交代が生じた場合にも除籍が必要となる。 - 標的
- 旧式化して用途廃棄となった戦闘車輌・艦艇・航空機は、訓練・演習・実験用の標的として利用される事がある。
これは通常、カメラやセンサーを取り付けて挙動の検証に用いるものだが、性能試験として実際に破壊を試みる場合もある。 - 儀礼用の装備*2
- 歴史的意義のある旧式兵器は、第一線を退いた後も儀礼用の装備として維持される事がある。
儀仗隊は実際に発砲する事を想定しないため、あえて旧式の小銃を用いる事がある。
また、礼砲は音さえ確実に響けば良く、有効射程や破壊力などは考慮されない。 - 保存・展示
- 上記同様、歴史的意義のある旧式兵器は「将兵の教育の参考」「継承すべき誇り・伝統の象徴」として展示される事がある。
この時、奪取されても動かないようにバイタルパートは機能不全にされ、軍事機密に関わる部品はレプリカに差し替えたり遮蔽を施される。
外部に譲渡された場合、管理者が保存を放棄したり、破壊してしまう事例も少なくない。
軍が管理する場合にも、政変に伴うプロパガンダとして『悪しき伝統』とみなされ継承放棄・破壊される事がある。 - 現地に寄贈
- 任務のために持ち出された装備品は、任務終了後に現地に放棄される事がある。
この場合、現地人がそうした物品をどう取り扱うかは軍部のあずかり知る所ではない。
平和維持活動・災害派遣・人道支援などでは、寄贈するために廃棄するような場合もある。
ほとんどの国家では軍の装備品を他国に寄贈する行為の法的正当性について議論の余地がある。
よって、「廃棄した不用品がたまたま現地人の手に渡っただけだ」という体裁を取ることを余儀なくされる場合もある*3。
物資の横流し †
用途廃棄は、汚職軍人と犯罪組織による密売の機会でもある。
書類上では用途廃棄されているはずの軍事物資が、実際には不穏な経路を辿って市井に流れていた事例は少なくない。
軍人が犯罪に関与しないよう社会的に隔離するのは現実的に不可能である。
軍人が休暇に歓楽街で遊ぶ事を禁じる法律は基本的にないし、あっても遵守されない。
そしてまた、職業犯罪者が歓楽街の店舗に関与(出資・経営・来店)するのは事実上阻止できない。
よって、犯罪組織が賄賂や脅迫などで軍人と繋ぎを持とうと思えば、標的を見つけるのはそれほど難しくない。
当然、銃火器や機密物資の横流しは犯罪であり、大抵の軍の内部法規に抵触する。
またそもそも、官給品を売却して個人的な収入を得る事自体が横領の罪に問われる。
だが実際には、どれほど厳格な規律のある軍隊でも、消耗品を自宅に持ち帰る程度の軽微な事例は必ず散見される。
それをどこから横領とみなし、どの程度まで厳密に処罰するかは個々の軍による。
しかし一般論として、軍事機密や多額の金銭に関わる事例でなければ黙認される事は多い。
*1 ブルーインパルスジュニアを参照。
*2 厳密には「用途廃棄」ではないが、正面装備としては用途廃棄となったものを、その目的のために稼動状態で維持することがあるので、あえてここに含める。
*3 日本では2011年に武器輸出三原則等の緩和が閣議決定され、殺傷目的でない装備の供与ができることになった。