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【民間軍事会社】 †
Private Military Company(PMC) / Private Military Firms(PMF)
国家・軍隊・組織・企業・武装勢力などと契約を結び、軍事的な人員・サービスを提供する企業。独立採算制を採る場合もあれば、専属の子会社・下請けとして活動する場合もある。
事実上は組織化された「傭兵」集団であるが、傭兵は国際的に非合法であるため、表向きには警備会社、人材派遣会社、民兵などの名目を掲げる事が多い。
国家総力戦によって地位の低下した傭兵組織が、政府の警察力が機能しない地域に業務の中核を移したのが始まりと言われる。
列強各国の資本家が植民地から富を吸い上げる過程ではどうしても軍事力・警察力が必要となり、それはしばしば民間軍事会社によって賄われていた。例えば南北アメリカやアフリカに置かれた農園・鉱山・油田、外洋交易船などは事実上の無法地帯であり、財産を保護するためには常に傭兵が必要であった*1。
米ソ冷戦終結前後、軍縮と紛争の頻発に伴って出現したと見る向きもあるが、これは必ずしも正しくない。実際にそのような経緯で設立された民間軍事会社も皆無ではないが、それら新興企業による供給を受け入れるだけの需要と市場はその時点ですでに存在していた。
かつての植民地が独立・近代化して傭兵の需要が縮小し、民間軍事業界が転換期を迎えたために諸問題が表面化したものと見るべきだろう。
典型的な民間軍事会社の業務実態 †
多くの民間軍事会社は退役した高級軍人が中核となって設立されるが、大規模な企業、特に歩兵部隊を擁する企業の全職員を退役軍人から調達するのは不可能である。
参謀や教官など優れた個人が求められる分野を除けば、ほとんどの業務は現地で雇用・訓練された民兵レベルの人員によって行われる。
従って、現地の民兵組織と民間軍事会社はしばしば区別が付かない。
軍事力を維持するコストを誰かが支払わなければならない以上、庇護や護衛に際して報酬を要求せず、スポンサーの意向を真っ向から無視するような民兵組織は存在し得ない。
また、準軍事組織に属する個人は支給される給与によって生活を営んでおり、組織全体の意向がどこにあろうと金銭目当てで行動する可能性が常にある。
よって、組織に属する個人や一部署が営利目的で活動する事は、その組織が傭兵である事を意味しないのである。
それが、民間軍事会社が傭兵ではないと主張する根拠である。
また、民間軍事会社の全てが軍事作戦に直接関与するわけでもない。
補給・輸送・兵器整備などの兵站業務のみを行うもの、訓練教官や参謀*2を派遣するだけの民間軍事会社も見られる。
特に零細な企業では需要のある業務全てを包括的に行うなど不可能であるため、特定の業務のみに特化する民間軍事会社はさして珍しいものではない。
比較的身近な例としては、紛争地域に赴く先進国の人間、例えばNPO団体であるとか、ドキュメンタリー番組を撮影するTVクルーであるとかを護衛するのも民間軍事会社の代表的な業務である*3。
メリット・デメリット †
- 主なメリット
- 常備軍に比べればトータルコストが低く済み、それでいて即応性・戦闘能力も高い。
- 人的損害が出ても「公式の」戦死傷者にカウントされないため、国内世論の批判をかわしやすい。*4
*1 植民地開拓においては先住民に対する強盗殺人などを行う者が後を絶たなかったが、その際の実働兵力も多くは傭兵によって提供されている。
*2 この種の業務はさすがに退役軍人でないと務まらない。
*3 現実問題として、そのような人々が傭兵の力を借りずに目的を達して生還するのは不可能に近い。
*4 そのため、政治的・技術的な面から正規軍を投入することが難しいミッションにも投入しやすい
*5 正規兵だと軍法会議で処罰されるが、民間軍事会社の社員は処罰が軽くなってしまう。
*6 例えば戦闘中に孤立した等の場合、先進国の有する正規軍であれば、付加価値の低い兵士数名であっても空爆からヘリまで動員し、巨額の費用をかけて救出を試みる。
しかしPMC社員の場合、やむを得ないと判断されたら置き去りになる可能性すらある。
*7 アメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」隊員の年収は5万ドル程度といわれているが、この部隊にいたという肩書があればイラクでは1日1,000ドルは稼げたともいう。
*8 硬直化・官僚化し、部隊の運用に無理解な上層部に愛想を尽かした現役軍人が、同様の経験をした退役軍人の経営するこうした企業に「転職」するケースもあるという。