【防衛駐在官】(ぼうえいちゅうざいかん)

自衛隊において、諸外国軍の駐在武官に相当する役職を務める自衛官

諸外国の慣例に倣い、(中佐・大佐に相当する)二佐もしくは一佐の階級にある隊員が任命され*1、外交官としての権限を与えられることから、外務省へ出向*2となった上で勤務に就く。

防衛駐在官は、勤務に際して必要があれば飾緒を着用し、礼装時には儀礼刀を佩くことができるなど、任務の特殊性から他の自衛官とは異なる扱いがされている。
また、防衛駐在官経験者には「第34号防衛記念章(外国勤務経験者に対して授与される)」が授与される。

派遣先

2014年12月現在、自衛隊が防衛駐在官を派遣している国は34ヶ国・地域*3に及び、合計45名の自衛官*4が派遣されている。
このうち、1ヶ所に複数の人員が派遣されているのはアメリカ(海自から2名、陸自・空自から1名づつ)・ロシア・韓国・中国(いずれも各自衛隊から1名づつ)・オーストラリア(海自・空自から1名づつ)・インド(陸自・海自から1名づつ)の6ヶ国のみで、他は三自衛隊の中で各々の派遣先と関係の深いところから、派遣先1ヶ所につき1人を派遣している。

防衛省では、防衛駐在官以外にも「シビル・アタッシェ(背広組)」や留学生を在外公館に派遣している他、国際連合、ジュネーブ軍縮会議やASEAN*5の日本政府代表部、NATO本部にも自衛官を派遣している。
また、在外公館の警備や防諜を受け持つ「在外公館警備対策官」にも自衛隊からの出向者がいる。

収集した軍事情報の扱い

現在の防衛駐在官制度は、防衛庁自衛隊の創設と共に発足したが、当初は旧軍時代の反省から、「防衛駐在官に補されると、その時点で自衛官としては休職となり、対外的に自衛官の階級を名乗ることができない」「日本本国への通信は外務省に対してのみ行える」など、他の在外公館勤務者に比べても強い制約が課されていた。

旧軍時代、駐在武官が取得した情報が軍内部で握り潰されるケースが多々あり、外務省との情報共有ができない「二元外交」となる局面もあった。

その後、自衛隊の海外での任務増加や制度の定着などもあってこの扱いは改められ、現在は自衛官としての身分を保持したまま勤務できるようになったため、「一等陸佐・防衛駐在官」などという具合に、自衛官としての階級を名乗ることが出来るようになり、また、防衛駐在官が取得して外務省へ送られた軍事情報も、防衛省と共有するように改められている。


*1 アメリカ駐在の駐在官のみ、将官(陸海空将補・他国軍では「少将」にあたる)が1人入る。
*2 外務省内での待遇は「書記官」「参事官」などとなり、外務大臣及び在外公館長の指揮監督下に置かれる。
*3 一部の駐在官は、派遣先の近隣国をも管轄しており、これを含めると59ヶ国・地域となる。
*4 内訳は陸上自衛隊から21名・海上自衛隊から12名・航空自衛隊から12名。
*5 インドネシア駐在の防衛駐在官が兼務。

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