【防衛医官】(ぼうえいいかん)

自衛隊における軍医。
自衛隊の駐屯地・基地・艦船・病院で医療行為に従事する、医師免許を取得した幹部待遇の自衛官

1973年に防衛医科大学校が開校するまでは全て実務経験を持つ医師の中途採用で人員を賄っていた。
現在の人材はほぼ防衛医科大学校卒業生で占められるが、医師経験者の中途採用も続けられている。
また、陸上自衛隊では予備自衛官補の技能コースから採用される事例もある。

なお、歯科医については「歯科医官」という職域が別途制定され、「歯科幹部候補生」課程で募集されている。

階級

防衛医官の、自衛官としての階級は以下のようになる。

防衛医科大学校卒業生
卒業時に陸海空曹長、医師免許取得時に二等陸海空尉に任官され、以後、実務経験年数などにより累進。
部外からの中途採用者
部外医療機関での実務経験年数に応じて二等陸海空尉〜二等陸海空佐に任官され、以後、自衛隊での実務経験年数などにより累進。

ただし、いずれも将補以上(将官)への昇進例はきわめて少ない。

防衛医大卒業生の「早期退職問題」

防衛医科大学校を卒業して医官になった者は、自衛官への任官後、最低9年間は防衛医官として勤務する義務を負っている。
しかし、近年では「自衛隊では臨床経験を積んで高度な医療技術を習得する事が困難」として、数千万円の違約金を支払ってでも早期退職を望む者が相次ぎ、問題になってきている。
現在では卒業生の1/3程度が任官から9年以内に退官するという。

これは、医官の勤務先となる「自衛隊病院」のシステムに要因があると見られている。
現在の自衛隊病院は防衛省職員とその扶養家族のための職域医療機関として機能しており、患者の大半は防衛省共済組合の組合員である。
一方で、有事に多数の戦傷者が発生する事を見越して、常時大量の空きベッドを抱えて運営されている。
従って、平時における防衛医官は日本全国の医師に比べれば閑職に類し、経験を積む機会は確かに少ない。

一方、防衛医官は医療機関や医師が不足する僻地における重要な人材供給源の一つでもある。
多くの防衛医官が、本来の勤務先である自衛隊病院から地方の公立病院へと派遣され、僻地医療の一翼を担っている。
また、そうした人材不足の地方病院は、早期退職した防衛医官の典型的な再就職先でもある(医療機関が違約金を負担して防衛医官を引き抜きにかかった事例もあるという)。


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