【燃料】(ねんりょう)

Fuel/Propellant.
広義には、燃焼によってエネルギーを取り出すことのできる物質の総称。
燃焼させることによって発する熱や光を以下のようにして利用する。

  1. 熱を直接利用する(食物の調理・採暖・乾燥、火炎放射器焼夷弾燃料気化爆弾など)
  2. 炎から発する光を利用する(照明器具・照明弾
  3. 熱によって流体の体積や圧力を急激に変化させ、更にそれを運動エネルギーに変換して利用する(動力)。

本稿では上記3.について述べる。

航空機に限らず、あらゆる種類のエンジンを稼動させるために必要な物質であり、現代の文明活動に欠かせないものとなった。
車輛、航空機などに搭載されるエンジンによってその種類は様々である。

今日、軍隊の活動は燃料がどれだけ安定して供給されるかが大きなキーとなるため、戦争では燃料備蓄施設や石油精製工場の破壊、シーレーン封鎖による補給断絶*1により、敵を燃料不足にすることが戦局を優位に傾ける確実な方法の一つとなる。
このように戦略的に非常に重要な価値を持つ燃料は、撤退時に出来る限り後方へ輸送し、出来ない分はその場で焼き払って敵に接収されることを防ぐのが基本である。

代表的な物質と使用例を以下に挙げる。

ガソリン
レシプロエンジン航空機・自動車)
灯油
ガスタービンエンジン(ジェットエンジン)・液体燃料ロケット
軽油
ディーゼルエンジンガスタービンエンジン
重油
蒸気機関蒸気タービンガスタービンエンジン
天然ガス・LPG(液化石油ガス)
レシプロエンジンガスタービンエンジン
石炭・木炭等
蒸気機関蒸気タービン
液体合成ゴム・黒色火薬
固体燃料ロケット
液化水素・四酸化二窒素・非対称ジメチルヒドラジン
液体燃料ロケット

なお、原子炉に用いられるウランプルトニウムなどの放射性物質は、直接それを燃焼させるのではなく、核臨界反応によって起きる膨大な熱を利用する(それで水を沸騰させ、生成した水蒸気を動力として使うのが主体)ものであるが、慣例的に「核燃料」と呼ばれている。

変わった例

  • 補給の途絶えた前線で、燃料が尽きた車両にウォッカなどのアルコール度数の高い酒を入れてみたところ、エンジンが動いた等の怪しい話も存在する。
    • なお、近年では石油資源の枯渇への対処や二酸化炭素の排出量削減*2に資するため、農作物(サトウキビ等)由来のアルコール(バイオエタノール)や特殊加工した動植物性油脂を燃料に使おうという試み(バイオディーゼル)もなされている。
  • 第二次世界大戦当時の日本では、(連合国軍の通商破壊戦による石油の供給途絶から)松の根から抽出された油脂を「松根油」として航空燃料に使用することが試みられ、また、民生用車両では木炭から抽出されるガスを利用するエンジン*3も使われていた。

*1 これは産油国であっても有効に働く事が多い。
  ガソリンをはじめとする使用量の多い燃料には精製に高い技術が必要な場合があり、原油を産出しても精製が出来ず、これらの燃料を輸入に頼る国も多いのである。

*2 「動植物由来の燃料には、植物が生長過程で光合成により大気中から取り込んだ炭素が含まれているため、燃焼させても大気中の二酸化炭素の総量は増えない」とされる(カーボンニュートラル)。
*3 当時の技術では出力が得られず、利用には困難が伴った。
  ただし、近年ではエネルギー効率や環境負荷の軽減を目指し、固体燃料から可燃性ガスを取り出して利用する試みも行われている。


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