【熱の壁】 †
音の壁を越えて加速する航空機・ミサイルにおける、材料工学的な耐熱性に由来する限界速度。
一般にはマッハ3程度が「熱の壁」が待つ領域とされる。
大気圏内を超音速で前進すれば、押しのけられた空気も超高圧になり、断熱圧縮によって深刻な高温を持つようになる。
例えば、マッハ3で飛行する飛行機は、部分的に摂氏1,000度を超える熱を持つ事になる。
これをして「摩擦熱で燃え尽きる」と表現する場合があるが、これは間違い。
高密度の硬い路面と衝突するタイヤはともかく、大気ほど薄い気体との衝突では摩擦熱はほとんど発生しない。
このため、そのような飛翔体の機体構造材には耐熱性の低いアルミニウムやジェラルミンではなく、融点の高い素材が必要となり、加工が困難なチタニウム、重量のかさむ鉄、脆くて使い捨ての耐熱セラミックなどが選ばれる。
どれも設計上あまり効率的とは言えない素材であり、科学的には突破も可能だが、経済的にはあまり現実的でない。
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