【偵察機】(ていさつき)

空中から敵の情報を偵察し、友軍に伝達する役割を持つ軍用機
任務や目的により「戦術偵察機」「戦略偵察機」「電子偵察機」などと細分化される。

戦略戦術の理論において、伝令・偵察が極めて重要である事は論を待たない。
特に近年の電撃戦において、地形図と敵軍配置図の有無は戦争そのものの勝敗を決定的に左右する。

しかし、運用実態としては直接戦力より軽視される傾向が強い。
C4I戦略の柱石である現代でさえ、偵察機不足で作戦に支障を来たす例は後を絶たない。

理想としては「戦闘機攻撃機3機に対して1機の偵察機」が必要とされる。
しかし、これを実現できている国家・軍隊はない。

関連:偵察衛星 ELINT 哨戒機 観測機 武装偵察ヘリコプター

概史

第一次世界大戦
飛行機の実用化に伴い、初の軍用機として「偵察機」が誕生。
騎兵気球の後継として敵情偵察・間接砲撃の弾着観測などの任についた。
また、この時期に偵察機同士の遭遇戦が頻発し、やがて戦闘機を生み出す母体となった。

この当時の偵察機による情報収集は、単純に搭乗員が肉眼で確認するだけのものだった。
収集した情報の伝達は、帰還後に口頭で報告するか、上空で報告書を書いて投げ落とすようなものだった。

第二次世界大戦
戦闘機の発達により、航空偵察はファイタースウィープの危険にさらされるようになった。
従って、攻撃機急降下爆撃機雷撃機などが偵察任務を兼任する事が多かった。
専用の偵察機も開発されたが、偵察そのものの性能よりも戦闘機を振り切る撤退能力が要求された。

また、科学技術の発展により、無線通信による報告や、フィルムカメラによる航空撮影も可能になった。

現代
航空戦の複雑化に伴う偵察任務の細分化により、様々なバリエーションが誕生した。
偵察手段としては、デジタルカメラや赤外線スキャナーなどの電子的手段が標準となり、データリンクと接続してリアルタイムでの情報伝達が可能な機体も登場した。
さらに、電子制御技術の飛躍的発展により、偵察機器を搭載した無人機も導入されている。

しかし、マルチロールファイター軍事衛星にシェアを奪われ、総じて偵察機の需要は減じている。

さまざまな種類の偵察機

  • 戦術偵察機
    敵が航空優勢を掌握している空域へ潜入しての強行偵察を主任務とする。
    敏捷性に優れる戦闘機攻撃機をベースとして作られる事が多い。

    近年ではマルチロールファイターにカメラやセンサーを内蔵した「偵察ポッド」を積むのが主流となっており、専用機体の需要は途絶えている。

  • 戦略偵察機
    仮想敵国全体の防衛網に関する情報収集を主任務とする。
    交戦距離への接近を避けるため、高高度・超音速での飛行性能が求められる。
    現代では軍事衛星の実用化に伴って完全に陳腐化している。

  • 電子偵察機
    特定地点に対する偵察ではなく、ELINTに必要な電波情報を広域に収集する偵察機。
    航続距離の長い輸送機旅客機貨物機)や爆撃機を設計母体とする事が多い。

  • 無人偵察機(UAV)
    航空機を構成する部品の中で、最も単価の高い「人体」をオミットした安価な偵察機。
    性能面ではおおむね有人機に劣るが、使い捨てにできるほど安価に製造できるのが利点。
    手持ちサイズの物(RQ-11?RQ-14?など)から有人機サイズ(RQ-1RQ-4など)の物まで大きさは様々。

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