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【脱柵】 †
自衛隊において、隊員が正当な手続を経ずに長期間にわたって職務を放棄する事。
上官に面と向かった状態で職務を放棄し続けるのは現実的に不可能に近い。
よって、典型的に「基地の柵を乗り越えて脱走した」というイメージで語られる。
もっとも、実際には外出・休暇が終わった後に帰還せず失踪する事例が多い。
治安出動・防衛出動に対する脱柵は犯罪とみなされ、懲役・禁固刑に処される。
平時には刑罰はないが、三曹以上の隊員については懲戒免職とされるのが普通。
任期制の隊員については任期が継続されるが、依願退職を促される事も多い。
また実際、平時であれば不正な脱柵によらず依願退職する事も可能である。
「依願退職を促す」という行為は字面から連想するよりもずっとおぞましいものである可能性がある。
脱柵する隊員は評定上明らかに信用に値しない人物だが、それは解雇処分の法的根拠としては必ずしも通用しない*1。
自衛隊に限った事ではないが、こういう「合法的に解雇できない人間」が陰湿かつ非人道的な手段で依願退職を強要される事例は枚挙に暇がない。
そのような事実がもしあったとすれば民事訴訟の対象となり得るが、判例上、いったん法的に成立した依願退職を後から取り消させた例はきわめて少ない。
なかでも自衛隊は機密上の理由からボイスレコーダーなどでの証拠確保が困難なため、勝訴を望みがたい。
この量刑は国際水準に照らし合わせてもかなり軽い部類に入る。
多くの国家において、実戦における敵前逃亡は死刑や終身刑に値する重罪である。
とはいえ現代では死刑に対する減免措置が成される場合が多く、日本の量刑が異常に軽いとまでは言い切れない。
罰則とは別に、脱柵が発覚すると警務官中心の臨時捜索隊による捜査が行われる。
脱柵者は発見され次第、処罰が必要か否かに関わらず元の勤務地に連れ戻される。
これは、無収入の状態にある脱柵者が窃盗などの犯罪に関与する危険性があるためである。
脱柵者の捜索費は全て脱柵者本人に請求される(実際に支払われるかはともかく)。
このため、捜索中の休憩として大いに外食を楽しみ、その飲食費を脱柵者に請求するような隊員もいるという。
参考 †
- 自衛隊法(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
- http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO165.html