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【全地球測位装置】 †
Global Positioning System(GPS).
人工衛星を利用した航法支援装置。理論上、地球上のどこでも正確な現在位置を割り出す事ができる。
船舶や登山用では緯度・経度のみを表示する小型の受信機を使い、地図や海図と照合する方式が一般的。
一方、ユーザー側で地図の不備が予想される場合(自動車や携帯電話・スマートフォンなど)には、画面上に地図を表示するタイプの端末が主流。
現在のGPSシステムは、アメリカ空軍が構築・運営するシステムが民間に開放されたものである。
このため、GPSシステム全体の維持管理もほぼ全てアメリカ合衆国内で行われている。
開放当初はアメリカの軍事政策上の理由(敵に利用されることを防ぐため)から、米軍の軍用受信機以外で受信すると必ず数十mの誤差が生じるように設定されていた。
「SA(Selective Availability)」と呼ばれていたこの設定は現在解除されており、2007年にはジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)とアメリカ国防総省が「今後は恒久的にSAの設定を行わない*1」旨の大統領決定を発表しているが、将来、復活しないという保証はどこにもない。
この状況を憂う声もあり、日本・ロシア・EUなどは独自のGPSシステムを構築するための研究開発を進めている。
関連:GPS誘導爆弾 ナブスター
位置特定のメカニズム †
GPSは以下のようなメカニズムで受信機の現在位置を特定する。
- 専用の人工衛星を打ち上げる。
この衛星は原子時計を内蔵し、電波で現在時刻*2と衛星が飛行している軌道を放送する。
軍用の暗号化された高精度の信号と民生用の信号が同時に送出される。
- 時計を内蔵した受信機で、衛星からの電波を受信する。
送信から受信までの経過時間から、衛星までの距離を推定する。
光速は常に一定であるため、経過時間さえ正確であれば推定距離も必ず正確である。
とはいえ、時計の精度やコンピュータの処理能力による誤差は避けられない。
- 上記2.の処理を、最低3基の人工衛星について同時に行う。
3ヶ所からの距離が特定出来れば、その条件を満たす場所を1点に絞る事ができる。
純数学的にはまだ2点の候補があるが、そのうち1点は必ず大気圏外であるため除外できる。
- 受信した情報をコンピュータで検証・修正する。
時計の誤差が無視できないほど大きいため*3、これを修正するためにより多くの情報を必要とする。
そこで、受信可能な衛星電波は全て受信し、信頼性の低い情報を切り捨てるなどの演算処理を行う。
どう処理しても多少の誤差は残るため、最終的な表示位置はコンピュータの推定による。
- 以上の処理によって算定された位置情報をコンピュータが利用する。
一般的なGPS端末では緯度・経度を表示したり、画面上の地図を操作したりする。
ミサイルや誘導爆弾・無人機などの舵やエンジンを操作するためにも用いられる。
無線で位置情報を発信したり、ネットワークで繋がった別のコンピュータに送信する事もできる。
以上の処理を円滑に行うために、受信機の上空に最低3基の衛星が存在する必要がある。
その状態を地球全域で同時に実現する必要があるため、理論上24基の衛星を常に稼動させなければならない。
これに加えて精度向上や事故対策、老朽化に備えた予備も必要なため、実際に必要な衛星は30基を超える。*4
ディファレンシャルGPS †
Differential GPS(DGPS).
GPSの測定精度を高めるための手法の一つ。
緯度・経度・標高の確定した基地局でGPS衛星の電波を受信し、補正情報を生成する。
受信機は自身のGPS情報を基地局からの補正情報によって検証し、誤差を相殺する。
日本では海上保安庁が全国27ヶ所の基地局を運用し、日本列島近海向けに中波ビーコンで送信している。
基地局として静止衛星*5を利用する方式や、既存の無線通信を利用する方法もある*6。
GPSにまつわる誤解 †
日本におけるGPSの代表的な利用例として、自動車に搭載される「カーナビ」がある。
これに関連して、以下のような話が伝えられている。
- GPS衛星は、カーナビを積んだ車にその車の位置情報を送っている。
- GPS衛星がカーナビのルートを引いている。
- GPS衛星は車の位置を逆探知できる。
- GPS衛星とカーナビが通信をしている。
- アメリカ軍やCIAがGPSから収集した情報を使って何か陰謀を企んでいる(多分エリア51かどこかで)
実態を言えば、GPS端末の情報を無線電波やインターネットで送信する事は可能であり、実際に行われている。*7
送信された位置情報のハッキングも原理的には可能であり、実際に行われていないという保証はない。
しかし、それをGPS衛星が受信する事はない。
GPS衛星には内蔵された時計の時刻や飛行中の軌道データを送信する機能しかないためだ*8。
結局のところ、カーナビの機能のほとんどはカーナビ自体に内蔵されたコンピュータに依存している。
なんらかの情報漏洩や不備があったとしても、それはやはりカーナビの小さな機械に起因する。
*1 正式には「今後はSA機能を持つ衛星を調達しない」とのこと。
*2 なお、この時刻は海軍天文台の原子時計による観測結果を基に、マイクロ秒単位で調整されたものを使用している。
*3 送信側の原子時計は、誤差が数万年に±1秒程度と高精度だが、受信側はクォーツ時計であるため、これより精度は落ちる。
*4 現在は31基を衛星軌道上に投入しており、うち24基を運用態勢、残り7基は予備として別の軌道に配置している。
*5 日本では測位衛星「みちびき」が打ち上げられた。
*6 「ラジオ局が使用しない周波数帯域を利用する」「地上波デジタル放送の信号と重畳して送信する」「携帯電話の基地局で測位を行う」など。
*7 実用例としては、運輸業などで使われる「車両位置監視システム」や各種セキュリティシステム、携帯電話やスマートフォンをプラットフォームとする「位置ゲー」と呼ばれるゲームなどがある。
本文にある「GPSにまつわる種々の誤解」の由来も、そうしたところからきているものとみられている。
*8 事実、多くの航空会社では離着陸時を除いて機内でのGPS受信機の使用を認めている。