【戦闘機】(せんとうき)

Fighter.
航空機撃墜を主任務とする軍用航空機

目標自体が高速で飛行するため、それを上回る高い運動性と最高速度を要求される。
その事がペイロード航続距離に深刻な影響を与えるため、継戦能力は低い。
従って、攻勢対航空作戦では地上施設を破壊するために攻撃機爆撃機の帯同が望ましい。

ただし、戦闘機のみでの対地攻撃もしばしば強行される*1
奇襲に遭遇した場合や、兵站調整が困難な航空母艦では他に選択の余地がない場合も多い。
近年のマルチロールファイターもそうした実情を踏まえた上で設計されている。

関連:機体命名法 支援戦闘機 戦闘攻撃機 戦闘爆撃機 甲戦 乙戦 丙戦 夜間戦闘機

第一次世界大戦の戦闘機

飛行機はその黎明期、軍では偵察機として運用されていた。
しかし敵味方の偵察機が遭遇すれば戦闘に陥るのも必然であり、武装が施された。
そうして生まれたのが史上初の戦闘機である。

やがて航空戦線は規模を拡大し、数十機撃墜したエースも数多く誕生している。

この頃の戦闘機は機体構造ひとつとっても単葉機から三翼機まで多彩な試行錯誤の繰り返しであった。
材質は木製のフレームにを張ったものが多かった。
武装は機関銃が主で、同調装置?が発明されるまでは機銃の配置にも色々なものがあった。

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Camel
Photo :Royal Airforce

第二次世界大戦の戦闘機

バトルプルーフの集積で設計思想は収斂され、設計はやがて似通っていった。
これ以降、金属製の単葉機が戦闘機の基本構造となっている。

第二次世界大戦では航空任務が対地攻撃にも拡充され、航空優勢の重要性が認識されはじめた。
欧州では航空基地を巡り、また太平洋では航空母艦によって、それぞれ熾烈な空戦が繰り広げられた。

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Zero(A6M2b)
Photo: U.S.Navy

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Spitfire
Photo: Royal Airforce

第一世代ジェット戦闘機

第二次世界大戦末期のドイツにおいて、世界で最初のジェットエンジン推進式の戦闘機が実用化された。
その事で大戦の趨勢が覆る事はなかったが、戦後の航空技術の進歩に与えた影響は大きい。

戦後、ジェットエンジンは急速に普及し、戦闘機分野におけるレシプロエンジンを過去のものとした。
当時はまだ推力の非常に小さいものであったが、それでも飛躍的に速度が伸びた。

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F-86F
Photo: USAF

第二世代ジェット戦闘機

ジェットエンジン自体の技術的可能性を追求していく過程で、戦闘機も速度性能が追い求められた。
分類上、音の壁を突破して超音速で飛行する事が可能になった機種をジェット戦闘機の第二世代とみなす。

第三世代ジェット戦闘機

火器管制用レーダーおよび空対空ミサイルを搭載し、目視外射程戦闘に対応可能な機種をジェット戦闘機の第三世代とみなす。

冷戦中期の代理戦争、もっぱら中東戦争ベトナム戦争などの戦訓がこの世代を特徴付けている。
レーダーを妨害するECMをはじめ、空中での電子戦もこの頃から始まった。

同時期、ミサイル万能論の影響により、空対空ミサイル以外の武装をしない戦闘機(ミサイリアー)も登場している。
もっとも、これはベトナム戦争で悲惨な醜態をさらし、機関砲の重要性を再認識させる結果になっている。

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F-4E
Photo: USAF

第四世代ジェット戦闘機

ミサイル万能論の破綻を受けて、想定外の航空脅威にも近代化改修によって対応できるよう設計された機種をジェット戦闘機の第四世代とみなす。

ドッグファイトにも対応できる運動性、改修に対応する拡張性、装備追加の余地を残した高出力のエンジンがこの世代を特徴付けている。
また、装備変更の自由度が増した事で割り当てられる任務自体も多様化し、戦闘機は偵察機攻撃機と兼用可能なマルチロールファイターへと変遷していった。

対空戦闘もいよいよ長射程化し、目視外射程で決着しない事例はほとんどなくなっている。
この流れを受け、一部ではステルス戦闘機も登場しはじめた。

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Su-30
Photo: USAF

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JAS-39 Gripen
Photo: SAAB

第五世代ジェット戦闘機

第五世代における課題は、爆発的に進歩したコンピュータネットワークを戦術に組み込む事にある。
これを実現し、C4ISRの構成要素としてリアルタイムで友軍と連携する機種を第五世代とみなす。

第五世代戦闘機は敵を攻撃するミサイルプラットフォームであると同時に、敵地に侵入してセンサーフュージョンで敵情を伝える偵察機でもある。
また、味方に情報を伝えつつ敵に情報を与えないためのステルス性能が求められる他、情報を伝え続けるための生存性・稼働率も要目となっている。

戦闘機の開発費用は世代を経るごとに高騰の一途を辿っており、第五世代に至っては先進国でも耐え難い規模に達している。
このため、ヨーロッパにおける航空先進国(イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・スウェーデンなど)は第五世代ジェット戦闘機の自国開発を断念している。


*1 (ある程度の能力低下を甘受できるなら)爆弾ロケット弾を搭載すれば可能であるし、非装甲目標(人員や車輛など)であれば固定兵装の機関銃でも十分対応できる。

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