【戦時債券】(せんじさいけん) †

War Bond.
紛争・事変や戦争に伴って発生する巨額の財政支出の財源に充てるため、政府が発行する債券（有価証券）の総称。
これを発行し、国民や内外の投資家に購入してもらうことによって集められた資金は、将兵に支払う給料や戦死傷者（の家族）へ支払う恩給・一時金等の現金給付、軍隊が任務の遂行に必要とする武器・弾薬・食糧・資材・燃料などの購入資金etc.といった「戦費」に充当される。
（ただし、これによって集められた金は当然に国の借金となるので、後日、入ってくる税収などから購入者へ返済（償還）しなければならない。）
「戦時公債」「戦時国債」ともいう。

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日本の戦時債券 †

日本において、債券の発行による戦費調達が大々的に行われたのは明治中期の「日清戦争」「日露戦争」の頃が最初である。
殊に日露戦争においては、当時の金額で17億円という巨額の戦費を要し、このために国内で6億円、海外で7億円もの債券を発行した。
（これらの債券は、後にすべてが償還されている）

その後、1930年代〜1940年代にかけて、「満州事変」「支那事変」「太平洋戦争」と続いた長期の戦争で財政が逼迫、政府が直接発行した国債だけではなく、「日本勧業銀行（現在の『みずほフィナンシャルグループ』の前身）」などの政府系特殊金融機関が「貯蓄債券」「報国債券」等々の名称で大量の個人向け債券を発行、国民に半ば強制的に購入させて*1資金調達を行っていた。
（これによって金融機関が集めた資金は、軍需関連企業への設備投資や運転資金の融資、政府が発行した国債の引き受けなどに充てられていた）

しかし、1945年8月の終戦に伴い、国民が生活のためにそれまでの貯蓄を取り崩しにかかり、また、政府が軍需関連企業へ（契約打ち切りに伴う補償金などの名目で）一時に巨額の支払を行ったため、市中に大量の通貨が放出されてしまい、その結果、物価が戦前の300〜400倍にも跳ね上がる猛烈なインフレが発生。これにより、国民が買わされた戦時債券はほとんど無価値になってしまった。

現在でも、古銭商の店頭やネットオークションで当時の戦時債券が出て来ることがあるが、それは、この時期に価値が暴落して換金する機会を逸したためである。*2
ちなみに、これらの債券は換金できる期限が経過しているため、現在は有価証券としては完全に無価値となっている。

余談ながら、日本勧業銀行がこの時期に発行していた個人向け債券には、
「償還期限前に債券の券面番号で抽選を行い、当選した債券の所持者にプレミア（割増金）をつけて繰り上げ償還する」
というシステムが採用されていた。
元々は、満期償還時の資金負担を少しでも軽減するためのシステムであったが、これは現在の「宝くじ」の原型にもなっている。

第二次世界大戦時に日本が発行した戦時債券について詳しいサイト
http://f59.aaa.livedoor.jp/~bokujin/

*1 「地域住民のコミュニティに割り当てる」「給与労働者への給料の一部を債券での支払にする」などといったやり方で行われていた。これらの債券は元利金の支払いを政府が保証していたため、このような使い方もできた。
*2 個人向けの戦時債券は、一般市民が購入しやすいように小額面単位で発行されることが多く、インフレによる価値の暴落で何も買えなくなってしまったのである

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