• 追加された行はこの色です。
  • 削除された行はこの色です。
*&ruby(すいちゅうよくせん){【水中翼船】}; [#r3470f36]
&ruby(ハイドロフォイル){Hydrofoil};~
船艇の一種で、船首部と船尾部の船底に水中翼と呼ばれるフィンを装備し、船体が水面から浮き上がって航行するもの。~
&ruby(ハイドロフォイル){Hydrofoil};.~
~
停船時や低速航行中は通常の船艇と同様に船体の浮力で水面に浮く。これをハルボーン(艇走)という。~
[[速度]]が上がると水中翼が[[揚力]]を発生し、船体が水面から飛び上がる。これをフォイルボーン(翼走)といい、水中翼以外は水に触れないため[[抗力]]が小さく、高速の航行を可能とする。~
浮力ではなく[[揚力]]で飛び上がるため、「海の[[飛行機]]」とも呼ばれる。~
船艇の一種で、船底に水中翼(フィン)を備えるもの。~
~
初期のものは半没型と呼ばれるスタイルを取っており、水中翼の両端に大きな[[上反角]]を備え、水面から翼端がはみ出していた。~
船体が不意に[[ロール]]した際には翼端が水中に沈んで[[揚力]]を発生し、[[ロール]]の偏りを復元し、転覆を防ぐ働きを持つ。~
しかしこの方法では、ある程度[[ロール]]してからでないと復元力が働かないため、揺動を抑制することは出来ず、乗り心地も悪かった。~
また、翼端が船腹よりも横へはみ出すため、通常の岸壁に接舷することができず、ボーディングブリッジを用意したりするなどの手間がかかる。~
低速航行中は船体の浮力で水面に浮き、通常の船艇と同様に艇走(ハルボーン)する。~
[[速度]]が上がると水中翼が[[揚力]]を発生させ、船体が水面から飛び上がって翼走(フォイルボーン)に移行する。~
翼走時は船底の大部分が水上に浮上するため、水の[[抗力]]が小さく、容易に高速航行を可能とする。~
~
かわって登場したのが全没型水中翼船である。~
船体のわずかな傾きや波などを自動的に検知し、[[フラップ]]と呼ばれる[[動翼]](([[飛行機]]のフラップとは違い、むしろ[[先尾翼]]および[[エレボン]]が持つ働きに近い。))を能動的に制御するため、揺動を抑えることができ、乗り心地も良い。~
この制御システムをACS(Automatic Control System)(([[飛行機]]で言うところの[[フライバイワイヤー]]に近い。))といい、仕組みが[[飛行機]]にかなり近いため、[[飛行機]]と同様に頻繁なメンテナンスを必要とする。~
(後述のように、アメリカの水中翼艇は[[航空機]]メーカー、もしくはその関連企業により建造されたものが多い)~
変針するときも舵を切るのではなく、やはり[[飛行機]]と同様に少し[[ロール]]して旋回する。~
また、水中翼のウィングスパンを短く設計することが可能で、通常の岸壁などに接舷することもできる。~
さらに水中翼を折り畳み式にする((水中翼を船首・船尾方向へ跳ね上げる形式のものが多い。))ことも可能であり、水深の浅い港へ入ることもできる。~
小さな船体の割に高い安定性を持つため、軍用としては沿岸警備する小型高速の[[砲艇>砲艦]]として用いられる。~
民間分野では、比較的短距離の定期航路を短時間で往復する小型客船として用いられる。

>なお、パワーボートやヨットなどの競技用船艇の多くは、水中翼船で公式競技に出場する事が禁止されている。

関連:[[表面効果翼機]]

**機構・原理 [#m161213e]
水中翼船は大まかに分けて2世代に分かれ、第一世代の半没型・第二世代の全没型に分類される。

***半没型 [#ge15e721]

初期の水中翼船は水中翼の両端に大きな[[上反角]]を備え、水面から翼端がはみ出していた。~
~
軍用としてはアメリカの[[ペガサス]]級水中翼型[[ミサイル艇>ミサイル艦]]が存在し、そこからイタリアのスパルヴィエロ級、さらに[[海上自衛隊]]の[[1号型>ミサイル艇1号]]が派生している。~
船体サイズが小さいものの、全没型のため大きなうねりには強いが、波長の短い三角波には比較的弱く((用途上、船体の小さいことが要求されたために耐候性が脆弱となった。))、外洋での実用性は低いとされる。~
一方で[[ペガサス]]級を幅広・低重心化した民間船「ジェットフォイル」は、日本を中心に多数の航路がある。~
船体が[[ロール]]して傾くと翼端の左右どちらかが水中に沈んで[[揚力]]を発生させ、転覆を防ぐ。~
しかし明確な傾きが生じるまで復元力が働かないため、大きな揺動が発生して乗り心地が悪かった。~

***主な軍用水中翼船 [#ye87a83e]
アメリカ
-プレインビュー(実験艇、[[ロッキード]]製)
-ハイポイント(対潜哨戒艇、[[ボーイング]]製)
-フラッグスタッフ([[砲艇>砲艦]]、[[グラマン]]製)
-トゥクムカリ([[砲艇>砲艦]]、[[ボーイング]]製)
-ペガサス級([[ミサイル艇>ミサイル艦]]、[[ボーイング]]製)
また、翼自体が船体そのものよりも横に幅広くなるため、港湾に接舷できないという欠点もあった。~
乗員・貨物の積み卸しには[[ボーディングブリッジ]]や[[連絡艇>カッターボート]]を必要としていた。

ロシア
-チューリャ型(魚雷艇)
-プヒェラ型(哨戒艇)
-バボチュカ型(駆潜艇)
-サランチャ型([[ミサイル艇>ミサイル艦]])
-[[マトカ]]型([[ミサイル艇>ミサイル艦]])
***全没型 [#p789d60e]
電子制御の発達と共に、固定された[[上反角]]を必要としない水中翼が登場した。~
舵も持たない構造である場合が多く、進路変更は[[ロール]]や推力偏向によって行われる。~
~
それら全没型の水中翼は[[動翼]]を備え、微細な傾斜や波を検知して自動的に制動を行う。~
人間にはほとんど認識できない微細な変化にも反応するため、揺動が少なく乗り心地も良い。~
~
この機構によって水中翼の小型化も為されており、通常の港湾に接舷できるようになった。~
反面、船体が小型化した事で波長の長い三角波に弱くなっており、外洋航行には不向き。~
~
加えて、[[動翼]]などの制御を行うACS(Automatic Control System)システムは高度な[[サイバネティックス]]の所産であり、高価である。~
また、制御時の動力伝達に[[油圧ポンプ]]を用いるため、頻繁なメンテナンスを必要とする。

イギリス
-スピーディ(掃海艇、[[ボーイング]]製)
**主な水中翼船 [#ye87a83e]
***民間 [#lf104d7b]
-ボーイング929
--川崎ジェットフォイル929-117([[川崎重工業]]での[[ライセンス生産]])
--PS-30-101(上海新南船廠公司(現:中国船舶工業集団公司)でのライセンス生産)
-三菱スーパーシャトル400
-Foilcat(水中翼双胴船。クバーナー・ヘルストランド社製)~
-金星(半没型水中翼船。引退後、呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)で屋外展示されるが、老朽化により解体。)
-[[疾風]](全没型水中翼船(テクノスーパーライナー実験船)。実験終了後神戸海洋博物館で展示されていたが、後に解体。)
~
***軍用 [#c0657e31]
-アメリカ
--プレインビュー(実験艇、[[ロッキード]]製)
--[[ハイポイント]](駆潜艇、[[ボーイング]]製)
--フラッグスタッフ([[砲艇>砲艦]]、[[グラマン]]製)
--トゥクムカリ([[砲艇>砲艦]]、[[ボーイング]]製)
--ペガサス級([[ミサイル艇>ミサイル艦]]、[[ボーイング]]製)
~
-ロシア
--チューリャ型(魚雷艇)
--プヒェラ型(哨戒艇)
--バボチュカ型(駆潜艇)
--サランチャ型([[ミサイル艇>ミサイル艦]])
--[[マトカ型>マトカ]]([[ミサイル艇>ミサイル艦]])

イタリア
-スパルヴィエロ級([[ミサイル艇>ミサイル艦]])
-イギリス
--スピーディ([[掃海艇]]、[[ボーイング]]製)

日本
-[[1号>ミサイル艇1号]]型([[ミサイル艇>ミサイル艦]])
-イタリア
--スパルヴィエロ級([[ミサイル艇>ミサイル艦]])

関連:[[表面効果翼機]]((水中翼船が水中で[[揚力]]を発生するのに対し、水面効果翼船は水上の空気中で[[揚力]]を発生する。))
-日本
--[[1号型>ミサイル艇1号]]([[ミサイル艇>ミサイル艦]]・退役)~
~


トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS