【銃剣】(じゅうけん)

bayonets バヨネット
小銃の先端付近に装着され、剣状の形をしているものが多い。「剣」とは言うが、見た目や扱い方は槍に近い。
形状は突き刺すために特化しており、斬る事も可能ではあるが高い格闘技術を必要とする。

主に戦場における白兵戦に使用するための物で、発明以来数百年、小銃とともに形を変えていきながら現代でも多くの軍隊で採用されている。
マズルローダーの時代は、単に突き刺すだけが目的のスパイクバヨネットが主流であったが、徐々に短剣状の物に取って代わっていった。
これは、当時の銃は一度射撃を行うと再装填に手間と時間がかかるため、銃撃戦の直後に剣による斬り合い等の白兵戦になだれ込む事が多く、着剣しなければ役に立たないバヨネットと、自衛用のサーベルを別々に携行する手間を省くために、斬撃にも刺突にも対応できるように形状が進化していったのではないかといわれる。
しかし、珍しい例としては、旧ソ連のSKSや中国のAK47コピーである56式小銃、SKS改良型ともいえる63式小銃などは、銃本体に折り畳み式のスパイクバヨネットが組み込まれている。

また、多くの短剣あるいはナイフ型のバヨネットが、刃に当たる部分を銃軸線に対して下向きに装着するようになっているのに対し、旧ソ連(ロシア)のAKシリーズのものでは、刃が上向きに装着されるようになっている。
これは、着剣した銃を振り下ろすようにして攻撃するアメリカ(及び旧西側陣営、日本も含む)式と、刺突してから斬り上げるロシア式の、要領の違いからくる物と思われる。

現在戦においては、銃剣突撃やその後の白兵戦のような状況が生起する可能性はきわめて低く、また小銃の小口径化、短小化、さらにはブルパッブ式小銃の登場などに伴い、武器としてのバヨネットの価値は低下していると言わざるを得ない。
そのため、現在はナイフタイプのやや小型な物が主流となっている。特に、旧ソ連のAK74用バヨネット以降、栓抜きや、シース(鞘)と合わせてワイヤーカッターとして使用できるなど、多機能化されたものが多くなっている。
多くの近代バヨネットでは、ブレイドバック(峰)の部分に鋸状のセレーションが刻まれているが、これは不時着した航空機から脱出するために、機体を切り裂いて破壊するためのものである。
また、ブルパッブ式の小銃を採用しているフランス、イギリス等においても、制式バヨネットが存在する。
銃の長さからすれば、着剣しての戦闘には不向きと言わざるを得ないにもかかわらず採用しているというあたり、儀礼用として、あるいは伝統あるいは慣習に則って採用を決めているということなのであろう。

その他の用途として、缶切りが無い時に缶詰の戦闘糧食を食べる場合に、缶切り代わりに使用されることもあるらしい。

なお自衛隊64式小銃の銃剣は、缶に突き立てると「曲がる」という逸話がある。
実際に、先端が若干つぶれた64式用銃剣の個体は多いらしいが、これは実際に突き立ててみた自衛官が少なくないということであろう。
この逸話故かは不明だが、後継の89式小銃のバヨネットシースには、缶切りの機能が付いているという話もあるが、これはシース先端のワイヤーカッターの形状から誤認された物と思われる。ただし栓抜きの機能は存在する。

蛇足だが、銃剣での戦闘を武道化した「銃剣道」なるものも存在し、現在でも国民体育大会(国体)の正式種目となっている(ただし参加者は殆ど自衛官)。


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