【散弾銃】(さんだんじゅう)

Shotgun(ショットガン).

小さな球状の弾丸(ショット)を多量に散布する「散弾」を使用する銃。
非常に幅広い分類で、特に回転機構は細かい用途ごとに異なる仕様で作られる*1
有効射程は40〜50mと比較的短く、散弾は最大直径1mほどのキルコーンに拡散する。
戦闘用として最も普通に使用される12番径のダブルオー・バックショットの場合では、十分な威力と精度を狙える至近距離では
おおよそ拳大の範囲まで拡散し、38口径の拳銃弾に近い大きさの散弾が複数発、限りなく同時に近いタイミングで弾着する。
この為、柔らかい生体に対しては通常の銃器と桁違いの衝撃を発揮し、突進力に優れた大型動物でも阻止する為猟銃にも適する。
装甲など堅い物体への破壊力には欠けるものの、歩兵であれば防弾装備越しでも多大なショックを与えて行動を抑止する可能性がある。

軍・警察用の特殊用途としてはドアを突破する工具としても需要があり、どこにでも入れるという洒落でマスターキー(万能鍵)やクレジットカードの類に例えることもある。
この際使われるのは散弾では無くスラッグ弾の一種で、散弾複数発と同等のペイロードを誇る大質量の単発の弾頭を発射し、施錠された扉のロック部分や蝶番を文字通り叩き壊す。
極めて衝撃が大きい割に貫通力が低く、扉の前後に不必要に突き抜けたり跳ね返ったりしにくい為、開錠用具として比較的安全性が高い。

また、散弾銃用の弾薬は筒状の薬莢内のペイロードに余裕が多いため、特殊な装弾も多く使用される。
威力を落とした非殺傷の散弾や催涙ガス弾、有線のテーザー弾薬が存在し、非殺傷兵器としての側面も強い。
主に警察で多く活用されるが、これは職務環境上ほとんどが至近射撃になる事、及び射殺に対する制約が多い事による。
通常の戦闘用火器としても拳銃以上の威力と安定した精度、及び民間用としても比較的入手性の高い事から好適であり、警察組織においては象徴的な銃器とされる。

歴史的な起源は、おそらく銃砲そのものの発明と大差ない程度に古い。
初期の銃砲は「火薬を入れて詰め物をして着火すると詰め物が吹き飛ぶ」という程度のものであった。
その性質上、「詰め物」に何を使ったとしても、それが原因で故障に至る事は希であり、結果、「正規の」弾丸でないものを銃身に放り込むことがままあった。
そのような状況から、偶発的に散弾のような効果を発揮したのが散弾銃の始まりといわれている。

その後ライフリングが発明されると、散弾の構造上ライフリングできない事が判明した*2
結果、銃は有効射程の長い軍用ライフルと、近距離で狙いやすい狩猟用散弾銃に分かれて進歩していった。

その後、第一次世界大戦塹壕戦に散弾銃が投入され*3、大いに戦果を挙げた。
白兵戦では散弾銃の「狙う必要のない大火力」が極めて有利であったためである。
CQBにおける散弾銃の優位性は不動で、現代に至るまで屋内戦・森林戦・山岳戦で活用されている。

関連:トレンチガン ライアットガン レミントン? ウィンチェスター? ベネリ?

日本における散弾銃

散弾銃は、日本で合法的に入手する事が可能な数少ない銃器の一つである。
現在の日本では、狩猟または競技用途においてのみ所有が許可される。
弾倉装弾数3発以上のもの、口径が12番を超えるもの、フルオート機能を持つものは許可が下りない。
ただし例外的に、熊狩りなどの特別な用途では8番ゲージの散弾銃が許可される事もある。


*1 ポンプアクション、レバーアクション、中折れ式、反動利用式(セミオートフルオートの両方)など。
*2 散弾銃の銃口は重機関銃機関砲並の口径を必要とする。
  ライフル用の散弾を作る事自体は難しくないが、そんな小口径の散弾では十分な殺傷力を発揮できない。
  一方、既存の散弾銃にライフリングを施しても、発射直後に拡散するため命中精度・有効射程の向上は期待できない。

*3 この戦術を採用したアメリカ軍は「けだものを撃つための猟銃で人を撃つ、残虐非道な軍隊」として憎悪され、ショットシェルを所持する兵は捕虜になる資格がないとして問答無用で射殺されたと言われる。

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