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【航空団】 †
Wing.
空軍(陸軍航空隊・海軍航空隊も含む)の部隊編制単位の一つ。「飛行団」、「飛行連隊」とも。
多くの場合、基本的に連隊級の戦術単位または旅団級の戦略単位として扱われる。
アメリカ空軍とイギリス空軍では、WingとGroupの関係が正反対になっている。
アメリカ空軍ではWing(航空団)がGroup(航空群)の上級部隊であり、大佐ないし准将*1に指揮されるのに対し、イギリス空軍ではGroup(飛行集団)*2がWing(飛行団)よりも上級部隊であり、団司令に中佐ないし大佐が充てられている。
但し、英国では1940年代のバトル・オブ・ブリテン以来、飛行集団―飛行隊と指揮系統が簡素化されている。
旧日本陸軍航空隊では2〜数個の戦隊と航空地区司令部(飛行場大隊1〜数個および航空分廠)によって編成されていた。
飛行団長には少将が充てられていたが、戦時中は大佐や中佐の団長も多かった*3。
航空自衛隊における「航空団」 †
航空自衛隊ではアメリカ空軍式の編制を採用し、航空団を「戦略単位」としている。
司令官である「団司令」には、空軍少将に相当する空将補、もしくは准将・代将に相当する一等空佐(1)(飛行教育団司令のみ)が充てられる。
各航空団は司令部及び飛行群、整備補給群、基地業務群の3群で編成されるが、中核となる飛行群は2個飛行隊編成と小規模で、また、他の2群も兵力でいえば陸自の大隊規模なので、実質的な規模はイギリス空軍に近い。
防空戦は時間との勝負であることから、航空団は任務を人員、機材、施設の維持管理に留めて「群」の階梯をなくし*4、戦闘部隊の指揮系統を「航空方面隊―(各)飛行隊」と簡素化した方が良いのではないかとの意見(いわゆる「空地分離」*5)もある*6*7。
海上自衛隊 †
海上自衛隊では航空団に相当する単位を「航空群」と呼称する。
司令官である「群司令」には、海軍少将に相当する海将補、もしくは准将・代将に相当する一等海佐(1)(教育航空群のみ)が充てられている。
各航空群は司令部、一個〜数個の航空隊、整備補給隊、及び航空基地隊で編成されているが、この編制にも空自と同様に「航空集団―(各)航空隊」*8という指揮系統とし、「空地分離」「指揮系統の簡素化」をすべきだとの声があるという。
陸上自衛隊 †
陸上自衛隊では航空団に相当する組織として、中央即応集団隷下の「第1ヘリコプター団」がある。
司令官である「団長」には、陸軍少将に相当する陸将補が充てられている。
(具体的な編制は該当項目を参照のこと)
英語訳は「1st Helicopter Brigade」で「(特科独立)旅団」に相当するが、実兵力は列国の「(増強)独立大隊」程度である*9。
第二次世界大戦後のアメリカ陸軍における「航空旅団」 †
アメリカ陸軍では第二次世界大戦後、従来の航空部隊が「空軍」として分離された後、航空機を戦略的に運用する組織を持っていなかった。
そのため、1960年代のベトナム戦争の際には
- 各歩兵師団隷下部隊(規模はほぼ大隊程度*10)
- MACV(駐ベトナム軍事顧問団)隷下部隊(必要に応じ、大隊〜中隊単位で各地に派遣され、現地部隊の指揮下で行動した)
- (通信・補給・工兵等)兵站グループ隷下部隊
という三種類の航空部隊が派遣されていた。
その後、ヘリボーン作戦を戦略的に実行する部隊として「第1騎兵師団*11」が組織されたため、四種類もの部隊が混在することになり、訓練や作戦運用法のアンバランスさが問題となった。
そのため、1966年にインドシナ地域に駐留する航空部隊の上級単位として「第1航空旅団」が編成され、第1騎兵師団及び各歩兵師団隷下以外の部隊をすべてこの旅団の指揮下に組み入れることにした。
同旅団には、最盛期には(一般的な師団をも上回る)25,000名近い兵員と4,000機以上の固定翼機・ヘリコプターが指揮下に入っていた。
第1航空旅団はベトナム戦後に解隊されたが、その後、さらなる改編を経て、現在は「航空戦闘旅団」という組織が編制されている。
航空戦闘旅団には、師団の隷下に組み込まれている部隊(師団内旅団*12)と「(特科)独立旅団」として扱われている部隊がある。
*1 但し、1992年までは航空師団が直接の上級部隊であり、団司令は大佐職であった。
*2 飛行師団相当の部隊のため、和訳はこちらの方が的確と思われる。
*3 旧ドイツ空軍でもパイロットの年齢的制限から、中佐や少佐の航空団司令が多かったという。
*4 飛行群を廃止しその機能を航空団司令部に吸収、他の二群も階梯を「(大)隊―中隊―小隊―分隊」に改めて飛行隊と並列にする、という形が考えられる。
*5 これは旧陸軍航空隊において、飛行連隊を「戦隊」に改めた経緯とも重なる。
*6 中間司令部が置かれると、その分命令・情報の伝達に時間を要するが、陸戦や海戦に比べて戦闘が高速で展開する航空戦では、そのわずかな時間差が致命的な結果につながることが多々ある。
*7 太平洋戦争末期の本土防空戦では、飛行師団―飛行戦隊という指揮系統を採っていたという前例がある。
*8 この編制を採るには、航空隊自体も司令を二佐職とし、飛行隊は飛行科、列線整備隊は整備科(艦船の「科」制度を航空隊にも適用する)と呼称を改める事が前提となる。
*9 陸自の部隊は、列国陸軍の同等(もしくは類似)編制の部隊に比べて実兵力がひとまわり小さく、「師団」でも列国の「(独立混成)旅団」程度となっている。
*10 この中に、観測ヘリコプターやガンシップ・攻撃ヘリコプターを装備する「航空騎兵部隊」が編制されていた。
*11 この時の第1騎兵師団は「第11空中強襲師団(戦略的なヘリボーン作戦に関する実験部隊)」と第2歩兵師団から抽出された兵力で構成されていた。
現在の第1騎兵師団は、その後のさらなる改編により機甲師団になっている。
*12 現在のアメリカ陸軍における「旅団」は、列国の陸軍における「連隊」とほぼ同格であるが、隷下に兵站組織が組み込まれているため、ある程度単独で作戦行動を行える。