【騎兵】(きへい)

(英)Cavalry
戦場で馬に乗って戦う兵士。

馬に乗ることで、徒歩で移動する歩兵よりもはるかに優れた速度・機動力を得られ、また、野戦では歩兵よりも高い位置から刀や槍・弓矢・銃を扱うことができるため、伝令や警戒、威力偵察?による敵戦力の探知・減殺、会戦時の迂回機動や包囲攻撃、集団による突撃や戦果拡張などの幅広い任務で重宝された(ただし、馬体そのものを防御するのが難しいため、直接防御力は総じて弱い)。

しかし、馬は生き物であるがために、それを「兵器」として使えるようにするには、人間の兵士と同じように適度な食糧(人間の兵士の10倍近い量が必要といわれた)と水と睡眠を与え、適切な訓練(調教)を施すなどのコストがかかり、また、それに乗る兵士にも高度な技術が要求されることから、所有できるのがひと握りの貴族や有力者に限られており、騎兵が特に発達した中世ヨーロッパでは、彼らがそのまま「騎士」として国家の支配階層にもなっていった。


上述のとおり、同じ条件下の戦場で戦う限りにおいては歩兵より優位にある*1ことから、近世までは歩兵・砲兵と並ぶ正面戦闘部隊と位置付けられていたが、19世紀後半以後になると、歩兵の持つ小銃の改良(ライフリングされた銃身の普及など)、機関銃の登場といった火器の改良が進んだため、背の高い騎兵は逆に射撃の的になってしまい、急速に陸戦の主力から退いてしまう。
その後は偵察・警戒や伝令、火砲の牽引や資材輸送という支援任務に就くことが多くなったが、これもまもなく前者は戦車や装甲車・オートバイ、後者もトラックや鉄道に取って代わられてしまい、第二次世界大戦を最後に正規戦闘部隊としての「乗馬騎兵」*2、そして兵器としての馬は姿を消すことになる。*3


しかし、英国・フランスなど、発達した騎兵を持っていたヨーロッパ諸国の陸軍やアメリカ陸軍では、歴史の古い部隊の伝統を重んじ、馬を装備しなくなった現在でもなお「騎兵」の名を名乗りつづけている部隊がある。
これら現代の「騎兵」は、おおむね軽戦車や歩兵戦闘車・装輪装甲車やヘリコプターなどを装備し、従来の乗馬騎兵が備えていた「(軽防御で)機敏かつ迅速に展開・撤収ができる」という特性を持ち、前線での警戒や威力偵察・奇襲攻撃などに用いられることが多い。
また、国家や軍隊の歴史・名誉・伝統の継承という側面から、儀礼用としての小規模な乗馬部隊を備えている国もある。


関連:カービン


*1 シミュレーションゲームでも騎兵ユニットの能力は歩兵ユニットより高めに設定されていることが多い
*2 ちなみに、世界で最後に正規の乗馬騎兵部隊による戦闘を行ったのは日本軍である
*3 現在の競馬で使われている「サラブレッド」や「アラブ」という種の馬は、軍馬としての品種改良の過程で作り出された品種である

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