【機内食】(きないしょく)

航空機の機内で食する事を念頭に置いて調理された食事。
通常は旅客機の乗客向けに配慮されたものを指し、軍用の戦闘糧食などは含まない。

乗客は私物の食品を機内で食べる場合があるが、これも機内食には含まれない。

乗客向けではあるが、乗員デッドヘッドも機内で食べるなら乗客と同じ機内食を摂るのが普通。
ただし、食中毒事故の懸念から機長副操縦士が同じメニューを摂る事・同じ時間帯に食事する事は厳禁とされる。
乗客も年齢・宗教・思想・医療などの理由から食事に配慮が必要な事例が多いため、事前に申し込めば特別食も用意される。

通常、空港近辺の食品加工場で調理されて冷蔵状態で機内に積み込まれる。
提供する直前に加熱調理を行うのが通例で、トレイにヒーターを仕込む*1か、機内のスチームオーブン*2が利用される。
機内調理は客室乗務員の職分だが、貨物機では手の空いている乗員が適宜行う。

民間の航空機内に可燃性ガスを持ち込む事は安全上の理由で禁止されているため、ガスコンロは設置できない。
同様の理由から、高出力の電磁波を放射する電子レンジも設置できない。
ただし政府専用機の場合は、「乗客」である要人の供応に必要な場合があるため、厳重な安全対策を施した上で調理器具を設置する事もある。

国際航空運送協会(IATA)では、一定時間以上の飛行では要望に応じて機内食を提供しなければならないと定めている。
いつ提供するかは航空会社の裁量だが、近距離便では離陸後1時間以内、中長距離便では離陸後2時間以内がおおむねの目安。
長距離便では到着2時間前を目安に2回目の機内食を提供する場合が多い。
これは人間の生理的リズムに配慮しているとは言いがたく、医学上あまり推奨されないような時間帯に配膳される事も多い。

IATA管轄外の国内線や格安航空会社に機内食の規定はなく、有料サービス扱いになるか、そもそも機内食を積み込まない。

品質

メニューは出発地の食文化に沿うが、気圧が味覚に影響を与える関係で一般的なレシピより味付けが濃い傾向にある。
また、座席の等級によって内容が異なるのが普通で、階級格差についても出発地の文化を反映している事が多い。

品質については、おおむね「地上で普段食べている食事と遜色ない」が褒め言葉になるような水準とされる。
もちろんこの基準も出発地の食文化と、座席グレードから推定される社会的階級によって差異がある。
ファーストクラスビジネスクラスではレストランが比較対象になるし、エコノミークラスではデリカテッセンと比較される。
また、エコノミークラスではスーパーで売られているようなパック入りの既製品がそのまま出てくる事も珍しくない。


*1 B747-400以降の機種ではこの方式が用いられている。
*2 B747-400以前に就航した機種ではこの方式が用いられている。

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