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【階級】 †
grade / class.
命令系統や職責などの関係から人間を等級付けし、差別する事。
誰が誰に対して何の目的で命令して良いのかという「職権」を定めるために用いられる。
単なる職能上の区別とは異なり、階級制度に対する違反や侵犯には強権的な制裁をもって報いられる。
公的機関では重大な背任について死刑を求刑する国も多く、緊急事態では略式の処刑も起こりえる。
また、制度自体も一般に不平等であり、構成員に殉死を強要するような側面もないとは言えない。
階級が人権上の問題を伴うのは明らかだが、公共機関から階級を廃する必要性は認められていない。
階級制度が抑圧的なのは、組織として最大限の努力を払い、効率の最適化を試みた結果の必然である。
ことさら国民を保護する専門家にあっては、常に最大限の努力と効率が要求される。
消防士が不断の努力を重ねて過酷な職務を果たさなければ、火災現場で人が死ぬのだ。
人間がある階級に属する時、その階級に対して求められる責任を果たす能力があるものと期待される。
一般に階級が高いほど重大な責任能力を要求されるため、階級が高いほど労働報酬も高額になる。
実際に仕事を行う上での命令系統については、混乱を避けるために別途の規範が定められる。
例えば、階級が高いからといって陸軍の将校が海軍の部隊に命令を下すことは越権行為であり、罰せられる。
しかし、想定外の状況や、単に規範が忘れ去られた場合には最も高い階級の者が仮に指揮権を得る。
というのが原則だが、実態として、不当に濫用されない職権はない。
階級差による意思疎通の阻害、心理的摩擦や「不当な差別」はどのような社会でも広汎に見られる。
軍人の階級 †
軍隊は極めて厳密な階級組織であり、階級制度なくしては成立しない。
各国はそれぞれの事情と伝統から独特の階級制度を定めているが、国際的には以下のような分類が為されている。
- 士官・将校(officer)
士官学校で用兵・作戦・統率術などの幹部教育を受けた軍人で、負うべき責任の軽重により「将官」「佐官」「尉官」の3種類に分類される。- 将官(General/Admiral)
戦略レベルの組織の長となり、一つの軍事作戦における最終責任を負える者。
その決断の是非が国際問題にまで波及する可能性があるため、閣下として外交責任を負う事もある。
- 佐官(Field officer)
主として戦術レベルの組織の長を務める。
自ら決断して作戦を実行する事は基本的に認められないが、その行動の正否は作戦の結果や部隊の存続を決定的に左右する。
- 尉官(Company officer)
主に最前線レベルの指揮官や幕僚部の事務スタッフを務める。
また、高度な知識を要する職種*1に就く者の初任階級としても用いられる。
原則として士官学校を卒業しなければ就く事ができないが、経験豊富な下士官を登用する制度を備えた国家・軍隊もある*2。
実績や経験に応じ、更に上位の佐官・将官へと昇格する可能性がある。- 主な役職:中隊長・小隊長(地上部隊)、分隊長及び分隊士(艦船)、編隊長及び操縦士(航空部隊)
- 主な役職:中隊長・小隊長(地上部隊)、分隊長及び分隊士(艦船)、編隊長及び操縦士(航空部隊)
- (参考)士官候補生(Cadet/Ensign)
士官学校の正規の課程を卒業し、尉官への登用を待つ者。
部隊や艦船で一定期間の実務教育を経て正式に登用される。
- 将官(General/Admiral)
- 准士官(Warrant officer)
正規の専門教育を受けていないが、尉官に相当するような職責を担える者。
基本的に下士官から昇格するもので、専門知識よりも現場での経験が重んじられる分野で見られる。
准士官から尉官に昇格する事は基本的になく、(兵から起算した場合)軍隊における昇進の事実上のゴールとなる*3。
- 下士官(Noncommissioned officer/(Chief)Petty officer)
個々の現場における兵士の監督責任者。基本的に尉官の補佐として「部下の代表」を務める。
経験豊富な兵から抜擢されるもので、その性質上、経験の浅い尉官よりも実務能力に長ける場合も多い。
- 兵卒(Soldier/Private/Sailor/Seaman/Airman)
前線での直接戦闘や部隊・艦船における平時の諸作業などに従事する者。
命令と規範に従う限りにおいて責任能力は要求されず*4、責任を負えるものともみなされない。
軍事活動に伴う人的損失の大部分を占めるため、各個人の能力について長期的信頼を置く事はできない。
各軍の階級呼称 †
ここではアメリカ軍・NATO加盟各国共通の階級コード・大日本帝国陸海軍及び自衛隊における階級のおおむねの対比を示す。
階級呼称 | アメリカ軍 | NATO階級コード | 大日本帝国軍 | 陸上自衛隊 | 海上自衛隊 | 航空自衛隊 | |
士官 | 元帥 | OF-10 | 元帥大将 | (該当なし) | |||
将官 | 大将 | OF-9 | 大将 | 陸将(甲) | 海将(甲) | 空将(甲) | |
中将 | OF-8 | 中将 | 陸将(乙) | 海将(乙) | 空将(乙) | ||
少将 | OF-7 | 少将 | 陸将補 | 海将補 | 空将補 | ||
准将 | OF-6 | (該当なし) | 一等陸佐 | 一等海佐 | 一等空佐 | ||
佐官 | 大佐 | OF-5 | 大佐 | ||||
中佐 | OF-4 | 中佐 | 二等陸佐 | 二等海佐 | 二等空佐 | ||
少佐 | OF-3 | 少佐 | 三等陸佐 | 三等海佐 | 三等空佐 | ||
尉官 | 大尉 | OF-2 | 大尉 | 一等陸尉 | 一等海尉 | 一等空尉 | |
中尉 | OF-1 | 中尉 | 二等陸尉 | 二等海尉 | 二等空尉 | ||
少尉 | 少尉 | 三等陸尉 | 三等海尉 | 三等空尉 | |||
准士官 | 5等准尉 | WO-5 | (該当なし) | ||||
4等准尉 | WO-4 | ||||||
3等准尉 | WO-3 | ||||||
2等准尉 | WO-2 | ||||||
1等准尉 | WO-1 | ||||||
下士官 | 最先任上級曹長 | OR-9 | 准尉/兵曹長 | 准陸尉 | 准海尉 | 准空尉 | |
部隊等最先任上級曹長 | |||||||
上級曹長 | |||||||
一等曹長 | OR-8 | (該当なし) | 陸曹長 | 海曹長 | 空曹長 | ||
曹長 | |||||||
一等軍曹 | OR-7 | 曹長/上等兵曹 | 一等陸曹 | 一等海曹 | 一等空曹 | ||
二等軍曹 | OR-6 | 軍曹/一等兵曹 | 二等陸曹 | 二等海曹 | 二等空曹 | ||
三等軍曹 | OR-5 | 伍長/二等兵曹 | 三等陸曹 | 三等海曹 | 三等空曹 | ||
伍長 | OR-4 | 兵長/水兵長 | 陸士長 | 海士長 | 空士長 | ||
特技兵 | |||||||
兵卒 | 上等兵 | OR-3 | 上等兵/上等水兵 | 一等陸士 | 一等海士 | 一等空士 | |
一等兵 | OR-2 | 一等兵/一等水兵 | 二等陸士 | 二等海士 | 二等空士 | ||
二等兵 | OR-1 | 二等兵/二等水兵 | (該当なし)*5 |
*1 航空機操縦士や軍医・薬剤師・法務官など。
*2 主に准士官制度のない国や軍隊で見られる。
その場合、登用に先立って士官学校へ短期入校させて幹部教育を行うのが普通であるが、士官学校の正規課程を卒業した同階級の若者よりも昇進の順番を後回しにされる上、(年齢との関係もあって)尉官の間に予備役に編入されることが多い。
*3 これは、かつて将校が貴族階級出身者、下士官・兵が平民階級の出身者で構成され、下士官・兵から将校への昇進が不可能であったことの名残でもある。
*4 個人としての背任・犯罪についてはまた別の問題となる。
*5 公式の階級を与えられる者ではないが、予備自衛官補や高等工科学校生徒、または自衛官候補生として教育中の者がこれに近しいと思われる。
なお、2010年10月31日までは正式の階級として「三士」が存在した。