【宇宙服】(うちゅうふく)

その名のとおり、宇宙で着る服。
本来生存に適さない宇宙空間に人類が進出するための服である。

用途により、船内服と船外活動服に大別される。
船内服は宇宙船に与圧漏れ事故が起こった場合に備えて飛行士が着るもので、高高度飛行機用の与圧服に近い。打ち上げや大気圏再突入の際などに着用する。
船外活動服は、宇宙空間に暴露して活動するためのもので、宇宙線や極端な高低温などといった過酷な状況から飛行士を守る必要がある。*1そのため船内服より頑丈で、またヒーターや冷却水などより多くの生命維持装置を備えている。
生命維持については、母船からアンビリカルケーブルを通じて電力・水・酸素などを供給される場合が大半だが、母船から離れて活動するためには船外服のバックパックなどにこれらを内蔵する必要がある。また、命綱に頼れない場合は姿勢制御装置が必須となる。

また、船外活動服には低圧用と1気圧用が存在する。
低圧用は比較的薄地で動きやすいが、減圧症を防ぐため予め1気圧から時間をかけて船内を減圧する必要がある。*2
1気圧用は減圧を必要としないが、厚地のうえ圧力が大きいので非常に動きづらい。*3また重量も重く宇宙船の打ち上げにとって不利なため、実用化はされていない。

emu.jpg
EMU(NASAの船外活動服)のレプリカ。胸部や腹部に生命維持装置の操作パネルがある。文字が反転しているのは着用者が鏡で映して操作できるように工夫しているため(パネルを覗きこめるほど下が見えない)。

将来の宇宙服

これまでのように風船のような構造で内部の空気圧を保持するのでなく、ワイヤーによって体を膨張しないようにする宇宙服がMITにて研究されている。
これはBiosuitと呼ばれ、SFアニメに登場する宇宙服のように体に密着した外観をしている。
ワイヤーは体の動きを阻害しないように工夫されており、重量や作業性、着脱時間*4の面で有利とされている。


*1 宇宙線の防護には限界があるため、活動時間に限界があり、また太陽フレア発生時などには船外活動を中止しなければならない
*2 減圧症の起きづらい純酸素で船内を満たす方法もあるが、この場合万が一火災が発生すると瞬く間に延焼し、船内が全焼してしまう危険性がある
*3 ソ連のアレクセイ・レオーノフが世界初の宇宙遊泳をした際、事前のテストが不十分だったこともあり、低圧用であったにもかかわらず船外服が膨張して身動きが取れなくなったという
*4 現在使われている宇宙服は着るだけで2時間かかることもザラ

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