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*&ruby(うちゅうふく){【宇宙服】}; [#e608f3cb]
その名のとおり、宇宙で着る服。~
本来、生存に適さない宇宙空間へ人類が進出するために必須の装備である。~
~
宇宙空間の過酷な環境から生命を守る目的で着用される衣服・生命維持装置。~
用途により、船内服と船外活動服に大別される。~
船内服は[[宇宙船]]に与圧漏れ事故が起こった場合に備えて飛行士が着るもので、高高度[[飛行機]]用の[[与圧服]]に近い。~
打ち上げや大気圏再突入の際などに着用する。~
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船外活動服は、宇宙空間に暴露して活動するためのもので、[[宇宙線>放射線]]や極端な高低温などといった過酷な状況から飛行士を守る必要がある(([[宇宙線>放射線]]の防護には限界があるため、活動時間に限界があり、また太陽フレア発生時などには船外活動を中止しなければならない。))。~
そのため船内服より頑丈で、またヒーターや冷却水などより多くの生命維持装置を備えている。~
生命維持については、母船からアンビリカルケーブルを通じて電力・水・酸素などを供給される場合が大半だが、母船から離れて活動するためには船外服のバックパックなどにこれらを内蔵する必要がある。~
また、命綱に頼れない場合は[[姿勢制御装置]]が必須となる。~
~
船外活動服には「低圧用」と「1[[気圧]]用」が存在する。~
低圧用は比較的薄地で動きやすいが、[[減圧症]]を防ぐため予め1気圧から時間をかけて船内を減圧する必要がある((減圧症を起きづらくするため、純酸素で船内を満たす方法もあるが、この場合万が一火災が発生すると瞬く間に延焼し、船内が全焼してしまう危険性がある。&br; (実際、アメリカでは「アポロAS-204(アポロ1号)」の地上でのテスト中に純酸素で宇宙船の内部を満たしていたため火災が発生し、宇宙飛行士3人が犠牲となっている)))。~
1気圧用は減圧を必要としないが、厚地のうえ圧力が大きいので非常に動きづらい((ソ連のアレクセイ・レオーノフが世界初の宇宙遊泳をした際、事前のテストが不十分だったこともあり、低圧用であったにもかかわらず船外服が膨張して身動きが取れなくなったという。))。~
また、重量も重く[[宇宙船]]の打ち上げにとって不利なため、実用化はされていない。~

**船内服 [#t2168a8c]
[[宇宙船]]内で活動する際、事故に備えて着用するもの。~
外殻の破損や空調設備の故障による急減圧を想定したもので、高高度[[飛行機]]用の[[与圧服]]に近い。~

**船外活動服 [#k016982c]
宇宙空間に暴露して船外活動を行うための、着用する[[宇宙船]]。~
[[宇宙放射線>放射線]]の遮蔽、太陽熱輻射や極低温に対応する熱制御、真空に耐える気密と酸素供給、[[姿勢制御装置]]などのシステムで構成される。~
電力・水・酸素などは母船からアンビリカルケーブルを通じて供給を受けるか、それらを貯蔵したサブシステムを携行する(背中に背負う)。~

>[[放射線]]の完全遮蔽は宇宙船でも宇宙服でも事実上不可能であり、[[宇宙飛行士]]の活動には[[被曝]]の懸念による厳しい時間制限がある。~
また、太陽面爆発などの天文現象によっては被曝量が常時の1万倍以上に加速する危険性もある。

内部の空調は[[減圧症]]の恐れがあるほどの低気圧で、船外作業員は事前事後に長い時間をかけて気圧変化に身体を慣らす必要がある。~
人体にとって快適な1[[気圧]]の船外活動服も理論上は製作可能だが、これを真空中で運用するのは現実的ではない。~

>破断しないよう耐久性を確保すると極端に重くなる。~
また、真空と1[[気圧]]の差によって極端な膨張を起こし、人の筋力では身動きが取れないほどに人体を圧迫する。

&ref(http://www4.plala.or.jp/klesa108/diary/20090719/emu.jpg,384x512); ~
EMU([[NASA]]の船外活動服)のレプリカ。胸部や腹部に生命維持装置の操作パネルがある。~
文字が反転しているのは着用者が鏡で映して操作できるように工夫しているため(パネルを覗きこめるほど下が見えない)。~

**将来の宇宙服 [#o121e67d]
これまでのように風船のような構造で内部の空気圧を保持するのでなく、ワイヤーによって体を膨張しないようにする宇宙服がMITにて研究されている。~
これはBiosuitと呼ばれ、SFアニメに登場する宇宙服のように体に密着した外観をしている。~
ワイヤーは体の動きを阻害しないように工夫されており、重量や作業性、着脱時間((現在使われている宇宙服は、着るだけで2時間かかることもザラ。))の面で有利とされている。~
ワイヤーは体の動きを阻害しないように工夫され、重量や作業性、着脱時間の面で有利とされている。~
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ただし、それら実験的宇宙服が将来的に実用化されるかについては多大な疑問の余地がある。~
試作段階のBiosuitはほぼ真空状態で身体を動かす事しか想定されておらず、保温・熱放射・[[放射線]]遮蔽などの生命維持機能については十分な言及がない。~
そして宇宙空間における万全の生命維持を求めた場合、それを十分に軽量化・簡易化できうるものかは極めて疑わしい。~


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