【ミサイル万能論】(みさいるばんのうろん)

米ソ冷戦初期〜中期である1950年代〜1960年代にかけて、世界的に広まった軍事思想。
「今後はミサイル技術の発達により、兵器から発射される弾の全てが誘導兵器になり、従来のガンは必要無くなる」
といった考え方である。

この思想の元、ミサイルが兵器体系の根幹に据えられ、「ミサイルのみで武装し、機関砲を持たない戦闘機」「艦載砲を持たない戦闘艦」「砲とミサイルを併せて積んだ戦車」などが生産された。
さらには、「防空は全てSAMで行われる」という戦闘機不要論もささやかれた。

しかし、それらの新鋭兵器が実際に戦場に出てみると
「警告射撃が実施できない」
ガンに比べ弾数が少ないため、武装が逆に貧弱になってしまう」
「必要な発射諸元を満たすのが難しく、そうでない位置に目標を捉えても攻撃できない」
などの問題が生じた。

事実、ミサイル万能論はベトナム戦争の戦訓によって覆された。
ドッグファイトを軽視し、機関砲を標準装備していない戦闘機を多数投入していたアメリカ軍は、北ベトナム空軍の擁するMiG-17MiG-19MiG-21によって予期せぬ格闘戦を強いられ、多大な犠牲を払ったのである。

しかしながら近年では、更なる戦訓の蓄積や電子機器の小型化・信頼性向上などにより、一部において復権の兆しが見られている*1

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*1 艦船のCIWSにおけるRAMの採用や、F-35における機関砲不装備型の採用など。

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