【ミサイル万能論】(みさいるばんのうろん)

米ソ冷戦初期〜中期である1950年代〜1960年代にかけて、世界的に広まった軍事思想
ミサイル技術の発達により、やがて全ての火砲は誘導兵器に置き換えられるだろう、という予測。

この時代、兵器設計はミサイルの運用を前提として行われ、全体的に既存の火砲を軽視する傾向に繋がった。
機関砲を持たない戦闘機艦載砲を持たない戦闘艦などが1950年代から相次いで登場している。

なお、その次の世代では再び戦闘機機関砲を、戦闘艦機関砲速射砲を備えている。
ミサイルドッグファイトで常用できるほど軽量ではなく、手漕ぎボート相手に撃ち込んで良いほど安価でもない。

後世の観点から結果論を述べれば、運用教則が確立されていない黎明期にありがちな希望的観測であった。
ミサイルが万能でなかった事は、後のベトナム戦争戦訓によって判明した。

根本的に、ミサイルは砲弾よりも重く、高価で、そして当時はまだ融通が利かない兵器であった。
的確に運用されたミサイルは多大な戦果を挙げたが、反面、的確な運用が出来ない状況も頻出した。
完成度の高い運用教則が確立されるまでの過渡期には、軍政上の混乱や兵器設計上の欠陥による損害報告が相次いだ。

例えば、ベトナム戦争初期のアメリカの交戦規定は、敵機を視認するまでミサイル発射を禁じていた。
結果、空戦での奇襲が成立しなくなり、ドッグファイト機関砲を叩き込まれて撃墜される事例が相次いだ。

しかし2000年代以降、戦訓の蓄積とコンピュータ技術の発達により、ミサイルは徐々に万能性を増しつつある。

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