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*&ruby(みさいるばんのうろん){【ミサイル万能論】}; [#pa782b73]
米ソ[[冷戦]]初期〜中期である1950年代〜1960年代にかけて、世界的に広まった[[軍事思想>ドクトリン]]。~
「今後は[[ミサイル]]技術の発達により、兵器から発射される弾の全てが誘導兵器になり、従来の[[ガン]]は必要無くなる」~
といった考え方である。~
[[ミサイル]]技術の発達により、やがて全ての[[火砲>ガン]]は誘導兵器に置き換えられるだろう、という予測。~
~
この思想の元、ミサイルが兵器体系の根幹に据えられ、「[[ミサイル]]のみで武装し、[[機関砲]]を持たない[[戦闘機]]」「[[艦載砲]]を持たない[[戦闘艦]]」「砲とミサイルを併せて積んだ[[戦車]]」などが生産された。~
さらには、「防空は全て[[SAM]]で行われる」という[[戦闘機不要論]]もささやかれた。~
兵器設計は[[ミサイル]]の運用を前提として行われ、全体的に既存[[火砲>ガン]]を軽視する傾向に繋がった。~
[[機関砲]]を持たない[[戦闘機]]、[[艦載砲]]を持たない[[戦闘艦]]などが50年代から相次いで登場している。~

>なお、その次の世代では再び[[戦闘機]]が[[機関砲]]を、[[戦闘艦]]が[[機関砲]]や[[速射砲]]を備えている。~
[[ミサイル]]は[[ドッグファイト]]で常用できるほど軽量ではなく、手漕ぎボート相手に撃ち込んで良いほど安価でもない。

後世の観点から結果論を述べれば、運用教則が確立されていない黎明期にありがちな希望的観測であった。~
[[ミサイル]]が万能でなかった事は、後の[[ベトナム戦争]]の[[戦訓>バトルプルーフ]]によって判明した。~
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しかし、それらの新鋭兵器が実際に戦場に出てみると~
「警告射撃が実施できない」~
「[[ガン]]に比べ弾数が少ないため、武装が逆に貧弱になってしまう」~
「必要な発射諸元を満たすのが難しく、そうでない位置に目標を捉えても攻撃できない」~
などの問題が生じた。~
根本的に、[[ミサイル]]は砲弾よりも重く、高価で、そして当時はまだ融通が利かない兵器であった。~
的確に運用された[[ミサイル]]は多大な戦果を挙げたが、反面、的確な運用が出来ない状況も頻出した。~
完成度の高い運用教則が確立されるまでの過渡期には、[[軍政]]上の混乱((例えば、[[ベトナム戦争]]初期のアメリカの[[交戦規定]]は、敵機を視認するまで[[ミサイル]]発射を禁じていた。&br;  結果、空戦での[[奇襲]]が成立しなくなり、[[ドッグファイト]]で[[機関砲]]を叩き込まれて[[撃墜]]される事例が相次いだ。))や兵器設計上の欠陥による損害報告が相次いだ。~
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事実、ミサイル万能論は[[ベトナム戦争]]の[[戦訓>バトルプルーフ]]によって覆された。~
[[ドッグファイト]]を軽視し、[[機関砲]]を標準装備していない[[戦闘機]]を多数投入していたアメリカ軍は、北ベトナム空軍の擁する[[MiG-17]]・[[MiG-19]]・[[MiG-21]]によって予期せぬ格闘戦を強いられ、多大な犠牲を払ったのである。~
しかし2000年代以降、戦訓の蓄積とコンピュータ技術の発達により、ミサイルは徐々に万能性を増しつつある。~
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しかしながら近年では、更なる戦訓の蓄積や電子機器の小型化・信頼性向上などにより、一部において復権の兆しが見られている((艦船の[[CIWS]]における[[RAM]]の採用や、[[F-35]]における固定式機関砲不装備型(ただし、専用の[[ガンポッド]]により対応可能)の採用など。))。~
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関連:[[AIM-7]] [[ミサイリアー]] [[最後の有人戦闘機]] [[F-4]] [[MiG-25]]
関連:[[戦闘機不要論]] [[AIM-7]] [[ミサイリアー]] [[最後の有人戦闘機]] [[F-4]] [[MiG-25]] [[トップガン]] [[RAM]] [[F-35]]


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